【099話】卑怯者は徹底的に排除したかったから!
「ほら、さっさと歩け」
衛兵がランドとセイ・ジョールの腕を拘束し、会場の外へと連れて行く。
2人はモナの魔法のお陰でビショビショである。
あの後、モナが2人が身体強化アイテムの不正使用を審判に報告。
審議の結果、その場で2人に調査が行われることになった。
そして、2人の血液から、違法な身体強化薬が検出され、武術大会失格どころか、罪に問われてしまうことになった。
──今度こそ、終わりだ。
納得できていないような顔のランドを静かに見送る。
もう2度と会うことはない……と思いたい。
「レオ、お疲れ様」
モナが俺に駆け寄り、頭にファサっとタオルを乗っけてくる。
「ありがと」
「これくらい当たり前よ。レオのおかげで勝てたんだもの」
「あの2人と水流に流されただけだけどね」
今回も見せ場がなかった。
モナは俺のおかげと言うけれど、そもそも、あんな大規模な魔法を撃てなければ、今回の戦いは勝てなかった。
モナの万能に強い部分が遺憾なく発揮された試合だったなと感じる。
しかし、モナはそれを言ったところで認めないだろう。
俺と2人で掴んだ勝利であると言ってくれる。
「まあいいわ。そんなことより、終わったんなら戻りましょう。レオは着替えないと風邪を引くかもしれないしね」
そう言って笑うモナの可愛らしい笑顔に思わずドキリとする。
試合後で興奮が収まっていないからなのかもしれない。俺は、モナに視線を合わせることができなかった。
▼▼▼
「そういえば、なんで不正が分かった時点で、審判に言わなかったんだ?」
びしょ濡れの服を着替え、暖かい格好になった俺は、ふと疑問に思ったことを尋ねていた。
本来はやらなくていい戦いだった。
モナがあの2人の不正を見抜いた時点で、こちら側の不戦勝。
審判にそのことをもっと早く告げて、試合を中断させていれば、最後のスプラッシュな展開は必要のないものであった。
モナは、「決まっているじゃない」と感情の起伏を見せながら告げる。
「不正をした相手を公衆の面前で完膚なきまでに叩きのめす。……これほど、スッキリすることはないでしょう!」
……ああ、鬱憤は晴らさないとだったね。
あのまま何もせずに退場させるのは、モナ的に受け入れられないことだったみたいだ。
まあ、俺としてもきちんと決着を付けるということに関しては、納得できるものであり、陰鬱な気分も綺麗に晴らすことができたような気がする。
「まあ、あり得ないことだけど。仮にあの戦いに負けたとしても、不正が分かっている以上、こちらが次に進めないなんてことはなかったんだろうけどな」
「その通りよ。実質私たちはノーリスクで、あの最低貴族と傲慢男と戦えたってこと」
しかし、この話は今だからできることだ。
モナが相手の不正を見破ることが出来ていなかったら、本当に危ないところだった。
「やっぱりモナのおかげだな」
「違うわ。レオと一緒だったから掴めた勝利よ」
「はいはい」
決定打は、全てモナによるもの。
その舞台を整えられたのであれば、頑張った甲斐があったというものだ。
今日の予定は3回戦をしたら終わり。
2回戦での激戦を経験した身からすれば、きっと3回戦も順調に勝ち上がれることだろう。
「次の試合に備えるか?」
「馬鹿。レオはボロボロなんだから、ギリギリまで休みなさい!」
うちの悪役令嬢は今日も、紛らわしい優しさを振りかざしてくる。
本当に彼女には頭が上がらない。
その日の3戦目は、モナの巧みな槍捌きによりあっさりと勝利。
武術大会初日は、なんとか勝ち抜くことができたのだった。
これにて6章完結です。
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