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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
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砂の城を連れ去る波

 シーマンの討伐を終えたレオとカレンは、小さい小屋に戻った。薄暗い小屋の中で、リィルは退屈そうに椅子に座り、机に顎を乗せていた。


「あ、お姉ちゃん。おかえりっ。」

「ごめんねリィル。心配かけて。」

「ううん、大丈夫だよっ。」


 リィルの言葉を聞いて安心したカレンは、扉の近くの壁に、シーマンの血が付いた槍を立て掛けた。レオは扉を閉め、カレンと同時に椅子に座った。


「レオ君、体大丈夫?傷口開いてない?」

「大丈夫だよカレン。ありがとう。ところで、さっきスクリュー・ストレート使ってたけど、もしかして武闘家?」


 心配そうな顔をするカレンに、レオは興味を持った顔で問いかけた。


「あ、うん。レベルは28だからボクサーなんだけどね。レオ君の職業は?レベルは?」


 レオの問いに答えたカレンの顔は晴れたように明るくなった。


「レベル34の勇者だよ。」

「……勇者?そんな職業あるの?」

「うん。特別許可職って言って、僕はこの剣を手に入れて権利を与えられたんだ。」


 レオはそう言って、腰に縛ったアポカリプスを握った。


「そうなんだ。その剣、かっこいいよね。……戦ってる時のレオ君も…かっこよかったけどっ…」

「え?……あ……うん……ありがとう……」


 レオと向き合うように座るカレンは耳を赤くして目を逸らした。


「……ねぇねぇっ。」


 リィルは机に両手を置いて、レオに声をかけた。


「…あのさっ、あなたのこと、なんて呼べばいい?」

「う〜ん…………呼びやすいもので良いよ。」

「じゃあ……レオにぃっ!!これから私たち家族だよっ!!」


 リィルは椅子に立って、レオに瞳を輝かせた。


「ちょ、リィル……家族って………ごめんねレオ君。起きてから色々ありすぎて頭破裂しそうだよね。」

「ううん、大丈夫だよ。……家族…………か……」


 顔を赤くするカレンの言葉で、レオは顔を曇らせて呟いた。すると扉が開き、1人の男が小屋に入ってきた。


「あっ、ダードさん。どうしたんです?」

「あぁ、ちょっとな。その前に、シーマンの討伐、ありがとな。……そこの少年、浜辺に倒れてたらしいが、大丈夫だったか?名は?」

「レオです。初めまして。」


 レオは椅子に座ったまま、軽く頭を下げた。


「おう。ちょっと、カレンとレオ。集会所に来てくれないか?話があるんだ。」

「うん、分かった。レオ君行こうか。…リィル、ごめんね。またお留守番できる?」

「うんっ!」


 リィルが頷くと、レオとカレンは立ち上がり、ダードについて行った。肌寒い風に吹かれて歩くと、3人は少し大きな藁屋根の建物に入った。中は薄暗く、天井に吊るされたランプの火で照らされている。


「村長、連れてきました。」

「おぉ、ご苦労であった。ささ、3人とも座りなさい。」


 中には10人ほどの男が藁の座布団に座っており、奥には白いひげの老人が座っていた。彼がこの村の村長らしい。レオとカレンとダードは空いていた藁の座布団に座った。


「そちらの少年、名はなんと申す?」

「レオです。」

「そうか。レオよ、カレンよ、魔物の討伐、ご苦労であった。村の人々は心から感謝しておる。」


 村長が言うと、他の村人たちは目を閉じて頷いた。


「この村は小さい。そして、村人たちは武器を持っておらんし、戦術も知らぬ。もしお前さん達がいなければ、今頃ここは魔物の巣になっていたであろう。ところでレオよ。浜辺に倒れていたと聞いたが、海で事故でもあったのか…?」

「…………分かりません…………覚えてないんです…………何も…………。」


 レオは首を横に振り、暗い表情で言った。


「……そうか。まぁ、ゆっくりと思い出すがよい。そしてレオよ。1つ頼みがあるのだが……」

「なんですか…?」


 村長は長いひげを触りながら言うと、レオは顔をあげて村長の目を見た。


「お前さんが他国の者…いや、他界の者ということは分かっておる。どうか、しばらくこの村を守ってはくれんか…。嫌ならよいのだが……。」


 村長の眼差しは助けて欲しいと叫んでいた。レオはそんな村長の瞳に心が動き、ゆっくりと頷いた。


「……分かりました。この村を守ってみせます。」

「…よいのか…………レオよ、心から感謝する。もちろん、タダで頼むわけにはいかん。レオよ、カレンもだ。褒美を与えさせてくれ。何でもよいぞ。」


 村長が言うと、カレンは微笑みながら首を横に振った。


「村長、褒美なんていいよ。この村でみんなと過ごせることが私にとって1番の褒美だから。」

「……そうか。……人間というものは優しい種族なのだな……。ではレオよ、お前さんは何を望む…?」

「………………すみません………この村を守るって言ったばかりに、我がままなこと言うんですけど……」


 レオは両手を膝の上で握りしめ、優しい顔の村長を見て、言葉を放った。


「僕には、行くべき場所があるのです。この村の安全が確保できたら…………パーニズに行かせて下さい。できれば……すぐ行きたいんです。行かなければならないんです。」


 レオは胸を手で押さえた。自分の発言に胸が痛くなり、目の下が熱くなっていくのが分かる。しかし、この村で意識を取り戻した時から、頭の中ではパーニズに行かなければならないという言葉だけが残っていたのだ。


「……パーニズとな…………オーリンの北にあるあの国か…………しかしレオよ。残念な事に、今の海の状況では、ペガサスどころか、舟も出せん。…………つまりだ、お前さんの望みは…………叶えられん。」


 外からは強い風と波の音と、雷の音が聞こえた。

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