【094話】朽ちた聖剣の残滓
ようやく2回戦が始まる。
時間にしては、数十分程度。
けれども、体感時間はそれ以上に長く、自分たちの番はまだなのかとしきりに時間を確認するほどであった。
「いい? あのクズ男は私が仕留めるから、レオはもう1人を抑えて」
「分かってるよ。モナの邪魔はさせない」
奮起するモナ。
復讐、というわけではないが、これまでの雪辱を晴らすにはちょうどいい機会だろう。
ちゃんとモナの心の突っ掛かりがなくなれば、武術大会への意欲もより湧いてくるはず。そして、優勝に近づく。
モチベーション管理は本当に大切だと、つくづく思う。
劣悪な環境や荒んだ心持ちでは、よい成果は得られない。
──この先の戦いを勝ち抜くために、ここはモナの実力を周囲に誇示するのがいいな。
モナの強さを他参加者に知らしめる。
もちろん、既にSランク冒険者ということで、十分警戒されているが、更に圧倒的な畏怖を抱かせてやろう。
▼▼▼
フィールドに入ると、そこには既にセイ・ジョールの姿があった。
顔はよく見えない。
下を向き、何かブツブツと呟いており、モナに懇願していた時とは違い、雰囲気が不気味である。
「どうしたんだ?」
「さあ、私たちに物怖じしてるんじゃないの?」
モナは特にセイ・ジョールの異常な様子に興味がないようだ。
それにしても、彼1人というのは違和感がある。
もう1人の参加者が来ていない。
──名前は、なんだったか?
モナの元婚約者であるセイ・ジョールという名に気を取られ、うっかり確認を忘れていた。
けれども、そんな確認は必要なかったと思うくらい、俺はその人物のことを鮮明に思い出す。
「よお……久しぶりだなぁ?」
「ランド……」
2度と会うことはない。
彼を打ち負かし、決別した時からそう考えていた。
しかし、最悪の巡り合わせとも思えるランドの登場。
──やっぱり、まだ終わりじゃないんだな。
大剣を持ったランドはズカズカとフィールドに上がってくる。
因縁の相手。
盾を構える手に自然と力が入る。
「貴族のお嬢様が相手って言うから、簡単な戦いかと思ったが……そうか。まさか、こんなところで再会するとはなっ!」
ランドは俺を睨みつけてくる。【聖剣の集い】の活動がなくなり、頭の片隅で何を今頃どうしているのだろうと、考えたことがあったが、まさか貴族に取り入っていたとは……。
続いてランドは、モナの方に視線をやり、いやらしい微笑みを浮かべる。
「へ〜、性格はきつそうだが、中々可愛いじゃねぇか。俺が勝ったら、横の女をついでに貰っちまうか」
──は?
耳を疑う言葉であった。
まさか、ランドはモナを知らないのか?
仮にも俺の仲間であり、Sランク冒険者だぞ?
その辺にいるような華奢で誰かに守られるような存在じゃない。むしろ、嬉々として魔物の首を刈り取るような過激な女の子である。
モナで卑猥なことを考えられたこと以前にランドの無知に開いた口が塞がらない。
「お前……知らないぞ」
「はぁ? 言っている意味が分からねぇよ」
横のモナから熱気が伝わってくる。
服が焦げ落ちると思うくらいに、モナは爆発寸前。
自身がただの御令嬢であると軽んじられたことが余程気に食わないみたいだ。
「あの男……クズ諸共消し去ってやろうかしら?」
物騒な独り言が聞こえてくる。
ランドと再会した嫌な気分よりも、横に立つ頼れるモナがこれからどんな大暴れをするのか、そっちの方が心配である。
ともあれ、俺の元仲間のランドとモナの元婚約者であるセイ・ジョールが相手。
武術大会という正式な場。
ここでちゃんとランドとの確執は切り落とさなければいけない。
この試合。モナの雪辱を晴らすだけではなく、俺にとっても意味が大きいものになりそうだ。
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