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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
113/206

vsキドゥー

『皆様っ、お待たせ致しましたっ!!これより、決勝戦を行いますっ!!』


「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」


 マイクを握るケリィの声で、リング周辺の人々が歓声を上げた。巨大な木々で塞がる空の下は、数時間前とは比べものにならないほどの賑わいを見せていた。


「いよいよか……緊張してきた……」

「……アラン……」


 ゴンドラの上のコルトは深い溜め息を吐き、モルカは両手を握り、祈るように下のリングを見ていた。


『それでは、見事ここまで勝ち残った選手2人に登場してもらいましょうっ!!まずはコイツだぁっ!!』


 ケリィが左腕を向けた先で、男がロープを(くぐ)り、リングに立った。


『情熱の拳を持つ異世界からのファイター…アぁぁぁラぁぁぁぁぁンっ!!!』


「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」


「頑張れぇぇぇっ!!」

「アラぁぁぁンっ!!」


 ゴンドラの上からレオとカルマが叫んだ。しかしアランは他に目を向けず、まっすぐ前を見ていた。


『続いてはコイツだぁっ!!』


 ケリィがアランの視線の先に左腕を向けた。すると、リングの外から男が高く飛んで回転し、リングに着地した。


『多様な脚技を操る誇り高き獣人…キドゥーーーーーーッ!!!』


「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」


 アランは両腕の拳を握り締め、キドゥーの冷たい表情を見つめた。足元から這い上がる緊張を噛み殺す。


『準備はよろしいですね?………それでは、決勝戦………』


 するとその場の空気は静まり、人々の多くが一斉に息を呑んだ。


『始めっ!!!』


 アランとキドゥーは同時に床を強く蹴り、互いに向き合って飛び出した。


「「うおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」」


「はぁっ!!」

「……」


 アランは右の拳を伸ばし、キドゥーは左足を突き出した。2人の攻撃は周囲に打撃音を響かせ、観客の心を震わせた。


『早速両選手の攻撃がぶつかったぁっ!!』

「「おおおおおおおっ!!」」


 するとキドゥーは右足で跳ぶと同時に、その足をアランの頭の横に運ぶと、アランは左腕でそれを防ごうとした。


「“竜尾蹴り”。」

「っ…“銀の拳”!!」


 アランは鞭のような蹴りを銀色の左腕で受けた。しかし勢いに耐えられず、床に右手をついて滑った。着地したキドゥーはすぐにアランに飛び込む。


「“槍脚連撃”。」

「チィッ!!」


 キドゥーは右足を複数回素早く突き出し、アランは銀色の両腕を交差してそれを受け止めた。硬く重い足が腕に当たるたび、小さな火花が散る。


『ここでキドゥー選手の連続攻撃っ!!さぁアラン選手、どう抜け出すかっ!!』


「っ、押されてるな。」


 ゴンドラの上のスフィルが腕を組んで苦い顔をしていた。


「っ…っ…っ……チィッ、“ギガ・クラッシャー”っ!!」


 アランは床を強く蹴り、腕を交差させたままキドゥーをロープの方へ押し出した。


「「おおぉ〜〜〜っ」」


「“ムーン・サルト”。」


 キドゥーは左足で床を蹴ると同時に、宙返りをしてその足でアランの胸部を蹴り上げた。


「っぐぁっ!!」


『アラン選手っ、高く打ち上げられたぁっ!!ここからキドゥー選手のコンボが期待できますっ!!』


 高く打ち上げられたアランをキドゥーは下から見つめ、床を蹴ってアランの方へ飛んだ。


「“ファルコンスラスト”。」


 キドゥーがアランに右足を伸ばし、素早く接近すると、アランは体勢を立て直した。しかし、キドゥーの姿が目に入った時には、腹部にキドゥーの足が捻じ込まれていた。


「うっ…ぐふぅっ!!」


「アランさんっ!!」


 ネネカがゴンドラに手を掛けて叫ぶと、アランはキドゥーの足を掴み、真下へ振り下ろした。


「ぅおぉぉらぁぁぁっ!!」

「っ。」


『おぉっとアラン選手っ!!キドゥー選手の蹴りに耐え、真下に投げましたっ!!』


 キドゥーは床に手をついて着地すると、すぐに上を向いた。そこにはこちらを睨み付けて落ちて来るアランがいた。キドゥーはそれに睨み返して後ろへ下がり、左脚で床を踏み締めて力を込めた。


「“疾風蹴り”。」


 キドゥーは竜巻を纏わせた左脚を空中のアランに突き出した。


「まずいっ!!あれを喰らったら場外だっ!!」


「来ると思ったぞっ!!“メガ・クラッシャー”っ!!」


 オーグルが声を放つと同時にアランは右足を伸ばして急降下し、竜巻を避けて着地したすぐに低い姿勢でキドゥーの少し横に飛び込んだ。


「“銀の拳”っ!!」

「っ!!」


 アランは床を蹴り、キドゥーに接近したところで、重い拳をキドゥーの腹部に捻じ込んだ。


「“ライジングアッパー”ぁっ!!」

「ぅっ!!」


 アランはまた床を強く蹴り、キドゥーを真上へ打ち上げた。


『アラン選手が回避に続いて素早い動きで攻撃っ!!キドゥー選手に初めてダメージが入りましたっ!!』


「「おおおおおおおおおおっ!!!」」


 するとキドゥーは右足を鞭のようにして、アランの横腹に振った。


「“竜尾蹴り”。」

「ぁぐぅっ!!」

「“テラ・クラッシャー”。」


 キドゥーは体勢を崩したアランの腹に左足を突き出し、共に床に落ちた。


「がぁぁぁっ!!」


「アラぁぁンっ!!」


 レオは、床に背中を叩き付けられ腹に足が食い込んだアランに叫んだ。アランは痛みを噛み殺そうと苦しい顔をしている。


『ここまで余裕の顔で勝ち残ったキドゥー選手っ、やはり1発2発では終わりませんっ!!』


「…っっのっやろぉぉぉっ!!」

「“ライドフリクション”。」

「ああぁぁぁぁぁっ!!」


 キドゥーはアランを踏み付けたまま、リング内を滑り始めた。流れ来る摩擦熱がアランの背中を襲う。


「「おおおおおおおおおおおっ!!」」


『出ましたっ、ライドフリクションっ!!キドゥー選手が歓声の波に乗っていますっ!!』


「くっ、早く抜け出さないと蓄積ダメージが大きくなるっ!!」


 コルトが言ったその時、床に血の線を残して仰向けに滑るアランの口角が、ゆっくり上がった。


「ありがとよ………アンタから来てくれて嬉しいぜ……」

「……っ?」


 するとアランは右腕の拳を強く握り、歯を食いしばった。


「そのまま乗ってろよぉっ!!“プロミネンスストレート”ぉぉっ!!」

「ぅおっ!!」


 アランは炎の竜巻を纏った右腕を、上に乗るキドゥーに突き出し、真上へ打ち上げた。キドゥーは炎に包まれたまま床に体を叩き付けて倒れ、アランは余った勢いでロープを(くぐ)り、リングの外に体を投げ出された。


「アランっ!!ダメっ!!」


「危ねっ!!」


 モルカの声と同時にアランは左手でロープを掴み、場外判定を避けた。ロープにぶら下がる彼の背は赤く染まっていた。


「ふぅ……いってぇ……」


『アラン選手っ!!キドゥー選手に大打撃を与えましたっ!!現在アラン選手はリングの外に出ていますが、地面に足が付いていないので、場外ではありませんっ!!セーフですっ!!』


「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」


 アランはロープを(くぐ)り、リングに立った。視線の先には、体に纏った炎に耐えながらゆっくり立ち上がるキドゥーが居た。


「……大したものだな…正直、この大会で筋のある者と戦うことになるとは思わなかったよ……」

「…ふっ、俺もだ……おかげで特訓の成果が楽しめる……」


 そう言ったアランはほろ苦い笑みを浮かべた。レオはそれを見て何かを感じ取った。


「………まずいな……」

「…まずい…って……何がだよ……レオ。」


 カルマはレオに首を傾げた。レオの表情も苦くなっている。


「今使ったプロミネンスストレートは、攻撃力の高さと引き換えに体への負担が大きい。もしこのまま戦うとしたら………ぁぁ…まずいな……」

「だから何がまずいんだっ!?」

「カルマ………今のアランのSPは………0に近い…」

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