海の幸
翌日だと言う事を書き忘れて、改稿しました。
今回は海の中へ。
前回体調が悪く、素でいつにも増して頭がろくに働かずに、ラナンの活躍を書き忘れていたので一部改稿致しました。
「ん? すぐに帰るんじゃ無いのか?」
翌日の朝。
天幕に水着を着て来た私を見て、お父様が言った。
「はい、お父様! せっかく海に来ているので潜りたいと思います!」
「泳ぐのか? 魔物が出た海だぞ?」
「銛を持って来たので、大丈夫です」
「……もしかして、エビか? エビを探したいのか?」
「バレましたか……流石、私のお父様です」
「やれやれ。じゃあ、海に入る前、安全の為に、海の神を讃える歌を一曲奉納しなさい。
それが条件だ。そして私も一緒に潜る」
「ありがとうございます!」
そんな訳で、明け方の砂浜に立つ私は、海に向かって一曲歌わざるを得ない。
『伴奏は僕も援護するよ』
リナルドが草笛のような物を装備した。
私は吟遊詩人が使うような15弦の小型の竪琴を亜空間収納から取り出した。
「ハープ!? もしかして今から歌が聞けるのか!?」
早起きして天幕から出て来た殿下が嬉しそうに訊いて来た。
「また海に入るなら安全の為に一曲奉納しろとお父様が言うので。
ギルバート殿下は早く帰って国王陛下に魔物討伐完了の報告をした方が良いのでは?」
「それは他の者にやらせる」
「あらあら」
「其方、まさか水着のまま歌うのか?」
「その方がすぐに海に入れますし」
「水着のままだと宝珠で記録出来ないので服を着てくれ」
ええ〜、面倒。
でも……ふと、思い出す。
「そう言えば、水着の時は私を宝珠で撮影してませんでしたね」
「出来る訳ないだろう!」
「紳士……」
「当たり前だろう!」
真っ赤になってる。
ギルバート殿下は意外な程、真面目な紳士だと思った。
私の方は男性が水着姿でも構わず撮影してたけどね。
別に変態じゃないから! 普通だから!
*
海神を讃える歌を捧げるため、青い衣装を着る事にした。
せっかくだから、殿下から頂いた、ラピスラズリのあのドレスにした。
劣化防止に亜空間収納に入れて来てるから。
裾が長いから、足元は敷物を敷いて貰った。
着替えの為の天幕と砂浜までの移動は、裾が汚れないように、お父様がお姫様抱っこで運んでくれた。
*
海神を讃える歌を歌う。
私はハープを奏で、リナルドは草笛のような物を使っているとは思えない程、神秘的な音を奏で、大海原に響かせる。
伴奏に歌声を乗せる。
この雄大な海の浄化と安寧を祈り、歌う。
前方の海が光り輝く。
「「おお……」」
魔物討伐に呼ばれた騎士と魔法師達も見守っていたのだけど、周囲から感嘆の声が漏れた。
……なんであの海光ったの?
歌の奉納で眠っていた海の神が目覚めたのだろうか……?
分からないけど、もし喜んで下さったなら、伊勢海老みたいな美味しいエビをいただけると嬉しいです!
*
歌が終わると拍手の音が響いた。
私は海に向かって一度頭を下げ、お父様のお姫様抱っこで天幕に戻った。
殿下はしっかりと記録が出来てホクホク顔だった。
*
イカ焼きパーティーとプチリサイタルの後は、ようやくモリで魚を突いてゲットしよう計画開始!
伊勢海老っぽいのを探すのなら、前世だったらテトラポットの隙間を狙う所だったけど、ここは異世界だからテトラポットは無いだろう。
などと考えていると、林に設置した天幕から出て来た殿下は銛を装備した私と遭遇した。
「セレスティアナ、何故、漁師のような銛を持っているのだ? 泳ぐだけじゃないのか?」
「せっかく海に来て、水着も着てるんですよ。潜ってお魚を探してみたいと思います」
「ええ!? あんなに大きなイカを食べたじゃないか!」
「それはそれです。では、失礼して私は海に行きます」
お父様とラナンとローウェも水着を持ってるので、こちらは準備完了している。
「待て。私も一緒に行く」
海に入ると言う私の言葉を聞いて、私の着替え中、自分も水着に着替えて来たようだった。
「あら、ギルバート殿下の側近達まで」
「こんな事もあろうかと、下に着て準備はしておりました」
ドヤ顔のチャールズさんはそう言って胸を張った。
用意周到!
「しかし、あんな巨大イカが美味しいとは思いませんでした。
普通ダイオウイカとかは不味いと聞きますし」
「そこは魔法生物の不思議な所ですね。
勇者の冒険小説に多くのマナを取り込んだクラーケンは美味しいと書いてあったのを思い出したんですよ。それで、もしかして、本当に美味しいのでは?と思ったんです」
「ほう。まさかの冒険小説の情報で」
殿下の側近のチャールズさんと雑談をしながらザブザブと海に入っていく。
お父様とラナンにも酸素石を渡してそれを口に入れて潜る。
「ギルバート殿下は、あ、魔法結界で膜を張って潜れるんでしたね」
「水と風の精霊の加護の無い他の者は無理はするなよ」
殿下は側近の騎士達に言った。
「はい、あまり長い時間潜らずにたまに浮上してください」
「私は水中で息が出来る魔道具を持ってきたので大丈夫です」
「本当か、セス。いつの間に」
セスは首から下げている小さな青い石付きのペンダントを見せて微笑んだ。
「さあ、潜りますよ」
そう言って私は水中で目を凝らした。
魔物がいたとも思えないくらい綺麗な海だった。
珊瑚礁の有る美しい海だ。
シリキルリスズメダイに似た綺麗で可愛い青いお魚が沢山泳いでいる。
今回は水中撮影なので、スマホのような板型ではなく、首にかけられる方の丸いペンダント加工の宝珠を借りて来たので、それで美しい海を撮影する。
エビを求めて泳いでいたら、クラーケンから助けた人魚さんが出て来た。
しかも手招きしてる!
近寄ってみたら、岩場の影を指さしている。
伊勢海老っぽいの発見!
銛の出番!
狙いを定め、ガッと銛を突き刺した。
伊勢海老っぽいの! とったど──!!
大喜びでお父様の方を見れば、素手で伊勢海老っぽいのをひょいひょいと捕まえて網に入れていた。
素手──────っ!!
周囲のグッドルッキングガイ達は素手で伊勢海老っぽいエビを次々とゲットしては網に入れていく。
ラナンも素手で魚を捕まえていた。
どんな素早さをしているのか。
まあ、いいけどね!
大漁嬉しい!
海神様と人魚さん! ご協力ありがとうございます!
その後、貝とか海藻も人魚さんの案内でお土産を大量にゲットして陸に戻った。
エビが好きだから……!




