【143話】負けないように(アイリス視点)
皆んながそれぞれの戦場に赴いた。
私の場所を中心にして、戦陣が築かれる。
「よろしくな。お前のことは、私が守ってやるから」
「はい、お任せします」
私の役割は、この場にいる仲間が円滑に戦闘をこなせるようにサポートすること。
魔法による支援。
魔力が多く残っているわけではないけど、しっかりと適切な場所に支援魔法を使ってあげれば、戦況を良い方向にコントロールすることは可能だ。
幸いなことに露払いとして、私のそばにはレジーナさんがいてくれている。
ゾンビの接近も怖くない。
「レジーナさん、無理はし過ぎないでください。回復魔法はかけましたけど、あくまで応急処置ですから」
「分かってるよ。雑魚相手なら、余裕さ」
レジーナさんはさっきまで瀕死の状態だった。
今だって、回復魔法で誤魔化してはいるが、ちゃんとした治療を受けなければならない。
──私がしっかりしないと、魔法が使える限り死人だけは出させない!
静かに意気込み、魔法書を介して魔法を発動させる。
広範囲への回復魔法、身体強化、立ち位置的に厄介な場所でゆらゆらしているゾンビの処理。
それから、
「ヒール!」
特に危険な相手と戦っているアレンさん、モナちゃんへの回復魔法。
こっちは集中的に行わないと。
レオさんとアウグストさんの方は、こちらからの支援が届きにくい。それに、レオさんの耐久力があれば、問題なく長期から中期くらいの戦闘を継続させられることだろう。
それに比べて、竜と対峙している2人には十分な支援魔法を飛ばしてあげられる。
──タンク役不在であの大きな竜と戦うのは、かなり危険だもの。
アレンさんとモナちゃんはかなり危険な役回りだ。
2人とも攻撃性能はトップクラス、けれども、耐久性の面から見ると、少しだけ不安が残る。
レオさんが受けて、その間に2人が攻撃に転じる。
勝利の方程式ではないけど、安定した戦闘に必要不可欠なループが普段であれば存在していた。
けれども、今回はそれがない。
一撃でもあの竜から攻撃を受けたとしたら──。
「レジーナさん」
「なんだ?」
「もし、アレンさんとモナちゃんが危なくなったら、そっちの救援に向かって貰えますか?」
立て直しが必要になった場合、この場で自由に動けるのはレジーナさんになる。
私が行ってしまうと、他へのサポートが薄くなってしまうからだ。
「それはいいけど、こっちの守りはどうすんだよ?」
「私は大丈夫です。それに──いざとなれば近接でもそれなりにやれます」
──まあ、得意じゃないのが本当のところ。
でも、ゾンビくらいの個々が弱い相手にならある程度通用する。
1番いけないのは、この場においての均衡が大きく崩れるような主要アタッカーが倒されてしまうこと。
私よりも優先すべき人たちが長く戦えるようにする必要がある。




