コミカライズ1巻発売記念書き下ろし
辺境伯令嬢コミカライズ1巻発売記念書き下ろしSSです。
2月10日発売。
TOブックス公式からの購入だとポストカードがつくと思います。
コミカライズを担当してくださったかたぎり先生の作画はとても可愛いので、応援よろしくお願いいたします!
10歳になった私は学園に通うようになっていた。
そして秋休み中のある朝、目覚めてすぐに、ある考えがよぎった。
鍛えられた立派な胸筋を囲むようにハーネスをつけたアレ、オタク女子の間で言われる、通称エッチベルト。
あれ、うちの騎士服に取り入れようかな!?と。
突然天啓のようにそんな考えが舞い降りた私は天蓋付きベッドから飛び降り、顔を洗うのも忘れて文机に向かい、引き出しからスケッチブックを取り出した。
そして更に鉛筆を手にする。
私には礼服や騎士服を指定できる権力があるのだ。何故なら辺境伯の令嬢だから!
ワハハ!!
最近はいろんな発明品のおかげでそこそこ予算もあるし!!と、勢いでHベルト付きの新しい騎士服のデザイン案を描いた。
そして……勢いのまま、執務室へ向かう。
◆◆◆
たのもーー!!と、ばかりに勢いよく執務室の扉を開けた私。
執務室の机に座って仕事をしていたお父様が顔を上げ、私を見た。驚いた表情をしてる。
「ティア、いきなりどうしたんだ? すごい勢いで入って来たが」
「お父様、私、ライリーの新しい騎士服のデザインを考案しました!!」
「騎士服の? それはまた突然だな」
「はい、でもずっと同じ服だと可哀想でしょ? 二種類くらいあってもいいのでは?」
「同じデザインの方がどこの領地の所属か分かりやすいのではないか?」
「でもぉ、たまに気分を変えて着替えたいときもあるかもしれないではないですか! 婚活にも役立つかもしれませんし!」
「騎士服で婚活?」
「人の印象の70パーセント位は髪形で決まるらしいのですが、女性は衣服にも注目しているものですよ」
「そういえばティアは騎士達のことをよく気にかけているな」
お父様はふと思い出したように笑みを深くした。
「そうです、私は彼らの幸せを願ってます。そしてこれは彼等の肉体美を…ゲフンゲフン! 鍛えられた筋肉を強調できる衣装になってます」
お父様は少し私に変なものでも取り憑いたのか?って目で私を見た。
そ、そんな目で見ないで欲しい、中身はそもそもオタクの成人女子なんです。
こんなだからギルバート殿下に何気に分かりやすく好意を寄せられても、こんな中身がオタクの変な女で本当にいいのか? かなり申し訳ない気がするぞ! と、及び腰になるのだ。
でも、己の癖には逆らえない。
「……まぁ、ティアの発明品のおかげで潤ってきたので、一種類くらい騎士服を増やしてもいい……か」
やった!!
「いいですか、この胸部のベルトは万が一、怪我した時には止血にも使えるし、高所からぶら下がった時にロープを引っ掛けるのにも都合がいいものです」
「おお、とても機能的なのだな!」
「そうなんですよ」
お父様の純真無垢な笑顔が胸にやや刺さるけど、くじけない!!
「では、このデザインで衣装室に発注しよう」
「はい!」
「しかし、相変わらず異様に絵が上手いな、ティアは」
ギクッ!!
それは前世で薄い本も出していたオタク女子だったので!
「えへへっ褒められちゃった! 芸術の神様の加護が降りちゃったのかもしれませんね!」
笑いながら誤魔化してみた。
「芸術の神様の祝福! ……ありえるな」
……信じてしまった。お父様は本当にピュアすぎる。
かくしてライリーの騎士の騎士服が増える事が決定したのである。
◆◆◆
鍛え上げられた騎士達の胸筋を強調するそのベルト付きデザインは、秋色に色着く王都で開催された騎士達のパレードで、ひときわ眼を引き、世のレディたちの目を釘付けにした。
「まぁっ! あれはどこの領地の騎士達ですの!? 素敵な礼服ですわね!」
ライリーの騎士を指差す何処ぞの令嬢。
「先頭に立つ騎士の旗がライリーのものでしたわよ!」
「……筋肉、騎士達の鍛えられた胸の筋肉があのようにベルトで強調されて……ライリーには天才的なデザイナーがいるようですわね」
「当家でもそのデザイナーに依頼したいわ!」
私は茶髪のアリアカラーで町娘に擬態して、そのパレードを、宿屋の二階の窓から眺めていた。
「デザイナーではないのだけど……ね」
「お嬢様は本当に多彩であられますね」
「本当にうちの娘は天才だ」
うちのHベルト装着済みの護衛騎士の褒め言葉に頷きながらお父様が微笑む。
本日はお父様もこのエッチベルトを装置してくれてる!! めちゃくちゃかっこいい!!
これで私の気は済んだ……!
「褒めすぎですよ」
──でも、ある意味確かに私は天才的なところがあるかもね、このふざけた実行力とか!
終




