表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界移転するたびに俺が伝説の英雄になる件  作者: 杏子
第一章 人間世界から昆虫世界編
14/326

14話 ハクの群れに襲撃された!!

 14話 ハクの群れに襲撃された!!




 連夜の交代の見張りの疲れが溜まっている為、護衛達が移動しながらタムの上でウトウトしていた。


 あと二日でイムルナック村という時、それは起こった。



 もう少しで野営予定のサールに着くという所で、アンがしきりと鼻を上に上げ、臭いをかぎ始めた。

 おや?と思うと、今度はマリの落ち着きがなくなって来た。


「ガルヤ! 来るぞ! みんな、サールへ急げ!」


 そう言い終わると同時に、後ろから「わあっ!」と悲鳴が上がった。 振り返ると後ろの方を歩いている荷車を引いたアミが、数頭のハクに襲われていた。


「ハクだ! 走れ!!」


 ガルヤが叫び、襲われたアミは見捨てて一斉に全員が走り出した。 護衛隊が人と荷車を守りながらサールに入る。



 さっき襲ったアミに集まっているのか、今のところハクの姿は無い。


 今のうちにサールの真中に荷車と商隊を集め、今来た森との間にタムを並べて、護衛隊がタムの上から森に向かって弓を構えた。

 俺はマリを商隊に預けてタムの間に立ち、アンには動かないように制止をかけて弓を構えた。



 よく見ると低木の間にハクの赤い目が光っている。 かなりの数がいる。


「まだ射るな」


 俺は声をかけ、その時を待った。




 張り詰めた空気の中、藪の中から一頭のハクの頭が見えたと思った瞬間、一斉に何匹ものハクが飛び出して来た。


「今だ!!」


 何本もの矢が飛ぶ。 みんなの練習の成果が出た。 次々とハクが倒れていく。 その中でもキムルは百発百中だった。

 ハクがひるんで森に戻っていく。 しかし、逃げた訳ではなく、低木の陰で様子を(うかが)っているのがわかった。



 (しばら)(にら)み合いが続いた。




「また来るぞ。 さっき襲ったアミを食べ終わったやつらも合流するぞ。 気を抜くな!」


 ガルヤが森から目を離さずに言った。



 全てハクを見たわけではないが、30頭近くはいる。 ハク達がジッと潜んでいた藪が動いた。


「来るぞ!」


 そう言った瞬間、またハクが飛び出して来た。


「今だ!」


 次々とハクが倒れていくが、さっきより数が多い。 矢の雨をくぐり抜けてきたハクに向かって槍が繰り出され、タムがハクを踏みつける。

 その時アンが急に俺の制止を聞かずに後ろに走っていった。


「あっ!! アン!!」


 後ろを見ると、三頭のハクが反対側の森から商隊に向かって走って来ていた。

 俺とハクの間には、商隊やアミがいるので弓を射ることが出来ない。


「くそ!」


 俺は槍を掴んで後ろに走り、商隊と荷車を一気に飛び越え、少し離れて走っている一頭を槍で仕留めた。


 残りの二頭に向かってアンが飛びかかった。 一頭がアンに喰いつかれて絡み合いながら転がり、もう一頭はその二頭に足を取られてもんどり打った。


 足を取られて倒れたハクが直ぐに起き上がり、走りだそうとした所を槍で薙ぎ払うと、ドウッ!と、前のめりに倒れ、動かなくなった。


 もう一頭はアンと絡み合って戦っているので、手が出せない。 槍を構えてアンと離れる瞬間を待っていたが、先にアンの口がハクの(のど)(とら)えた。



 アンの下でハクが悶える。 アンが喉をくわえたまま首を一振りすると、ハクの動きが止まった。


「アン! 良くやった! 強いなお前」


 アンはまだ喉に食らいついたまま、得意そうに尾を振った。


 後ろを見ると、数を減らしたハクが森に逃げていく所だった。




「わあっ!」と、全員から歓声が上がった。 しかし喜んでいる間もなく、ガルーラが叫ぶ。


「ケガ人の手当てがすんだら、急いでここから離れるぞ! 血の臭いをかいで他の肉食獣がやって来る。 急げ!」


 アンもだが、何人かがハクに咬まれている。

 血の臭いを追って来る事が出来ないように、ケガ人の止血をしてから急いで隊を整え、次のサールに向い、そこで野営をする事になった。


 先ほど襲撃のあったサールで野営をする予定だったので、次のサールに着いた頃には完全に日が落ちていた。



 急いで火を焚いて野営の準備をし、落ち着いた頃に改めてアンの傷の手当てをしてあげた。 何箇所か噛まれてはいるが、大した傷ではなかったので安心だ。


「アン、良くやった。 いい子だ」


 そう言いながら薬草を塗ってあげていると、ガルーラとガルヤ、ツーラ、キムルがやって来た。

 ガルヤは興奮した様子だ。


「ケント! 弓は凄いな! こんなに倒せるとは思わなかった。 もっと練習しておくんだった」


 上気した顔で嬉しそうに言う。 するとガルーラが片膝を着いてきた。



······何だか久しぶり······



「ケント様のおかげ助かりました。 アミには可哀そうな事をしましたが、ハクに襲われて一人も死人が出なかったなんて、奇跡としか思えません。 ありがとうございました」


 アン以外でけが人は4人の軽傷者だけだった。


「やめて下さい。 私ではなく、みんなが頑張ってくれたからですよ」

「いやいや。 お前が弓を教えてくれなければ、こうはいかなかった。 やっぱり、お前のおかげだよ」


 興奮しながらそう言うガルヤの後ろに、いつの間にか集まって来ていた商隊のみんなも、口々にお礼を言いに来た。


 俺も役に立っているかと思うと、嬉しかった。



 ◇◇◇◇




 焚火を囲んで遅い夕食をとりながら、今日のハクの迎撃の話が尽きない。


「しかし、キムルは凄かったな。 そうとう弓の練習をしただろう。 百発百中だったんじゃないか?」


 俺が言うと、キムルが少し照れながら頭をかく。


「俺は体が小さいから、接近戦はどうも苦手で。 弓は俺に合っているみたいだ」

「これからは、()()()()()と呼ぼう」


 その言葉にみんなが賛同したので、キムルは大いに照れていた。

 するとバラゴが、アンに大きな肉を持って来てくれた。


「アン殿にも命を助けていただき、ありがとうございました。 あの時アン殿が来てくれなければ、きっと何人かの犠牲者が出ていたでしょう」

「いやいや、アンに殿()を付ける必要はありませんよ」


 俺が苦笑しながら言うと、みんなも笑った。

 アンもとても嬉しそうに大きな肉にかぶりついていた。





 しかしもう大丈夫と安心していたのは俺だけで、他の全員がまだ不安に思っている事を、その時の俺はまだ知らなかった。






アンは強い!!( =^ω^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ