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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
48/206

味という歌を

「それじゃあクレアさん、行ってきます。」

「うん。行っといで!」


 青く晴れた空の下、パーニズの町の門の前で、レオ達とクレアは明るい表情を見せ合った。


「ところで、今回のクエストでは、クレアさんは何をする係なんですか?」


 ドーマが問いかけると、クレアはギターを出して優しい顔で話した。


「まず、君たちがバインダイルの背中からルビーキャベツを盗むでしょ?そしたら、バインダイルは怒って君たちを追いかけると思うの。追いかけられながら君たちが走ってここまで来ると、私の登場!このギターの音色でバインダイルを眠らせる。それが私の役目。じゃ、がんばって!」


 クレアはレオとアランの肩を軽く叩くと、四人はパーニズの北の方へ歩き始めた。




「そういえば、歩いて目的地に行くなんて久しぶりだな。」

「そうだねアラン。こうして歩いていると、修学旅行の班別研修を思い出すよ。そう思わない?ネネカ。」


 レオが俯いているネネカに言うと、ネネカは素早く顔を上げ、レオの方を見た。


「そ、そうですね……班、一緒でしたし………」

「あれ、そうだったのかネネカ。さぞ楽しかったんでしょうなぁ。」


 ドーマが笑いながら言うと、ネネカは頬を少し赤くして、黙って下を向いた。しばらく歩くと、ゴブリンの洞窟が目に入り、最初にクエストを受けた時のことを思い出しながら、四人は北へと進んだ。


「デンテ、ルビーキャベツで何をつくるんだろう……アランはなんだと思う?」

「普通にサラダじゃね?」

「肉も使って、ロールキャベツとかじゃぁないでしょうか?」

「アタシは、キャベツ鍋とか…?デンテ、意外と料理はできるからなぁ。」


 レオ達が話していると、四人の先に眠っている緑色の大きな竜が現れた。よく見ると、全身が根や葉でできていて、背中には赤い大きな葉がまとまって丸くなっている。


「うぉっ、でけぇ………これがバインダイルか………」

「みんな、あそこを見て。あの丸い葉のまとまりが、多分ルビーキャベツだ。」


 レオが指をさして言うと、他の三人は一歩後ろへ下がった。


「みんな、どうしたの?」

「レオさん……誰が盗むんです?あのキャベツ……」

「盗んだ人が追いかけられるってことだよな…………おいアラン、お前行け。」


 ドーマは腕を組み、バインダイルの方に首を振った。


「はぁ!?なんで俺なんだよ!?いつも魔物に接近しないお前が行くべきだろうが!!触れ合って来いよ!!」

「怖いのか?その筋肉は何のためにつけたんだ?」

「ボクシングのためだよ!!でけぇキャベツ運ぶための筋肉じゃねぇんだぞ!!そんなこともわからんのかお前は!!」

「はぁ?」

「あぁっ!?」

「はぁ?」

「あぁっ!?」


 アランとドーマが睨み合うと、ネネカは間に入って言った。


「やめてください、魔物が起きちゃいます。もうレオさんがルビーキャベツのところに居ますから…………」


 アランとドーマが上を見ると、ルビーキャベツの横に剣を持ったレオが立っているのが見えた。


「みんな、逃げる準備はいい?いくよー!!」

「……………やっぱ違うな……レオは……」


 するとレオはルビーキャベツの根本に刃を通し、ルビーキャベツを持ち上げた。その時、地面から多くの根が勢いよく飛び出し、バインダイルは体を大きく揺らして目を覚ました。


「レオ!!急いで飛び降りろ!!」

「うん!!」

『グオォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!』


 アランが叫びレオがバインダイルの上から飛び降りると、バインダイルは雄叫びをあげ、四人はパーニズに向かって走り出した。レオの両腕にはルビーキャベツがしっかりと入っていた。


「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「レオ!!俺に投げろ!!」


 アランが大声で言うと、レオは重たいルビーキャベツをアランに投げた。アランはルビーキャベツを両手で受け止め、全力で走った。振り返ると、怒り狂ったバインダイルが根を伸ばして追いかけてくるのが見えた。


「ゴブリンの洞窟だ!!もう少しだからがんばろう!!」

「まだまだ先だろうが!!」


 するとバインダイルはアランの方に根を伸ばしはじめた。


「アランさん!!来てますよ!!」

「チィッ……おいレオ!!パス!!」


 アランがルビーキャベツを投げると、レオは両手で受け止めた。バインダイルはアランの方に根を伸ばすことをやめ、レオの方に根を伸ばした。


「……まだか町は……………」




 その頃、町の門の前では、ギターを持ったクレアが静かに弾き語りをしながらレオ達を待っていた。しばらくすると、大きなルビーキャベツを持って走ってくる四人と、それを追いかけるバインダイルの姿が見えた。


「じゃあ、ライブを始めますか…。」


 クレアは弾き語りをやめ、一息はいた。

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