【084話】絶好調な悪役令嬢
モナを抱きしめて数分間。
周囲から突き刺さる嫉妬の視線を感じつつも、モナが落ち着きを取り戻すまでと、俺はじっとその姿勢をキープし続けた。
「レオ、周りから見られてるわよ……」
絞り出すようにモナは、呟く。
指摘されるまでもなく、それくらい分かっていた。
「落ち着いたか?」
尋ねると、モナは首を振る。
「まだ……いいえ、レオとこの体勢になってから、ずっと胸がドキドキするわ」
「そ、そうか」
あれ?
逆効果だったの?
当初の目的としては、モナが怒り恨みで苦しそうだったから、落ち着けるためにこうして抱き寄せたのだった。
──もしかしなくても、本末転倒ってやつなのか?
「……余計なことしたか?」
「ううん、さっきまでの嫌な感情は、綺麗さっぱりよ。……その、ありがとう」
迷惑でなくてよかった。
少しは役に立ったというわけだ。
この身を誇ろう。
落ち着いたということで、俺はモナの腰に回していた腕を解く。
モナは、少しだけ残念そうな顔をしていたが、すぐに表情を真剣なものへと戻した。
「じゃあ、改めてウォーミングアップに行きましょう」
「そうだな」
気を取り直して、歩みを進める。
モナの後ろ姿を追いかけるように──。
モナの歩みに迷いはない。
普段通りの自信に溢れた足取りだ。これなら、しっかりとモナらしく戦っていけることだろう。
俺は一安心とばかりに、微笑む。
通路を抜け、俺たちは本戦の場にたどり着く。
既に会場入りしている者たちは、空いている場所を使って、剣、槍、斧、魔法などといった多彩な武器と能力を使って、試合に備えていた。
モナが俺の手を引く、誰も使用していない場所を見つけたようだ。
「ここにしましょう」
モナは槍を構える。
同時に俺も、モナに向けて盾を構えた。
模擬戦相手として、俺はモナに付き合おう。
「じゃあ、始めるわよ」
「ああ、やるか」
勢いよく槍を振りかざしてくるモナ。
俺は、それを大盾にて受ける。
怒涛の乱撃をしっかりガードしつつ、モナの攻勢の凄さに感心する。
──これだけのスピードとパワーがあれば、初戦は問題ないな。
周囲の参加者の動きと比較しても、モナは数段レベルが高い。
国中の強者が集まるこの会場で、優れているということは、大会でも十分通用する強さであるという証明。
「どう?」
槍を振りながら、モナは尋ねてくる。
「いい仕上がりなんじゃないか。一撃が重いし、盾で受けてなかったら、モナの攻撃は防ぎきれないと思う」
「なら、次は魔法の出来も確かめてもらおうかしら」
──絶好調だな。
魔法の受けに関しては、あまり得意でないが、モナのコンディションを確かめるのは大切なことだ。
俺は、盾を構えつつ、衝撃に備える。
大会初戦の時間は、もうすぐだ。
8500ブクマまで後少し、是非お願い致します!




