表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
157/206

海底にひとり

 レオ達3人はセイレーンが落としたペンダントを探すべく、魚人族の住むユーデューシェルから暗黒の世界に出た。全身を包む水は冷たく、辺りはとても静かだ。周囲に広がる暗闇を見てアランは腕を組んで口を開いた。


「さて……探すとは言っても、この暗さじゃあ無謀に近いんじゃねぇのか?」

「アラン、ネネカ。これを。」


 レオは2人に光る何かを渡した。手のひらに収まる大きさの真珠だ。


「これは……?」

「さっき、道中で拾ったんだ。その場で使えそうな物は使わなきゃね。」


 その真珠は辺りを薄く照らした。深海の暗さに対して光は弱かったが、あるだけマシと言ったところだろう。


「オキシケルプの数は限られている。空気が無くなったら躊躇うことなく使うべきだけど、無理はしないように。もしもオキシケルプが無くなったら、その時は自分の命が優先だ。とにかく上を目指して。」

「はい。……全員、生きて帰りましょう。」


 ネネカはレオに頷いた。するとレオは付け加えるように再び口を開いた。


「っと、もう一つ。ペンダントを見つけたら、他の2人が気付けるようなスキルを使って。アランはプロミネンスストレート、ネネカはウォールファントム、僕はバードストライク……かな。」

「はいよ。んじゃ、とっとと見つけて海帝鯨の所に戻りますか…っと。俺はあっちを見てくる。」


 アランはそう口にすると、物凄い速さでケルピーを走らせた。アランの持つ真珠の光が小さくなっていく。


「じゃあ、僕らも。」

「…そ…そうですね。……どうか、ご無事で……」


 レオとネネカも、それぞれ別方向にケルピーを走らせた。冷たく黒い水を全身で受けながら暗闇を走り抜ける。海底の砂が巻き上がる。


「………ペンダント……どこだ……」


 レオは静かに呟いた。暗闇の中に1人取り残されたように感じてから気が付いたことは、今、自分達がやっている事は先程アランが言ったように無謀に近いということだ。


『ヒヒィィィン…』


 薄く照らされた海底を見つめながら、ひたすらケルピーを走らせる。しかし、目に映るのは砂だけだ。しばらくすると、レオは自分の頭部を包む空気が小さくなっている事に気付き、ケルピーを止めた後にオキシケルプを口に入れた。そして、辺りを見渡した。アランとネネカの様子を気にしたが、何も見えない。


「………さすがにまだ見つからないか。」

『ヒヒィィィンッ!!』


 突然、ケルピーが前脚を高く上げて鳴き始めた。


「っ!?どうしたっ!?」


 レオは正面に見える暗黒に、光る真珠を持つ腕を伸ばして目を凝らした。何かがいる。それも複数だ。そして、それらは静かにこちらへ向かって来る。


「………あれは……魚人……?」


 向かって来るそれらの下半身が魚であることは確認できた。尾鰭を大きく動かしている。そして人のような腕や頭の形が見えた。


(……ユーデューシェルの外に魚人族が……。外の調査でもしてたのか……?……何か情報が手に入るかも…)「お〜〜〜〜〜いっ!」


 レオは左腕を挙げて大きく振った。複数の陰が近づいて来る。すると、群れの中心に居た陰がレオの動きに反応したのか、右腕を高く挙げた。


「よし、これで——」


 陰は挙げた腕を振り下ろした。ドスッという音と同時に周囲に赤色が漂い、ケルピーは鳴き声を止めて動かなくなった。


「ぇ…………」


 レオはゆっくりと視線を下げ、ケルピーを見た。ケルピーの胸から長い棒が伸びている。いや、刺さっているというほうが正しいだろう。槍だ。そして顔を上げると、目の前に陰の正体の顔があった。黄色に光る丸い目、鋭く尖った牙をもつ大きく裂けた口、そして鼻が無いという不気味な顔をしている。それは先ほど見た魚人族とは程遠いものだった。サハギンだ。


「魔物かっ!!」


 レオは咄嗟に目の前の顔を蹴り飛ばして距離をとり、右手を剣の柄にはこんだ。そして、折れた剣を抜き、構え、口を開く。


「“エクスカリバー”っ!!」


 折れた刃が光の刃に変わる。サハギンの群れはその剣の光に驚いたのか、一瞬の隙を見せた。そして、レオはその隙を逃さなかった。


「“ソードテンペスト”っ!!たァァァッ!!」


 レオは光の剣を振り、複数の光る軌道を放った。しかし水中では動きが鈍くなり、思うように剣が振れない。放った軌跡は1つも命中しなかった。


「っ、距離があってはダメかっ…」

『シャァァァァァッッ!!』


 複数のサハギンがレオに急接近した。相手は鰭をもっているため、水中での動きは早い。気づいた時には囲まれていた。複数のサハギンが一斉に襲い掛かる。


「この距離っ!!“スラッシュサイクロン”っ!!」


 レオは竜巻を纏って回転斬りをした。周囲にいたサハギンの体に光の刃が走る。レオは地面を蹴り、血の煙幕から抜け出した。


(ここでバードストライクを使って群れの真ん中で爆発を起こせば……いやっ、相手は水属性だ。それに、ここは水の中……。確実に威力は落ちる。そして、この技を使えば、無防備な2人が来てしまう。………どうするっ…)


 レオは海底に足をつけ、剣を握り締めた。相手は群れだ。それに、戦いの場としては群れの方が有利だ。少しでも判断を誤れば体を引き裂かれて餌食となる。


『シャァァァァァ!!』

「“ソードテンペスト”っ!!」


 レオは襲い掛かるサハギンに軌跡を放ち、距離をとる。それを繰り返しながら隙をつくり、群れを倒す策を練っていた。しかし、この時レオにはもう1つ考えておくべき事があった。レオの頬を冷たい海水が撫でる。


「っ!!しまったっ!!空気がっ!!」


 激しい動きをしていたため、多くの空気を消耗してしまったのだ。レオは右手で剣を振って軌跡を放ちながら、左手に持つ真珠を落とした後にポーチの中を探った。そしてオキシケルプを1つ掴んだその時だった。


『シャァァァァァッッッ!!』

「っ!?」


 背後に回ってきたサハギンが鋭い爪を大きく振り下ろしたのだ。レオは素早く振り返り、サハギンを斬り上げたものの、爪はポーチのベルトを裂いた。


「しまったっ!!」


 ポーチは光る真珠の横に落ちた。拾おうとは思ったが、サハギンは容赦なく襲い掛かって来る。レオは強く地面を蹴り、上へ上がった。


「マズいなっ…」


 レオは左手に握っていたオキシケルプを口に入れた。飲み込むと、口から空気が出て、頭部を包む。この時レオは、慣れない水中戦で疲労が溜まっていた。


「“ソードテンペスト”っ!!」


 レオは真下に群がるサハギンに軌跡を放った。いくつかのサハギンには命中したものの、群れは動きを止めない。レオの動きも時間が経つにつれ鈍くなる。殺されるのも時間の問題だ。暗闇の中で死に囲まれた彼を恐怖が侵食していく。


『シャァッ!!』


 下から1体のサハギンが、突き上げるように爪を伸ばした。レオはそれを肩に喰らったが、正面にサハギンの胴体が来たため、光の剣でサハギンの腹部を貫いた。


『ギャアァァ!!』


(……やっぱり、こうするしか他に方法は無いかっ…)

「アランっ、ネネカっ、僕は2人を信じるっ!!」


 レオはサハギンが刺さった光の剣を真下の群れに向けた。


「“バードストライク”!!はぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」


 剣は炎を纏い、レオは物凄い速さで地面に飛んだ。そして、剣先が地面に刺さると、レオを中心に大爆発が起こった。周辺が赤く照らされると、サハギンの群れは爆風で飛ばされ、散り散りになった。同時に、レオの頭部を包んでいた空気の大半も吹き飛ばされた。


「っ……ハァッ…ハァッ………力み過ぎた………か……」


 サハギンはレオの周りから姿を消したが、レオの体力と空気は限界を迎えていた。瞼が重い。手脚に力が入らない。剣が光の刃を失うと、レオは海底で力尽きた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ