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昼に疼く身体

※史実をもとにした創作作品です。

実在の人物・出来事とは一部異なります。

昼の部屋は、静かすぎた。

その静けさが、桜の身体をいっそう敏感にさせていく。

昨夜の余韻は、まだ、終わっていなかった。

障子越しの光が畳に落ちるたび、自分の吐息だけがやけに大きく響く。


桜は一人、座敷の隅に座り込み、膝の上で指を絡め、昨夜のことを思い出すまいとしていた。

けれど、身体はまるで逆の命令を受け取ったかのように、正直だった。


家宣の唇。

ねっとりと、しかし確かに、深く感じさせるあの触れ方。

押し付けられたわけでもないのに、離れたあとまで熱が残って、今もまだ、身体の奥で燻っている。


思考より先に、火照りが広がる。

昼の太陽のせいだと、自分に言い聞かせようとしても、無理だった。

首元に残る、あの感触。

頰を掠め、耳元に落とされた低い息。


桜は無意識に、そこへ指を伸ばしていた。

昨夜、唇が這った場所をなぞるだけで、背筋がひくりと震える。

ただ触れているだけなのに、身体が思い出してしまう。


——あの人の唇を。


息が、甘く乱れる。

胸の奥が、じわじわと締め付けられるように疼いた。


こんなにも、はっきりと身体が欲しているなんて。

女としての自分を、ここまで呼び覚まされるなんて。

自分でも、怖くなるほどに……


家宣のすべてを、受け入れたい。

もっと、あの方を感じたい。


——心だけでは、もう足りない。


昨夜は、唇だけだった。

それだけで、ここまで乱されてしまったのなら。

もし今宵、身を委ねてしまったら——


想像しただけで、喉が鳴る。

身体の内側が、熱を孕んで静かにざわめいた。


家宣様と、一つになりたい。


その願いは、まだ言葉にしただけなのに、

桜の身体を、はっきりと反応させるには十分すぎた。


昼の光の中で、桜はそっと目を閉じる。

まぶたの裏に浮かぶのは、

今宵、もう逃げられない距離で向けられるであろう、あの人の視線。


その気配を思うだけで、

身体の奥が、静かに、しかし確実に熱を増していく。


——今宵は……


逃げずに、受け止めてしまおうと。


そう、心の中でだけ、呟いて……


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次話もお付き合いいただければ幸いです。

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