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【069話】親子喧嘩が予想以上に激しいんだけど……






「私は戻らない!」


「ふざけるな! いい加減にしないか!」


「いい加減にするのはどっちよ! 家から出て行けと言ったのはお父様の方じゃない!」


「あんな戯言を真に受けるやつがあるか! この馬鹿娘っ!」




 ──激論だなぁ。


 付け入る隙などないくらいモナとモナの父親との物理的でない攻防戦は熾烈なものであった。

 強面なモナの父親。

 最初こそ、冷静さを保っていたものの、結局モナに同調してヒートアップ。


「お前は、世間知らずだ!」


「何も知らないのは、お父様の方じゃない!」


「何をっ! 私はお前の父親だぞ!」


「その父親の視野が狭いと言っているのよ!」



 ──もう、耳が疲れてきちゃった。

 怒声と罵声が飛び交うこの部屋。

 こうなるかもとは薄々感じていたが、それにしたって居心地が悪い。


 老紳士の方に視線を向ける。


 こちらの視線を受け、ニコリと笑う。


 ──よく平気だな……。


 慣れているのだろうか。

 老紳士は、特段2人の口論を止めようとはしていない。

 むしろ、言いたいことを言い合っている2人を何度も頷きながら観察している。


 ──いや、普通に止めるくらいの口論だぞ。



 そう考える俺であるが、こちらも止めるつもりはない。


「馬鹿娘っ!」


「馬鹿領主っ!」



 ──どんな喧嘩だよ。

 もはや仲良しレベルの幼稚な言い合いにも思えてくる。

 しかも、最後のは、ただの罵倒でしかなかったし。


「いやぁ、楽しそうでなにより」


 呑気な老紳士は、ホッホッホと笑いながら、その状況を流している。


 ──いやもう。勘弁してください。



 口論はその後も数十分間続いた。




▼▼▼




「もういいっ!」


 口論は終わりを告げた。

 バタンという扉の閉まる音と共に──。


「あの馬鹿娘が……はぁ」


 モナはその場から離脱。

 何故か俺が残されている。

 ……えっ?

 なんで俺取り残されてんの。モナさんモナさん、せめて俺のこともついでに連れて行って欲しかった。


 明らかに場違いな俺。

 先程までモナとの論争を加速させていた父親と温厚そうな老紳士。


 ──えっと、もう帰ってもいいよ、な?


 おずおすと俺は扉の方へとゆっくり移動する。


「待てっ!」


「は、はいっ!」


 ドアノブに手が届きそう……。

 そんなギリギリのところで、モナの父親に呼び止められた。

 思わず肩がビクッと上がった。


「えっと……」


 何故呼び止められたのかが分からない。

 情けなく振り向くと、そこには眉間に皺を寄せた顔があった。


 ──嫌な予感しかしない。





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