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【068話】親子の対面





「お父様……」


 モナが呟く。

 目の前にいる黒髪の家族がモナの父親なのだろう。

 モナのその声にモナの父親が狼狽える様子はない。

 ゆっくりと部屋へ入る。


 すると、老紳士が感慨深い声を上げた。


「ああ、モナリーゼお嬢様……」


 ちょっと涙声なのが、本当にモナのことを心配していたんだろうなぁということを感じさせる。

 むしろ、モナの父親よりもよっぽど関係性が良好なように思える。


 ──対して、娘が帰ってきたのに無関心とは。


 モナが入室してきたことをチラリと確認しただけで、目の前の父親はすぐに手元の書類に視線を落とす。


「……3年間、どこにいたんだ?」


 低い声。

 背筋がゾクリとしそうなくらいに威厳たっぷりな雰囲気が俺たちに襲いかかる。


「……私は、冒険者になったの」


「ほう? お前のような小娘が、か?」


「私は小娘なんかじゃない。立派に冒険者をやれているわ!」


 モナは父親に真正面から歯向かう。

 激昂するモナのことなど歯牙にもかけないように、モナの父親はモナの方に視線を向けない。


「現実を見ろ。……お前がそんな命懸けの仕事を続けられるわけがない。大人しく、帰ってこい」



 ──いやいや、続けられてるよ。



 と、心の中でツッコミを入れる。


 おそらくだが、モナの父親はモナがSランクパーティ【エクスポーション】の一員であることを知らない。

 セントール子爵領で唯一のSランクパーティ。

 決して、名が知れ渡っていないわけがないのだが……。


 ──冒険者に興味がないのかな?


 自身の領地の有力な冒険者パーティを詳しく知らない。

 そんなことがあるのだろうか。

 ましてや自分の娘が馬鹿みたいに大暴れしているのを見逃していたというのも気になるところ。


 ──控えめに言って、モナの冒険者としての印象はかなり濃い。


 アレンのように異性に大人気とかではなく、かと言ってアイリスのように密かな男性人気を確立しているわけでもない。


 モナに向けられるのは畏怖と尊敬。

 Sランク冒険者として、実力は一級品。

 そして、その威圧感ある態度とビジュアルから、モナには【殲滅の悪役令嬢】という二つ名まで付いている。


「私は、冒険者を続けるわ」


「ならぬ。どうせ、まともに仕事もできず、ろくな生活を送っていないのだろう」


 ──いや、モナのお父様。

 この子は好き勝手に暴れ回っておりますよ?




 ……なんて、言えなかった。


 屋敷に入る前に余計なことを言うなと釘を刺されているからな。

 もしかして、これを予測して、俺が口出ししないように言い含めたのか?


 モナに視線を向けるが、こっちに見向きもしない。


 真意は分からないまま、モナとモナの父親はバチバチに火花を散らせた口論をするのであった。





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