vsキドゥー
『皆様っ、お待たせ致しましたっ!!これより、決勝戦を行いますっ!!』
「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」
マイクを握るケリィの声で、リング周辺の人々が歓声を上げた。巨大な木々で塞がる空の下は、数時間前とは比べものにならないほどの賑わいを見せていた。
「いよいよか……緊張してきた……」
「……アラン……」
ゴンドラの上のコルトは深い溜め息を吐き、モルカは両手を握り、祈るように下のリングを見ていた。
『それでは、見事ここまで勝ち残った選手2人に登場してもらいましょうっ!!まずはコイツだぁっ!!』
ケリィが左腕を向けた先で、男がロープを潜り、リングに立った。
『情熱の拳を持つ異世界からのファイター…アぁぁぁラぁぁぁぁぁンっ!!!』
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」
「頑張れぇぇぇっ!!」
「アラぁぁぁンっ!!」
ゴンドラの上からレオとカルマが叫んだ。しかしアランは他に目を向けず、まっすぐ前を見ていた。
『続いてはコイツだぁっ!!』
ケリィがアランの視線の先に左腕を向けた。すると、リングの外から男が高く飛んで回転し、リングに着地した。
『多様な脚技を操る誇り高き獣人…キドゥーーーーーーッ!!!』
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」
アランは両腕の拳を握り締め、キドゥーの冷たい表情を見つめた。足元から這い上がる緊張を噛み殺す。
『準備はよろしいですね?………それでは、決勝戦………』
するとその場の空気は静まり、人々の多くが一斉に息を呑んだ。
『始めっ!!!』
アランとキドゥーは同時に床を強く蹴り、互いに向き合って飛び出した。
「「うおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」」
「はぁっ!!」
「……」
アランは右の拳を伸ばし、キドゥーは左足を突き出した。2人の攻撃は周囲に打撃音を響かせ、観客の心を震わせた。
『早速両選手の攻撃がぶつかったぁっ!!』
「「おおおおおおおっ!!」」
するとキドゥーは右足で跳ぶと同時に、その足をアランの頭の横に運ぶと、アランは左腕でそれを防ごうとした。
「“竜尾蹴り”。」
「っ…“銀の拳”!!」
アランは鞭のような蹴りを銀色の左腕で受けた。しかし勢いに耐えられず、床に右手をついて滑った。着地したキドゥーはすぐにアランに飛び込む。
「“槍脚連撃”。」
「チィッ!!」
キドゥーは右足を複数回素早く突き出し、アランは銀色の両腕を交差してそれを受け止めた。硬く重い足が腕に当たるたび、小さな火花が散る。
『ここでキドゥー選手の連続攻撃っ!!さぁアラン選手、どう抜け出すかっ!!』
「っ、押されてるな。」
ゴンドラの上のスフィルが腕を組んで苦い顔をしていた。
「っ…っ…っ……チィッ、“ギガ・クラッシャー”っ!!」
アランは床を強く蹴り、腕を交差させたままキドゥーをロープの方へ押し出した。
「「おおぉ〜〜〜っ」」
「“ムーン・サルト”。」
キドゥーは左足で床を蹴ると同時に、宙返りをしてその足でアランの胸部を蹴り上げた。
「っぐぁっ!!」
『アラン選手っ、高く打ち上げられたぁっ!!ここからキドゥー選手のコンボが期待できますっ!!』
高く打ち上げられたアランをキドゥーは下から見つめ、床を蹴ってアランの方へ飛んだ。
「“ファルコンスラスト”。」
キドゥーがアランに右足を伸ばし、素早く接近すると、アランは体勢を立て直した。しかし、キドゥーの姿が目に入った時には、腹部にキドゥーの足が捻じ込まれていた。
「うっ…ぐふぅっ!!」
「アランさんっ!!」
ネネカがゴンドラに手を掛けて叫ぶと、アランはキドゥーの足を掴み、真下へ振り下ろした。
「ぅおぉぉらぁぁぁっ!!」
「っ。」
『おぉっとアラン選手っ!!キドゥー選手の蹴りに耐え、真下に投げましたっ!!』
キドゥーは床に手をついて着地すると、すぐに上を向いた。そこにはこちらを睨み付けて落ちて来るアランがいた。キドゥーはそれに睨み返して後ろへ下がり、左脚で床を踏み締めて力を込めた。
「“疾風蹴り”。」
キドゥーは竜巻を纏わせた左脚を空中のアランに突き出した。
「まずいっ!!あれを喰らったら場外だっ!!」
「来ると思ったぞっ!!“メガ・クラッシャー”っ!!」
オーグルが声を放つと同時にアランは右足を伸ばして急降下し、竜巻を避けて着地したすぐに低い姿勢でキドゥーの少し横に飛び込んだ。
「“銀の拳”っ!!」
「っ!!」
アランは床を蹴り、キドゥーに接近したところで、重い拳をキドゥーの腹部に捻じ込んだ。
「“ライジングアッパー”ぁっ!!」
「ぅっ!!」
アランはまた床を強く蹴り、キドゥーを真上へ打ち上げた。
『アラン選手が回避に続いて素早い動きで攻撃っ!!キドゥー選手に初めてダメージが入りましたっ!!』
「「おおおおおおおおおおっ!!!」」
するとキドゥーは右足を鞭のようにして、アランの横腹に振った。
「“竜尾蹴り”。」
「ぁぐぅっ!!」
「“テラ・クラッシャー”。」
キドゥーは体勢を崩したアランの腹に左足を突き出し、共に床に落ちた。
「がぁぁぁっ!!」
「アラぁぁンっ!!」
レオは、床に背中を叩き付けられ腹に足が食い込んだアランに叫んだ。アランは痛みを噛み殺そうと苦しい顔をしている。
『ここまで余裕の顔で勝ち残ったキドゥー選手っ、やはり1発2発では終わりませんっ!!』
「…っっのっやろぉぉぉっ!!」
「“ライドフリクション”。」
「ああぁぁぁぁぁっ!!」
キドゥーはアランを踏み付けたまま、リング内を滑り始めた。流れ来る摩擦熱がアランの背中を襲う。
「「おおおおおおおおおおおっ!!」」
『出ましたっ、ライドフリクションっ!!キドゥー選手が歓声の波に乗っていますっ!!』
「くっ、早く抜け出さないと蓄積ダメージが大きくなるっ!!」
コルトが言ったその時、床に血の線を残して仰向けに滑るアランの口角が、ゆっくり上がった。
「ありがとよ………アンタから来てくれて嬉しいぜ……」
「……っ?」
するとアランは右腕の拳を強く握り、歯を食いしばった。
「そのまま乗ってろよぉっ!!“プロミネンスストレート”ぉぉっ!!」
「ぅおっ!!」
アランは炎の竜巻を纏った右腕を、上に乗るキドゥーに突き出し、真上へ打ち上げた。キドゥーは炎に包まれたまま床に体を叩き付けて倒れ、アランは余った勢いでロープを潜り、リングの外に体を投げ出された。
「アランっ!!ダメっ!!」
「危ねっ!!」
モルカの声と同時にアランは左手でロープを掴み、場外判定を避けた。ロープにぶら下がる彼の背は赤く染まっていた。
「ふぅ……いってぇ……」
『アラン選手っ!!キドゥー選手に大打撃を与えましたっ!!現在アラン選手はリングの外に出ていますが、地面に足が付いていないので、場外ではありませんっ!!セーフですっ!!』
「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」
アランはロープを潜り、リングに立った。視線の先には、体に纏った炎に耐えながらゆっくり立ち上がるキドゥーが居た。
「……大したものだな…正直、この大会で筋のある者と戦うことになるとは思わなかったよ……」
「…ふっ、俺もだ……おかげで特訓の成果が楽しめる……」
そう言ったアランはほろ苦い笑みを浮かべた。レオはそれを見て何かを感じ取った。
「………まずいな……」
「…まずい…って……何がだよ……レオ。」
カルマはレオに首を傾げた。レオの表情も苦くなっている。
「今使ったプロミネンスストレートは、攻撃力の高さと引き換えに体への負担が大きい。もしこのまま戦うとしたら………ぁぁ…まずいな……」
「だから何がまずいんだっ!?」
「カルマ………今のアランのSPは………0に近い…」




