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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
160/206

共鳴

 翌日、月光という名をもつ刀を手に入れるべく、レオ達はローアの壁から外に出た。レオ、アラン、ネネカ、シルバの4人は、ペガサスに乗って大空を駆ける。彼らは、シルバの持つ陽光の共鳴を頼りに、月光がある場所へと向かっているところだ。


「……こっちか。……いや、………こっち……ん…?……やっぱ………こっち……?」


 先頭のシルバは陽光を前に伸ばし、刃を光らせていた。しかし、先ほどから正確な位置をつかめていないようだ。昨日、マリスの口からは「簡単に分かる」と聞いたはずだが、今のシルバを見る限り、そんな様子は無い。そんな彼にレオは問いかけた。


「シルバさん、何かあったんですか?」

「ん?……あぁ、さっきから共鳴は感じ取れているんだが…………妙だな、2つある。……デカいのと……ちっこいの………」


 シルバはその後黙り込んだ。するとレオは、昨日のマリスの話から気になった事をもう1つシルバに問いかけた。


「あの、シルバさんとハクヤさんが戦ったことで、シルバさんの陽光と、月光っていう刀は共鳴を始めたんですよね…?薄々気付いてたつもりなんですけど、僕たち今からハクヤさんのところに行くんですか?」

「えっ、そうだけど?………まさか言ってなかった?」


 シルバは苦笑いをして後ろの3人を見た。3人も同じように苦笑いをしていた。アランは頭を抱えて呟く。


「マジかよ……直接会いに行って、『あなたの刀ください』って言ってもらえるはずがねぇし……となると、また戦わなけりゃならねぇのか………あのバケモノとっ……」

「だな。………と言いたいところだったが、どうもそうならない気もするんだ。」

「えっ。」


 シルバの言葉に、3人の目は点になった。シルバは続けて口を開く。


「恐らく、デカい反応がハクヤの持つ月光だ。そして、ちっこい反応は、月光の破片……っぽい。っとすると、ハクヤとの接触の可能性はゼロとまでは言わねぇが、低いんじゃないかな、と。」

「……ゼロでは…ない…………。ハクヤさんの持つ月光も、同じように共鳴している可能性もありますからね……。もしかすると、襲いに来るかも……」


 ネネカが下を向いてそう呟くと、一安心していたはずのアランの背筋が再び凍った。彼女の声にシルバは振り向く。


「おっ、いいトコ気付いたな。そうなんだよねぇ〜、だから、風呂ん時と寝る時はこの刀をなるべく遠くに投げ飛ばしてんだ〜。」

「……扱いが酷いな…」


 シルバは笑いながらそう言った。アランは彼の背を見て苦笑いをする。レオは笑うシルバに口を開いた。


「じゃあ、もしハクヤさんが来たらどうします?戦うか逃げるかくらいは決めておいたほうが——」

「いや、破片をサッと取ってサッと帰るっ!これに限るだろ。」

「…そう……ですか。あはは………」





 4人の乗るペガサスは南に向かい、辿り着いた先は極寒の地フリールにある廃墟だった。その入り口にはダークネスへと続く闇の渦がある。ひとまず4人はヒートペッパーを食べ、体温を上げた。遠くが見えないほどの吹雪と分厚い氷に覆われた大地の上では、ヒートペッパーを食べても肌寒さを感じる。アランは廃墟を見てネネカに問いかけた。


「……何なんだ…これ………肝試しにはちょうどいい不気味さだな……」

「……そんな軽い場所ではありません……この施設は…」


 ネネカの黒く長い髪が、白い息を纏って靡く。レオは闇の渦を見て呟いた。


「………ここ、マリスさんの母が居る場所ですよね……。銀刄城跡地の渦ならまだしも、どうしてここに……」

「まっ、行ってみなけりゃ何も分からねぇさ。んじゃ、行くとしますか。」


 シルバは軽い足取で闇の渦に入って行った。レオ達3人も息を呑んだ後にゆっくりと闇の渦に入って行った。一瞬で辺り一面は気味の悪い禍々しい色に染まった。





 目の前に光が見えた。一歩踏み出すと、渦から出た。3人は前を見ると、そこには辺りを見渡すシルバの姿があった。3人も同じように首を動かす。コンクリートの壁、錆びついた数本のパイプ、天井には氷柱、そして左側には冷たい顔をしたアイアンメイデンがある。周囲は薄暗く、足音や外の吹雪が不気味に響く。以前と何も変わらない。レオとネネカはそう感じた。


「……おい…レオとネネカは来たことあるんだよな……。よくこんな所来れたな……」


 アランは白い息を出して言った。その小さい声もコンクリートが不気味に響かせる。寒さからの震えか、恐怖からの震えか、静かすぎるこの施設の中では誰も教えてはくれない。するとシルバは陽光の刃を光らせて歩き始めた。


「こっちだ。行くぞ。」

「はい。」


 4人が向かった先は、地下へと続く階段だった。シルバは足を止める事なく降りていくが、3人の足取は鉛のように重かった。特にレオとネネカがそうだ。すると、4人の前に鉄のドアが現れた。シルバは冷たいドアノブを掴んで捻り、重い音を立てて開いた。レオはアランに小さく口を開く。


「これから見る光景で、僕たちの敵がどんなヤツらなのか分かるはずだ。つらくなったら無理をしなくてもいい。」

「えっ……あ、あぁ。」


 レオ達は中へ入った。先は霧がかった一方通行で、冷たい床には、赤黒い液体が叩き付けられたかのように飛び散っている。左右には頑丈な鉄格子が並んでいる。何も変わらない。アランはその光景に口を震わせて呟いた。


「……なんだ……ここ……牢屋……っ。拷問器具も転がってやがる……。処刑場か何かか………?」

「ここは研究施設です。この世界に突如現れた私達人間を解剖したり、魔物と融合させたりして研究をしているんですよ。そしてこの地下室は、その研究材料となる人間を保管する場所です。私達がこの世界に来る前は保護施設だったようですが………」

「………なんだ…そりゃ……」


 ネネカの言葉に、アランの中に驚きと恐怖が増していった。




 しばらく鉄格子の間を歩き続けたが、レオとネネカは1つだけ以前とは違う変化に気が付いた。どの鉄格子の中にも、人の姿が無いのだ。直接死を目の当たりにしたアンドレイの姿も無い。それもまた、奇妙に感じ取ることができ、恐怖がより増す。しかし、先を行くシルバの後ろ姿を見ると、それが和らぐ。彼の韓紅花(からくれない)の衣は、まるで夜道を照らす灯火のようだ。ようやく長い一方通行を突き当たると、4人は立ち止まった。レオは呟く。


「ここ……前は鍵があった場所……」


 右の鉄格子は曲げられており、左の鉄格子の中は天井までもが赤く染まっている。そして、以前のように左の鉄格子は開いている。シルバは陽光の刃を光らせて中に入った。


「よっこいしょ、ごめんくださ〜い。」


 シルバは鉄格子の中でしゃがみ込み、床を見つめた。痛みやら悲しみやら怒りやらが血となってこの格子の中を染めたのだろう。シルバの目は急に鋭くなった。そして、鈍く光る何かを見つけた。刀の先端だ。


「……月光。って事は、ハクヤはここに………なるほど、アイツのあの傷は全部……」


 シルバは月光の破片を右手で拾い上げ、握った。右手からは赤い血が一筋流れ、雫となって冷たい床に落ちる。シルバは静かに立ち上がった。


「……シルバさん、ありましたか?」


 レオが白い息とともにそう口を開くと、シルバは3人の方に振り返った。


「あぁ。……じゃ、帰るか。」


 シルバは鉄格子の中から出て、3人を背に歩き出した。シルバが置いていった数滴の血は、音を立てる事なく静かに凍った。

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