【107話】攻める姿勢を崩さずに(モナ視点)
「へ〜、やるじゃねぇか」
私は目の前の褐色の女を睨みつける。
「全部防いでるくせに、嫌味にしか聞こえないわね」
間合いはこちらのほうが安全圏から攻撃できて有利。
でも、目の前の女はしっかりと私の攻撃を受け流していた。
レジーナ。
【神々の楽園】で3番目に強いという噂。
今までより明らかに強さが段違い。
その噂に違わない実力があるということ。
……面白いじゃないの。
決勝戦に相応しい相手。
それを乗り越えた先に、私の冒険者としての未来と……レオと交わした私にとって最も大切な約束が待っているんだ。
負けられない、負けたくない。
絶対、地に這いつくばらせてやりたい!
「はあっ!」
「おっと……危ないことしてくるねぇ」
「次は当てる……」
私の攻撃を軽々とかわして、余裕そうに微笑むレジーナ。
なんだか気に食わない。
私と彼女。どっちが真に強いのか証明してやる!
再度振るう槍は、レジーナの身体に届くことはない。それでも、次、次っと、追撃していく。
攻勢を緩めてはならない。
今は、こちらから一方的に槍を振れている。
優勢を手放したりはしない。
「当たれっ!」
一振りごとに力が込められる。
優勝への強い思いが、表れていた。
タイミングとしては、ギリギリ攻撃が届いていないだけ。相手も、ずっと防ぎ続けれるとは考えていないだろう。
少しでも隙ができれば、戦況を一転させられる!
「流石に強いな。踏み込めない……」
「そっちこそ。……でも、いつまで防いでいられるかしら?」
「それもそうだ……なっ!」
「──っ!」
来たっ!
攻勢を緩めたわけではない。
私の槍を弾いた瞬間、強引に間合いを詰めてきた。
あの鉤爪で殴打されたら、ひとたまりもないわ。
後方に跳んだところで意味はない。ならば、逆に前に!
「強気だなぁ!」
「まあね!」
槍を手前に引き、そのままカウンターを受け止める。
足に力の入らない体勢だけど、簡単にやられないためにはやむを得ない選択だ。
そのまま競り合いに入る。
若干、私の方が押されている。
仕方がないとはいえ、ちょっぴり不満だわ。
ギリギリと押し合いは少しの間続いたが、なんとか槍で振り払い。
状況を振り出しに戻す。
「これは、本気出さないと倒せなさそうだなぁ!」
「奇遇ね。私もそう考えていたところよ」
意気込み、レジーナとの決着に向けた集中力を高める。
……その時であった。
──⁉︎
物凄く鈍い音と地揺れが襲う。
レオとアウグストのいた方向からのものだ。
チラリと視線を向けると、地面にめり込み、アウグストからトドメを刺されそうなレオの姿があった。
「ふっ、勝ったな……」
レジーナは、その光景を見て微笑む。
レオがアウグストにやられてしまえば、私がアウグストとレジーナの2人を同時に相手しなければならない。
それはつまり、敗北を意味していた。
これまでも、レオありきで勝ち上がってきた。レオのサポートがあったから、苦戦する場面にも臨機応変に対応することができてきた。
レオ……。
今すぐ助けに行きたい。
けれども、レオならきっと目の前の戦いに専念しろと言うだろう。
なら、やることはひとつ。
私は、ここでっ──!
「まだ、負けてないわ!」
レジーナに向かって槍を振るう。
今度は、魔力を交え、威力を底上げする。
助けに行っても、私が対峙しているレジーナを引き連れていく結果となり、厳しい状況になる。ならば、レオが再起することを信じて、目の前の敵を迅速に処理する。
「へぇ、相方を切ったのか」
「違うわ。レオは負けていない。……約束したんだから。絶対に諦めたりしないの!」
「まあ、そんなことどうでもいいやっ!」
レジーナもこちらに向かってくる。
大丈夫。
レオはそんなに弱いわけがない。
きっとまだ踏ん張れる。
私がすべきことは、レオの援護に入れるようにレジーナを倒すことなんだから。
「終わらせてやるよ!」
「それは、こっちのセリフよ!」
私の持てるあらゆる能力を駆使して、レジーナとの戦いは、絶対に制してやる。
勝てなきゃ意味がない。
それに、せっかくレオが私と戦ってくれているのに、無様に負けるなんて、格好の悪いところは見せられないわ!




