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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
136/206

激励

 レオ、アラン、コルト、シェウトの4人は、エレナスの後に続いた。脇腹を押さえるアランはシェウトの肩を借り、一歩一歩慎重に歩みを進める。病院を出ると、レオは自身の視界に広がる景色に息を止めた。


「………これは……っ、ここは本当に……パーニズなの………?」

「あぁ…急な襲撃にあってこのザマだ……。パーニズも安全じゃねぇってのがよく分かる。」


 シェウトは静かに口を開いた。商店街へと続く石畳も砕かれ、辺りに焦げた臭いが漂う。頭上に広がる曇り空は、絶望で心を侵食するような灰色をしていた。人通りも賑わいもないこの町は、どんなに瞬きをしてもパーニズには見えない。


「……町のみんなはどこへ……?」

「全員城の中だよ。とにかく死傷者が多くて、病院でも対応できないほどらしいんだ……」

「………そっか……」


 コルトの言葉を聞いたレオは、微かに血の匂いを感じた。自分が知らぬ間にこの町が悲鳴の焔に包まれたという想像が、彼の胸を締め付ける。しばらく沈黙が続く中歩き続けると、ギルド小屋が近づいてきた。5人は扉の前に立つと、ゆっくりと扉を開いた。


「おかえりなさいませ、マスター。」

「おかえりぃっ。」

「フッ……来たか。」


 そこには、いつもと変わらない空間があった。左のカウンターで静かに立つエルド、カウンター席に座るシルバとその膝の上で丸くなるココ、奥でギターのペグを回すクレアとその隣で大きな金属の塊と向き合うマリス、右の机で向き合って座り、カードゲームをするリュオンとライラ。レオは少し安心した。


「あぁ、連れてきたぞ。ココ、頼む。」

「おぅよぉっ。」


 エレナスが言うと、ココはシルバの膝から飛び降り、階段を駆け上がった。しばらく階段を見つめていると、ココとネネカがゆっくりと降りて来た。ネネカの顔は沈んでいる。


「………ネネ……カ……」


 レオの口から声が零れ落ちた。その声に顔を上げたネネカは、心の底から込み上げてきた感情に大粒の涙を流した。


「………レオ……さん…」


 ネネカは入り口に立つレオの方へ走り出し、勢いをぶつけるように抱きついた。


「っ!?…どうしたのネネカっ……急にっ……」


 優しい声、優しい温もり、優しい鼓動、彼の存在を抱きしめて感じるネネカは、声を出して泣いた。


「あらっ、ネネカちゃん大〜胆〜っ。」


 クレアは手で口を覆い、目を大きく開いて驚いた。しばらく小屋の中に、ネネカの泣く声が響いた。








「………ローアに……ですか?」

「あぁ、そうだ。」


 レオはカウンター席に腰をかけるエレナスに首を傾げた。


「見ての通り、パーニズはあの有り様だ。近いうちにまたダークネスが攻めて来たら、ライトニングは滅亡に真っ逆様だ。それに、今のダークネスにとっちゃぁ、デルガドを二度も倒した人間さんは、最優先のターゲットだろう。お前らを逃す、パーニズへの巻き添えを避ける…この2つを兼ねて、お前らはローアに飛んでもらう。」


 エレナスは顎のひげを指で撫でながら話すと、グラスを口に傾けた。飲み干したグラスを氷の音を立てて置くと、彼の口は再び開いた。


「まぁ、安心してくれ。ローアの町はパーニズの次にデカい。町自体が城だからか、警備は頑丈。身を隠すにはもってこいの場所ってワケだ。」

「町自体が城……そんな凄い所が……」

「ちょっと待って下さいっ。」


 エレナスの言葉にアランが感心していると、レオはエレナスの瞳を見つめた。


「それじゃあ、しばらくの間…僕達はこの戦いに協力できないのですか……?もしそうだとしたらっ……僕達が現実の世界に帰れる日が…いつになるのかっ……」

「おい、誰が仕事をサボれと言った?」

「っ?」


 エレナスから目を逸らして拳を握るレオに、ゾロマスクを付けたリュオンはタバコの煙を吐いて言った。


「ローアに行った後もお前らにはキッチリ動いてもらうさ。そうだな、1つ謝罪をしておこう。今のお前らにとって、そこら辺の小さい渦からダークネスに攻め入るのは無理だ。ヘタに期待しちまった俺が悪かった。」

「それ、遠回しにレオさん達の事悪く言ってないか…?」


 ライラはリュオンのニヤけた口を冷たい目で見た。リュオンの口は続けて開く。


「そこでだ、再び秘宝を集めてもらうわけだが、それとは別に、お前らには3つの王に会ってもらう。」

「3つの……王………ですか…?」


 ネネカはリュオンのゾロマスクを見つめて聞き返した。


「あぁ、世界の活力を掌る炎王竜。世界の鮮麗を掌る海帝鯨。世界の恵みを掌る森皇獣。この3つだ。詳しい情報はローアの女王様にでも聞くがいい。」

「……それで……会う目的ってのは…?」


 アランはリュオンに問いかけた。すると、リュオンは煙を吐き、アランの顔を見て口を開いた。


「この世界の理を掌る神を呼ぶのさ。3つの王は、その神を呼ぶための鍵ってワケだ。そして、その神は世界に導きの光を与えるという……」

「導きの…光………。なんとなくですが、了解しました。秘宝を集めつつ、その3人の王に会ってきます。」


 リュオンからやる事は聞いた。レオ達は互いに見つめ合って頷き、扉に体を向けようとした。すると、シルバがレオ達に口を開いた。


「おっと、タンマタンマ。行くにはまだ早いっての。俺達からの激励ってのを受け取ってくれ。じっちゃん、あれを。」

「承知しました。」


 するとエルドは、カウンターの上に防具を次々と置き始めた。頑丈そうな金属や色とりどりの布が使われたそれらを見たレオ達は、目を大きく開いて息を呑んだ。


「まさか……これ全部……」

「はい。一人一人の職業や立ち回りを分析したうえで作りました。どうぞお受け取り下さい。」

「ありがとうございますっ。」


 レオ達はエルド達に頭を下げ、防具を受け取った。すると、マリスは立ち上がり、アランへ歩み寄った。


「実はアラン君、まだ途中だけど、君のために武器も作ってるんだ。」

「…えっ………俺に…っすか?」

「うんっ。気まぐれに作ってるんだけど、出来上がったらプレゼントするねっ。」

「…ぁ…あぁ……そうっすか……あざっす。」


 アランは戸惑いながらも、首の後ろに手をやり、頭を軽く頭を下げた。そして、レオ達はギルドの一人一人と目を合わせて微笑んだ。


「それじゃあ、行ってきますっ。」

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