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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
142/206

雪が隠す火の世界へ

 メルビア——


 北ラスカンと中央の海に囲まれた国で、雪の積もる大地には所々亀裂があり、覗けば溶岩が見える。


 レオ達3人はペガサスに乗り、海を越えてメルビアに向かおうとしていた。下に広がる海に3つの影が映る。すると、ローアの城を出てから肩を落としているアランが口を開いた。


「あ〜ぁ……結局、理想の女王様じゃなかったなぁ………若くて綺麗だったけど…」

「失礼だよアラン。…もしそれを本人の前で言ったら——」

「やめてくれぇぇ……完っ全に打首だぁぁっ……」


 アランは頭を抱え込んだ。風を切るペガサスの羽音が、青く広い大空に響く。すると、レオ達の視線の先にある水平線から、大陸が顔を出した。


「レオさん、アランさん。見えてきました。」

「よし、一応確認しておくけど、メルビアは地上と地下の温度差が激しい。ヒートペッパーとクールライチの使用には気をつけて。」


 ネネカの言葉の後に、レオは2人に呼びかけた。ネネカは頷いたが、アランは頭を抱えたままだ。レオはそれにため息を吐き、アランに口を開いた。


「アラン、……ツンデレって知ってる?」

「——絶っ対ェにありえねぇ。」






 レオ達はメルビアの地に降りた。雪はちらつき、大地を徐々に隠してゆく。指先から冷える。ネネカは両手を擦り、小さい口から息を吐いた。吐き出した息は白くなって広がる。


「寒いですね……」

「…だね。早速だけど、ヒートペッパーを食べよう。」


 レオが言うと、3人はポーチからヒートペッパーを取り出し、一息呑んで口に入れた。辛い液体が口に広がり、口内から胴体へと刺激と熱を与える。あまりの辛さに、アランは口を開いた。


「っく、辛ェっ…!!やっぱり慣れねぇなぁっ……」

「アランっ…我慢だよっ……。さて、溶岩洞の入り口を探そう。西側にあるって聞いたから、ここの辺りのはずだけど……」


 3人は辺りを見渡した。暗い雪雲に覆われた空が地平線まで続いている。すると、ネネカはあるものを見つけ、小さく口を開いた。


「……可愛い…」

「…どうしたの?ネネカ。」


 レオはネネカの視線を辿り、その先を見た。3匹の小さな白いイタチが戯れあっている。ユキイタチだ。


「……へぇ〜…あんな魔物もいるんだ……」

「おい…なんだありゃぁ………っ」


 アランは2人とは真逆の方向に指をさして口を開いた。レオとネネカは振り返ってそれを見ると、目を大きく開いた。舞い上がる雪が壁のように立ち上がり、多くの足音と共にこちらに向かって来る。


「っ!!アランっネネカっ!!構えてっ!!」

「はぁっ!?正気かよっ!!」


 レオの言葉に、アランは大声で返した。こちらに向かって来るのは、ツノが氷柱でできた白く大きな獣、アイシクルバッファローの群れだった。


「レオさんっ、あれ全部と戦うのですかっ!?」

「最悪の場合はね。でも今は、僕らに突進する敵だけを倒せばいいっ!!」


 レオはネネカにそう答えると、腰から折れた剣を抜き、構えた。


「“エクスカリバー”。」


 レオが口を開くと、彼の握る剣から、光の刃が伸びた。そして目を鋭くして光らせ、アイシクルバッファローの群れに勢いよく飛び込んだ。


『ボォォォォォッ!!!』

「“フレアホイール”っ!!」


 光の剣が炎を纏うと、レオは車輪のように回転して斬りかかった。


「っ!!また1人で飛び出しやがってっ!!“プロミネンスストレート”ぉっ!!」


 アランは右腕に炎の渦を纏わせ、こちらに向かって来るアイシクルバッファローに拳を突き出した。


『ボォォォォッ!!ボォォォォォ!!』


 身を焼かれる獣の鳴き声が白い息と共に広がり、アランの前に居た複数のアイシクルバッファローが飛ばされた。しかし、群れは次々とこちらに向かって来る。


「っ!!まずいっ!!」

「“ウォールファントム”っ!」


 アランの背後に居たネネカは、彼の前に透明な壁を出し、群れの突進を食い止めた。群れの突進は勢いが凄く、油断をすれば壁ごと押し潰されそうだ。ネネカは歯を食い縛り、アランに口を開いた。


「アランさんっ、もう一度今の技をっ!…今のうちにっ!」

「あぁっ、すまねぇっ!!…“プロミネンスっっストレート”ォッ!!」


 アランは再び右腕に炎の渦を纏わせ、ネネカが出した防御壁が消えた瞬間に、拳を前に突き出した。


『ボグォォォォゥッ!!』

『ボォォォォォッ!!』


「どぉりゃぁぁぁぁぁっ!!」


 アランの燃え盛る拳は、多くのアイシクルバッファローを火だるまにして飛ばしていく。そして、最後の1頭がアランに突進して来た。アランは右足を前に出して地面を踏み締め、体を低くして構える。


「“ライジングアッパー”ぁぁぁっ!!」


 アランは左の拳をアイシクルバッファローの顎に捻じ込み、高く真上に跳びながら突き上げた。しかし、獣は白い息を鼻から勢いよく吹き出した。


「ボォゥッ!!」


「っく!!」


 アイシクルバッファローは後ろ足でアランの腹を蹴り、氷柱のような角を彼に伸ばした。


「アランさんっ!!」

「しまっ——」


 その時、白い地面に赤い血が降り注ぎ、アランとアイシクルバッファローが地面に落ちた。


「アランさんっ!大丈夫ですかっ?」

「っ…何がっ……」


 アイシクルバッファローは倒れたまま動かない。その背には、光の剣が刺さっている。遠くを見ると、静かにアランとネネカの方を向いて立つレオの姿があった。


「っ……たく、急に飛び出すわ美味しいとこ持っていくわで……世話の焼けるリーダーになったなぁ。」


 アランはため息を吐き、立ち上がった。そしてアイシクルバッファローの背から剣を抜き、レオの方に歩いて、剣を彼に渡した。レオは剣を受け取ると、群れが現れた方向を向いた。


「予想通りだ。群れは、あるものから逃げていたんだよ。」

「…あるもの……?」


 アランは首を傾げた。しかしレオは振り向かない。そして彼はアランに口を開いた。


「熱だよ。この先に、溶岩洞の入り口がある。…ほら、あそこ。」


 レオは指をさした。後から歩いてきたネネカとアランがその先を見ると、そこには赤く大きな口を開けた洞窟があった。先ほどまでは感じなかった熱気が、レオ達を地下へと(いざな)う。

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