取り戻すべきもの
微かに雷の音が聞こえるギルド小屋の中で、アランは全身の力が抜けるような言葉を聞いた。
「ま……魔王じゃないって………………」
「……はい。残念ながら。」
エルドは首を横に振って、小さい声で言った。アランの床についた両手や、血を吐いた口は震えている。
「……じゃ……じゃあ…………あれは何だったんだ………………アイツは…………」
「2本の剣、白い髪、小柄の男。恐らく、デルガド・カーリー。カーリー家の中で、魔術と剣術に優れた少年。魔王の手先…いや、幹部ほどの力でしょうか。」
エルドの言葉で、アランの肩の力は完全に抜けた。脚にも力は入らず、立ち直ることすら出来そうもない。
「カーリー家か。久しぶりに聞いたな。まさかダークネスに居たとは……」
リュオンは懐かしむような顔をして、タバコの煙を吐いた。すると、マリスは両手を握って胸に当て、下を向いた。
「……どうした、マリス。」
「あ、シルバ。……ううん……何でもないよ。……ただ………前は優しかったんだ……彼…………。」
「…………そっか……マリスちゃんとエルドじぃにとって、その人達は仲間だったんだよね…………」
クレアはマリスの顔を見て、悲しみを噛み締めた。すると、入り口の扉が開き、1人の鎧の男が入ってきた。エレナスだ。
「お、起きたかアラン。大丈夫か?」
「これはこれは、マスター。町はどうでしたか。」
「…………マ……マスター…………?」
エルドの言葉で、アランはエレナスの顔を見て驚いた。エレナスは、パーニズ城の兵長であり、パーニズ・ギルダーズのギルドマスターだったのだ。
「あぁ、やはり施設も民家もダメージを受けている。ところでアラン、なぜ床で倒れているんだ?」
「………………これは………………」
アランが小さい声で言うと、エルドが先ほどまでの事を話した。
「なるほど、尖った耳か。確かに驚いても仕方がないな。だがアラン、エルドとマリスはダークネスだが、良いやつだ。それに、ココは魔物だが、立派な仲間だ。それだけは覚えておいてくれ。」
「……はぃ…………」
エレナスはアランに笑顔で話した後、リュオンを見て苦笑いで口を開いた。
「それにしてもリュオン、お前また銃出したのか?危ねぇぞぉ。」
「フッ、前の仕事でついて来た病ってやつだ。ほっとけ。」
リュオンはそう言ってタバコの煙を吐き、シルクハットを深く被った。
「それでアラン、その傷はどうした?他の3人は?」
「…………分かんないっす…………あいつらがどこに行ったのかも…………この胸の怪我も…………」
アランが言うと、エルドはエレナスの前に立ち、話し始めた。
「マスター。提案があります。ペガサスが出せないという状況の中ですが、レオさんとドーマさんとネネカさんを探しに行きたいと思うのです。そうすれば、アランさんも何かを思い出す可能性があります。……お願いします。」
エルドは目を閉じてエレナスに頭を下げた。するとエレナスはエルドの行動に驚いて、頭を上げるよう言った。
「よせよエルド。そういうのいいから……。んで、それはギルドのみんなは賛成しているのか?」
「少なくとも、俺以外はな。」
リュオンは椅子に座り、黄金のハンドガンを手に取り、見つめはじめた。
「そうか。じゃあエルド、1つ条件がある。」
「はいマスター、何でしょうか。」
「俺をそのパーティに入れろ。気に入った仕事はやり遂げてみせる。アラン、お前も一緒に来て欲しい。」
エレナスは笑顔でアランに言った。アランは頷き、ゆっくり立ち上がった。
「はいっ。行かせてくださいっ…………でも、この怪我では足手纏いに……」
「心配するな。マリス、アランの治療のために一緒に来てくれ。」
マリスは頷き、アランの近くに立った。
「じゃあ、あと1人はお前が決めろ。アラン。」
「…………リュオンさん、一緒に来てくれたら、俺の頭踏んだ事と銃口向けた事、許しますよ。」
アランはニヤけてリュオンに言った。リュオンは一瞬止まり、ため息をついた。
「……はぁ……。変な取引だな。……嫌いなんだよこういうの。」
リュオンは立ち上がり、銃を内ポケットにしまった。ゾロマスクで目は見えないが、面倒くさそうな顔をしているに違いない。アランは先ほどのリュオンの強さを気に入り、パーティに誘ったのだ。
「では、行ってらっしゃいませ。」
「おう、エルド。行ってくる。」
エレナスとアランとマリスとリュオンは、小屋を出て冷たい風の中を歩いて行った。
その頃、とある島では…………
「……………………」
静かな波の音が聞こえる。
「……………………」
1人の少女が砂浜を歩いている。
「……………………」
「……………………!!お姉ちゃんっ!!人が倒れてるよっ!!」




