表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/47

絡まり合う余韻

※史実をもとにした創作作品です。

実在の人物・出来事とは一部異なります。

桜は、ずっと昨夜の続きを思い出していた。


触れ合ったのは、唇だけ。

それなのに、身体の奥まで、あの感触が残っている。


唇全体が、じんわりと熱を帯びていた。


――まだ、ある。


離れたはずの家宣の温度が、

まるで唇に染み込んだまま、抜けきらずに残っている。


無意識に、指先がそこへ触れる。

軽くなぞっただけなのに、胸の奥がきゅっと締まった。


思い出さないようにすればするほど――

あのときの息の重なり、

わずかな湿り気、

触れる直前のためらいまでもが、

細部まで鮮明に蘇ってくる。


確かに、口付けをした。

でも……それ以上は……していない。


それなのに、

抱かれたときよりも、心の奥が乱されている。


欲しい。

あの方のすべてを。


その想いだけが、音もなく、しかし確実に積もっていく。


――こんなはずじゃ、なかったのに。


桜は目を伏せ、唇を噛んだ。

その仕草ひとつで、また昨夜の感触が呼び起こされる。



同じ頃、家宣もまた、動けずにいた。


集中しようとするほど、

思考は逆に、昨夜へ引き戻される。


気づけば、無意識に指を当てていた。

そこに、確かにあった桜の柔らかさを、探すように。


止めたはずだ。

理性で、きちんと止めた。


それでも――

止めなかったら、どうなっていたのか。


その想像だけが、胸の奥で熱を持ち続けている。


――もう、あの距離には戻れない。


その確信だけが、重く、甘く沈んでいた。



今は、何も起きていない時間。


それなのに、

二人の内側では、確実に何かが絡まり、ほどけ始めている。


唇が重なっただけ。

それだけで、心まで解けてしまうなんて。


――今夜、もう一度会えば……


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次話もお付き合いいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ