【091話】最強の好敵手
1回戦の全ての試合が終了した。
敗退した者は、続々と会場から撤収していく。
負ければ終わり。
勝ち続けることだけが、先に進める条件なのだ。厳しいことであるが、武術大会とは、力の優劣を付けるもの。このような光景があちこちで見られるのは仕方のないことである。
少しだけ時間を挟んでから、2回戦が始まる。
俺はモナと空いているスペースに座り込み、その時を待っていた。
緊迫感とかはあまりない。
相手は、モナの元婚約者であるセイ・ジョール。
であるのだが、モナは平静を装っている。
──心の中では、ズタズタにしてやるのを楽しみにしてそうだけどな。
モナが奮起してくれれば、2回戦は余裕で勝てるだろう。
大会の日程は、3日に分けられている。
これだけの参加者だ。1日で終わらせるのは、時間的に無理がある。
──難易度は、2日目、3日目となると、途端に跳ね上がってくるだろう。
先のことを考え、重い息を吐く。
「次の試合、そろそろか?」
モナは、首を横に振る。
「まだまだよ。1回戦が終わったばかりのペアもあるから、もう少し準備時間が取られるはず」
「そうか」
モナは動かない。
そして、こちらに視線すら向けてこない。何かを考え込んでいるように見えるが、モナが何を思っているのか、俺には推測できない。
……沈黙。
静かな時間が少しの間流れていく。
しかし、その静寂を掻き消すかのように、多くの足音が床の揺れと共に伝わってきた。
「次の試合、アウグスト、レジーナペアらしいぞ!」
「マジかっ! 早く行かないと、いい席取られるな」
「前年度優勝者の実力は、この目で見ておきたいしね」
そんなことを話しながら、慌ただしく大会参加者の集団が通り過ぎる。
アウグスト、レジーナ。
俺たちにとって最大の難敵となりうる相手。
幸いにも、対戦カードを確認したら、彼らと当たるのは決勝までない。
けれども、全ての試合を勝ち抜き、優勝の栄誉を預からなければならない俺たちは、その2人に打ち勝たなければならないのだ。決勝まで勝ち上がれたらいいとか、そういうことは全くない。
「……見にいくか?」
モナにそう尋ねる。
「そうね。好敵手の動きは、確認しておきたいわ」
「試合は、いつからだ?」
「2回戦の試合が行われ始めるのは、10分後くらいからじゃないかしら?」
俺たちは、2回戦は2回戦でも、割と最後の方だ。
行ってみるか。
俺が立ち上がると、モナも続いて腰を上げる。
そうして、観戦席に向かう。
いったいどれくらいの強さなのだろうか。
俺とモナで、まともに戦った場合の勝率計算や作戦の組み立てを考えていた。
まあ、まさか初戦からモナみたいに本気で相手を叩きのめしたりはしないだろうが、参考程度にはなるだろう。
「よし、こっちだよな」
「ええ」
人だからのできている観戦席の一部分。
それを目指して、俺とモナは歩き出した。
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