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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
133/206

終焉を迎える者

 アランは鬼の形相をデルガドに向けていた。怒りに呑まれた彼の視界は歪みかけており、デルガドの足元に散りばめられた肉片や内臓、スフィルの残した火薬のにおいが彼の鼻を刺す。デルガドは両手の剣についた血を振り払って口を開いた。


「おぅおぅ……俺を殺そうってか。殺せるものなら殺して欲しいくらいだなぁっ!!ようやく貴様らと戦える……フッ、嬉しいねぇ〜。」

「…黙れぇ……っ!!その喉握り潰して……二度と喋れねぇようにしてやるっ!!」


 アランがそう言った後に、デルガドはアランとネネカを囲むペストマスクに剣を振り、それらに膝をつかせて2人を自由にした。その途端にアランは強く地面を蹴って飛び出し、右の拳を引いた。


「“銀の拳”ぃっ!!」

「そうだその意気だぁっ!!“ヘルフレアスラスト”ぉ!!」


 アランの右腕は銀に染まり、それをデルガドに伸ばすと、デルガドは禍々しい炎を纏った右の剣をアランに突き出した。すると、アランはその剣を右手で掴み、デルガドの右の横腹に踵を叩きつけた。


「っ!!」


 デルガドは怯みながらアランを振り払うと、アランは地面に手をつけて着地し、上目遣いでデルガドを睨みつけた。


「テメェが殺した人数分っ、テメェをブッ殺してやるっ!!!」

「掛かってこいよ゛ぉ゛ぉ゛っ!!」


 アランは再び飛び出すと、デルガドはアランの方を向いたまま浮遊しているかのように後ろへ下がり、両手の剣を振り回した。


「“コンティディードテンペスト”!!」


 デルガドの剣から鋭く厚く速い軌跡が放たれた。アランは腕を交差しながらデルガドへ走る。


「“銀の拳”っ!!」


 彼は両腕を銀に染め、次々と襲い掛かる斬撃を火花を散らして弾いた。その軌跡は重く、受け止め方に油断をすれば肩が外れるくらいだ。銀の腕が欠けていく事を気にせずにアランは走り続ける。


「っ!!っ!!っ…!!……ぉぉぉぉおおおらあぁぁぁぁぁぁっっ!!」


 アランは地面を強く蹴って高く飛び、デルガドに右足を伸ばした。


「“ギガ・クラッシャー”ぁぁっ!!」

「あ゛ぁ゛うるせぇうるせぇっ!!鼓膜が震えてたまらねぇよぉ!!」


 アランが物凄い速さで地面に落ちると、デルガドはそれをひらりと避け、地面の石を砕きながら地震を起こして着地するアランを迎えた。デルガドは笑い、アランに左の剣先を向けて飛び出す。


「弾けろぉ!!“ボム・プラント”ぉ!!」

「っ!!」

「“ガードファントム”っ!!」


 その時、ネネカの言葉でアランとデルガドの間に光の壁が現れ、熱を帯びて赤く染まったデルガドの剣を弾いた。


「…ハァッ!?」

「だぁぁぁっ!!」


 壁が消えると、アランは右足を振り上げ、デルガドの左手を蹴って剣を空高く飛ばした。


「“ギガ・クラッシャー”ぁぁっ!!」

「っ!!」


 アランは体を捻り、振り上げた足をデルガドに突き出すと、デルガドはそれを右の剣で受け止め、地面を両足で滑るように後ろに遠ざけられた。デルガドは歯軋りをし、アランとネネカを睨んだ。左手に持っていた剣がネネカの背後に刺さる。するとデルガドはニヤけた。


「…フッヒッヒッヒッヒ………2人を自由にした後だけどよぉ…俺気付いたわぁ……。やっぱりよぉ……自分が圧倒的有利なシチュエーションが1番楽しいってなぁ!!下を見ろぉぉ!!!」

「なっ!?」


 アランとネネカは足元に目をやると、そこには禍々しい色をした影のような根が地面に広がっていた。根を辿って見ると、根元はネネカの背後に刺さった剣だという事が分かった。


「“スキル・アブシューション”ッッ!!」


 デルガドのその声の後に、根は光を放った。アランとネネカは足に根が絡まったのか、動く事ができない。そして、体内の何かを吸い取られていく感覚がする。


「ぅぐっ!!一体っ…何をっ!!」

「アランさんっ!!MPとSPがっ!!」

「何だとっ!?」


 そんな2人の姿を見て、デルガドは腹を抱えて笑った。そして、デルガドの口から放たれた言葉に、2人は固唾を呑み絶望を味わう事になる。


「まずは貴様だガルア・ラウン、貴様のMPとSPは全て俺のモノにしたぁ。そしてクナシア・ネネカぁ、貴様もSPは全て吸い取ったが、特別にMPは下級魔法1回分だけ残しておいたぜぇ……あ゛〜ぁ゛っ!!いい気味だぁっ!!」

「嘘……そんなっ……」


 ネネカは膝から崩れ落ち、デルガドの笑う姿に絶大な恐怖心を覚えた。地面の根が消えると、アランはネネカのもとへ走り、膝をついてネネカに囁いた。


「ネネカ、俺が合図を出すまで魔法は使うな。あと、お前自身が危ない時は、遠慮なく使え。いざとなったら逃げろ。」

「でも……それではアランさんが——」

「ネネカ、お前だけは必ず生きて帰れ。じゃねぇと………レオとドーマに怒られちまう。」


 先ほどまで眉間のしわが戻らなかったアランが微笑んだ。ネネカは彼の腕を見ると、恐怖心のせいか微かに震えており、無数の浅い斬り傷から赤い血が流れていた。ネネカは喉を震わせ、涙を流した。


「アラン……さん………」

「フッ、何回泣くんだよお前。」


 その時、2人の前にデルガドの放った雷の矢が刺さった。彼の顔を見ると、先程まで笑っていたとは思えないほど静かで冷たい表情だった。


「さっきからコソコソコソコソとぉ……お喋りはもういいよなぁ?」


 するとアランはゆっくりと立ち上がり、デルガドを睨み付けた。


「あぁ。待たせたな、クソ野郎。」

「ヘッ……よぉし、しっかり俺のために死んでくれよぉ?人間っ!!」


 アランとデルガドは向かい合って飛び出した。デルガドが横に剣を振ると、アランは頭を下げて避け、右の拳を突き上げた。しかしデルガドはそれを左に転がって避け、開いた左手をアランに向けた。


「“シャドーグレネード”ぉ!!」

「チィッ!!」


 アランは足元目掛けて放たれた影の球をバク転で回避し、デルガドを中心に円を描くように走り出した。デルガドは手の平から影の球を放ち続ける。影の球は次々と大きな音とともに爆発した。


「オラオラオラオラぁ!!そんなに走り回られたら眼球ひっくり返りそうだぜぇ!!」


 デルガドは唾を飛ばして笑った。彼の顔は戦いを心の底から楽しむ顔だ。するとアランは足元に散らばる石を拾い、デルガドに投げた。


「そらぁっ!!」

「っ、何のマネだぁ!!」


 デルガドは飛んできた石に剣を振ると、左からアランが急接近し、拳を突き出した。


「オラァァァァッ!!」

「生意気ィ!!」


 デルガドが剣を横に振ると、アランは拳を地面に落として避け、拳を軸に足を回してデルガドの腹部を蹴った。


「ぅがぁっ!!」


 デルガドは飛ばされ、ネネカの近くに着地した。ネネカはデルガドから逃げるように離れると、デルガドは背後に伸ばした左手で何かを掴み、ニヤけた。2人は彼のその不気味な笑みに背筋を凍らせた。


「っ!!マズいっ!!」

「アランさんっ!!気をつけて下さいっ!!」

「ありがとよぉ!!最高の気分だぜぇ!!ハッハァッ!!」


 デルガドはアラン目掛けて飛び出した。彼の両手には2本の剣が握られていた。


「死ねぇ!!」

「ぅぐっ!!」


 デルガドは右の剣を縦に振ると、アランはその腕を両手で掴んで止めた。


「もうイッチョォッ!!」

「っ!!」


 その時、アランの右の横腹をデルガドの左の剣が貫いた。


「がア゛ア゛あァ゛ぁぁ゛ぁ゛ァっ!!!」

「アランさぁんっ!!」

「あっらぁぁっ!?肝臓に穴開けちまったよぉ!!気分はどうだぁ!?そぉらブッ飛べぇ!!」


 デルガドはアランの胸部に足を突き出して蹴り飛ばした。地面に叩きつけられたアランは、血が溢れ出す横腹を押さえて激痛を叫んだ。


「あ゛ぁぁあ゛あ゛ああ゛ぁぁあぁあ゛あ゛ぁぁっっ!!!」

「アランさんっ!!今行きますっ!!」

「だっ…ダメだぁっ!!ぅっ…!!まだっ…魔法は使うなァッ!!」

「でもっ!!」


 そんな2人の会話に耳をやるデルガドは、赤く染まる剣を何度も地面に叩き付けて笑った。


「ハァッハァッハァァ!!そうだぁ!!コレが見たかったのさァ!!さぁ!!さァ!!サァッ!!見せてくれぇ!!貴様らの足掻きとやらをよぉ!!」

「ネネカぁっ……!!…にっ……逃げろぉっ……ッッ!!早くッ……兵長のっ……所にィッ…!!」


 アランは歯を食いしばり、断末魔を噛み殺した。デルガドは倒れるアランに歩み寄り、アランの鼓動を走らせる。


「おぅおぅ……自分を犠牲にして女を逃すとはぁ…シビれるねぇ。ならぁ要望通り殺してやっからぁ大人しくしてろよぉ!!!」

「アランさぁぁんっ!!!」

「っ!!」


 デルガドが剣を振り上げると、アランは力を振り絞り、強く目を閉じた。









「……………ぉぅ……ぉぅぉぅ……」


 デルガドの目は冷たくなっていた。アランは目をゆっくり開くと、目の前には刃を受け止める光の壁があった。そしてネネカの方に目をやると、頬を濡らしてこちらに手を広げる彼女の姿があった。


「ッ!!何゛やってんだよネネカァァぁぁっ!!!」

「貴様から先に殺してやろうかァ゛ァ゛ァっ!!!」


 デルガドはネネカに飛び出し、剣を振り下ろした。

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