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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
76/206

たどり着いた場所

 4人は辺りを見回した。先ほどまで大勢居た兵士や魔物達の姿は無く、ただ果ての見えぬ禍々しい空間が広がっている。足元からジワジワと上がってくる恐怖が心臓の鼓動となって胸を叩く。


「……どうなっちまったんだ……俺達……?」

「…………まさか………さっきの頭痛でアタシ達…………死んだ……?」



「それは違うな。」



 アランとドーマの震える声の後に続いて、1人の男が口を開いた。4人はその声に振り向くと同時に武器を構えた。


「誰だっ!!」

「ふっ……聞きたいのはこっちだ。貴様らこそ何者だ……。」


 少し遠くに立っていた男は紫色の瞳をギラつかせ、4人を睨んだ。髪は白く少し小柄だ。耳が尖っているが、顔はレオに似ている。偶然だろうか。


「ここはどこなのですか!?」

「俺が作った空間だ。見ての通り、貴様らだけをここに連れてきた。邪魔をされては困るからな。」

「邪魔をって………何の…………?」


 レオの言葉に、男は不気味に微笑んだ。


「聞く必要無いだろう。…………まぁいい。分かりやすく最初から話そう。この世界に突然現れた新種族、人間。貴様らはあっさりと俺達の敵となった。そんな人間の中で、危険人物を探ったところ、貴様らを見つけた。……そう……貴様らは危険だ…………」


 男は左右の腰に付けた鞘から剣を2本抜き出し、4人を順に見た。


「ここまで話せば俺のやりたい事が理解できるだろう?人間にも考える脳がある事は知っている。だが、色は知らない…………。」


 男は獲物を見つめる目になった。4人は武器を構えたが、この時、彼らに感じたことの無い恐怖が襲いかかった。今、倒すべき相手は人の形をしている。自分と同じように話す。そして自分は、人に殺意など向けた事が無い。自分に人が殺せるのか。皮膚の穴という穴から気味の悪い汗が出る。


「貴様らを殺して、その脳の色も血の色も全部見てやるっ!!」

「…来るぞっ!!」


 レオが言ったその瞬間、レオの剣と男の2本の剣が火花を散らして大きな音を響かせた。男は一瞬で4人に接近したのだ。その瞬間から、レオ達は武器を強く握り締めて覚悟を決めた。やらなければやられる。ただ、それだけだからだ。いつもと何も変わらない。何も変わらないのだ。


「…………くぅっ!!」

「ふっ。アポカリプスとは、面白い。ますます貴様を斬りたくなってきた。」

「はぁぁっ!!」


 アランは笑う男に拳を突き出した。男はその拳を見ると、片手の剣でアランに振りかかった。


「させないっ!!」


 ドーマは男に矢を放った。男はレオの剣から離れ、2本の剣で矢を斬り刻んだ。


「残念。」

「そこだっ!!」

「“銀の拳”!!」


 レオとアランが男に再び攻撃すると、男は後ろに跳んで回避しつつ、左手の剣を2人に向けた。


「“フレア・バーニング・サン”。」


 男の剣から舞い狂う炎が現れ、レオとアランを巻き込むように放たれた。


「魔法っ!?がぁぁっ!!」

「ああぁぁっ!!」

「アランっ!!レオっ!!」


 ドーマは炎の竜巻きを見て叫んだ。炎が消えると、ネネカは膝をついた2人に魔法を唱えた。


「“フレッシュ”っ!大丈夫ですかっ!?」

「回復魔法……嫌いだな……先に潰しておこうかっ!!」


 男はネネカ目掛けて剣を握って飛び込んだ。殺意に満ちた顔を見たネネカが息を止めると、ドーマは咄嗟にネネカの前に立った。


「ドーマさんっ!!」

「邪魔だぁっ!!」


 男はドーマの腹に蹴りを入れ、ドーマを遠くに飛ばした。


「あああぁぁぁぁっ!!」

「ドーマさんっ!!」

「“ソードテンペスト”っ!!」


 レオが剣の軌跡を放つと、男は流れるように回避した。ネネカはその隙に、ドーマの所へ走って行った。


「それが簡単に当たるとでも?」


 男は両手の剣をレオに向けて振り回し始めた。


「確実に当てるなら数だ。手本を見せてやる。“ソードテンペスト”っ!!」


 男の2本の剣から、多くの軌跡がレオに向かって放たれた。レオは無限に放たれる軌跡を、男を中心に円を描くように走って避けた。


「ふっ、避けるだけか?剣が腐ってしまうぞ!!」

「そこだぁっ!!“メガ・クラッシャー”ぁぁっ!!」


 空間を斬り刻む男の頭上にアランは飛び込み、男に

右足を突き出した。男はアランの重たい足を左手の剣で受け止め、不気味に微笑んだ。


「気合だけは褒めてやる。“エレキ・トロン”っ!!」

「…!!がはぁぁあぁぁぁっ!!」


 剣からは空間を貫くような雷が現れ、アランを激しい光で包み込んだ。


「少しは注意というのを学んだらどうだ?」

「くぅぅっ………チィッ!!“スクリュー・ストレート”ぉっ!!」


 アランは体に刺さる痛みに耐えながら、拳に竜巻きを纏わせて放ち、同時に距離をとった。男は右手の剣で竜巻きを斬り払った。


「はぁっ……はぁっ………」(体力だけが無くなっていくっ……どうやって戦えばっ……!!)

「こんな奴らに俺の手下がやられていたとは…」

「はぁぁぁぁぁっ!!」


 レオは男の背後から飛び込み、剣を握った。


「期待ハズレだったなぁ!!」

「“回転斬り”ぃっ!!」


 レオは空中で体勢を横にして、縦に刃をを走らせた。男はレオの方に振り返り、2本の剣で攻撃を受け止めた。交わった剣はジリジリと音を立てている。


「くっ…………!!」

「悔しいだろう。足掻き、生き抜いて、たどり着いたのは結局、死。俺の前で枯れるまで血を流す………望まぬ最期だろうなぁ!!」


 男はそう言うと、レオの腹に禍々しいオーラを纏った足で蹴りを入れ、遠くまで飛ばした。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

「レオっ!!」


 地面に体を叩き付けられ、動かなくなったレオを見て、アランは立ち上がり、男の方へ走り出した。


「そう簡単にやられてたまるかぁっ!!」

「…………暑苦しいな。」


 男は左手の剣を地面に刺し、手を広げて、アランの方に向けた。手からは禍々しいオーラのようなものが溢れてくる。


「“ヘル・キャノン”……」


 その時、男の手から激しい音とともに、一直線に禍々しく巨大な波動が放たれ、アランの姿が見えなくなるほどに巻き込んだ。


「……!!アラぁぁぁぁぁンっっ!!」

「アランさぁぁぁぁんっ!!」


 遠くから見ていたドーマとネネカが、波動の中に消えたアランに叫んだ。しかし、波動の激しい音はそんな2人の声さえ消してしまう。


 しばらくすると波動は消え、煙の中に薄く人の姿が見えた。アランだ。


「アラン……!!」


「………………っ」


 アランは右の拳を突き出して立っていた。しかし、体のあちこちから赤い血が流れていた。そしてその後、アランは力尽きたかのように脚から崩れるように倒れた。


「アランさんっ!!」


「……先ほど同様のスクリュー・ストレートで少しは防いだものの、致命傷とは…………無駄な足掻きだったな。」


 男は血だらけのアランを見捨てると、地面に刺した剣を引き抜くと同時に、遠くにいるドーマとネネカを見た。


「……女か…………。」


「ネネカ、アタシから離れろ。」

「えっ……でっ、でも……」

「迷ってんじゃねぇよっ!!早くっ!!」


 ドーマはネネカに怒鳴った。ネネカの胸に声が刺さり、目からは熱い涙が溢れ出てきた。



 その時ネネカは感じた。


 自分は多くの優しさに包まれていたという事を……最後の最後まで守られっぱなしだったと………………



「血を流せっ!!」

「くぅぅっ!!」


 男は一瞬でドーマに接近し、左手の剣を振ると、ドーマの弓と交わった。男の剣の振りは重たく、受け止めるだけで精一杯だった。


「……ネネカっ……!!…………早くっ!!」

「死ぬと決まった運命の中で足掻くとは、やはり愚かだっ!!」


 男はそう言って、右手の剣を斜めに振った。刃の先は、ドーマの左肩から右の腹まで走り、ドーマの体からは生温く赤い血が噴き出した。


「いっ……!!ああぁぁぁっ!!」

「終わりだっ!!」


 男はドーマの右側の腹を蹴り、飛ばした。


「……!!ドーマさぁぁぁぁぁんっっ!!!」


 ネネカは叫び、泣いた。この状況を見て、死の恐ろしさを改めて噛み締めた。高鳴る心臓の鼓動としゃくり上げるような呼吸をするたび、自分はまだ生きている…生かされている……そう感じる。


「……皆より長く生きれて嬉しいだろう。」


 男は、膝をついて動けなくなったネネカの前に立ち、剣を握った。


「だが、もうすぐ貴様も喜怒哀楽を失う。あの3人のようになぁっ!!」

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