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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
111/206

vsマロア

『選手の皆さん、予選お疲れ様でした!!準決勝に入る前に休憩時間を挟みたいと思います。休憩時間終了後、予選を突破した4人の選手はリング前の私の所にお集まり下さい!!それではごゆっくり!!』


 レオ達はゴンドラから降り、森の中へ走り出した。辺りに目を向けると、体中に傷を負った男達が係員に担架で運ばれているのが見える。夢中で走り、立ち止まった先には、下を向いてぬいぐるみのように座り込むアランが居た。


「アランっ!!大丈夫!?」

「おいアランっ!!」


 するとアランはレオ達の顔をゆっくり見上げた。彼の顔は魂が抜かれたようにキョトンとしている。そして小さく開いた口から声を溢した。


「…………おぉ……」


 モルカは袋を手に取ってアランの前に立ち、袋の中に手を入れ、取り出した物をアランの開いた口に捻じ込んだ。


「予選突破だよっ!!何座ってんのっ!!喜びなさいよっ!!」


 アランの口には、トロンコッカーの骨つき肉が刺さっていた。彼のその顔を見て、息を切らしていたレオ達は笑った。アランは肉の骨の部分を持ってしばらく咀嚼すると、少しずつ笑みを浮かべた。


「……そっか………俺……残ったんだ…」

「おめでとうございます、アランさん。」

「やったなぁっ!!」


 レオ達はアランを囲んで笑った。その声は高く伸びる木の先まで届いていたと思う。喜びと同時に、彼らは同じ事を感じた。久々にみんなと笑い合えた、と。




 それからしばらくして、彼らは草の上に腰を下ろし、円になって肉に齧り付いた。


「なんかこうして大会観戦してると、部活を思い出すなぁ……」

「…だな。」


 一筋の木漏れ日を見つめて口を開くコルトに、オーグルは右腕の義手を撫でて微笑んだ。


「デンテも来れば良かったのにね。」

「まぁな。でも、アイツには料理人としての仕事がある。しょうがねぇよ。」


 そう話すレオとアランに、モルカはニヤけて、肉の入った袋に指をさした。


「実はこの骨つき肉、全部デンテが作ったの。ちゃんと応援してるんだから安心しなさい。」

「「へぇ〜。」」


 レオとアランは口を揃えて声を漏らした。彼女の声を聞いてからその肉を口に入れると、微かに感じる辛さが心を燃やしてくれるように思える。アランは特にその味を噛み締めた。


『間もなく休憩時間終了となります!!ドレンタ選手、アラン選手、マロア選手、キドゥー選手、リング前にお集まり下さい!!』


「んじゃ、俺行ってくる。」


 アランはゆっくりと立ち上がり、リングを真っ直ぐ見た。


「頑張ってね。」

「頑張ってくださいっ。」


 レオとネネカも立ち上がると、アランは2人の方を振り向き、肩に手を置いた。


「あぁ。」


 アランは再びリングの方を向き、堂々とした足取りで歩き始めた。彼の背中が一段と大きく見える。


「……よし、僕達も移動しよう。」

「だな。」


 カルマが頷き立ち上がると、それに続いて4人も立ち上がり、ゴンドラの方へ歩き始めた。


 ゴンドラに乗ると、レオは上のハンドルを回し、リング全体が見える場所に止めた。ゴンドラの僅かな揺れが、足の先から緊張感を伝える。レオ達は息を呑んだ。


『さぁ皆さんっ、これより、準決勝を行います!!』


「「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」」


 吊るされた複数のゴンドラから、大きな歓声が沸いた。ゴンドラの数は予選の時よりも倍近く多い。


『では早速、準決勝からの対戦形式について説明します!!準決勝からはトーナメント戦、これから行う準決勝は第1回戦と第2回戦に分け、リングの中で1対1で戦ってもらいます!!ルールは簡単。倒れてから10秒動けない状態にさせたら勝ち!!相手を場外に出しても勝ちとなります!!』


 すると、周囲の人達は静まり、屋根となっている木々の緑がざわめき始めた。


『それでは第1回戦っ!!アランvs(バーサス)マロア!!』


「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」」

「やっちまえ!!マロアぁ!!」

「負けんじゃねぇぞぉ!!」


「いきなりアランか…」


 沸き上がる歓声の中、コルトは少し苦い顔をした。アランとマロアがロープを(くぐ)り、リングに上がった。マロアの姿はがっしりとした体つきで、体中が茶色の毛で覆われている。獣人族だ。


「しかも相手は獣人族…」

「そんなの関係ないよっ!アラぁぁンっ!!頑張ってぇっ!!」


 モルカはスフィルに口を開いた後、下に見えるアランに叫んだ。


「……ふぅ…獣人族か……そしてあの肉体……相手として不足はねぇな。」


『第1回戦………始めっ!!』


「“タイフーン・ストレート”っ!!」

「“銀の拳”っ。」


 マロアが大きな腕を突き出し、アランに暴風を放つと、アランは右腕を銀色に染め、暴風の渦に拳を突き出して弾いた。


『なんとっ!!いきなり放たれた大技を銀の拳で掻き消しましたっ!!』

「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」


「ふっ!!」

「…っ!!」


 2人は一定の間合いを保ったままリングを走って回り、一斉に床を強く蹴って飛び出した。


「“ボーンブレイク”っ!!」


 マロアがアランの顔面に肘を向けると、アランはそれを睨みつけ、真下に足を伸ばした。


「“メガ・クラッシャー”っ。」

「なっ…」

「“ライジングアッパー”ぁっ!!」


 アランはマロアの肘を下に避けて着地したすぐに、床を強く蹴って、硬い拳を真上のマロアの胸部に捻じ込んだ。


「ぅぶっ!!がはぁっ!!」

「はぁぁっ!!」


 アランは空中で体勢を横に変え、脚をマロアの背に振り下ろし、床に叩き付けた。


『アラン選手っ、カウンターと同時にコンボが炸裂っ!!』


「何だあの動きはっ!!」


「いいぞアランっ!!」


 レオ達の乗るゴンドラが歓声で揺れた。


「チィッ!!」


 マロアは腕の力で、うつ伏せの状態から上に飛び、真上からアランに足を突き出した。


「はぁぁっ!!」

「“銀の拳”っ!!」


 アランは右腕を銀色に染め、マロアの足に力強く突き出した。しかし、手応えがない。


「っ……?」

「“シャドーフェイント”っ!!」


 アランの背後から足を突き出したマロアが現れ、アランをロープまで飛ばした。


「ぅおぁっ!!」


『ここでマロア選手っ!!奇妙な動きで背後からの攻撃っ!!これは痛いぞっ!!』


「何だあの技っ!!」

「やはり、予選を突破した選手は手強いですね…」


 カルマが口を開けて固まり、ネネカは両手を重ねて握るようにして、ゆっくり立ち上がるアランを見つめた。


「「マ!ロ!アっ!!マ!ロ!アっ!!」」


「……くっそ…今の技を使い回されたらマズい……何か弱点を見つけねぇと……」

「“タイフーン・ストレート”ぉっ!!」


 マロアは床を踏み締め、突き出した拳から暴風を放った。


「チッ…“ライジングアッパー”っ!!」


 アランは拳を上に突き出して飛び、暴風を回避した。すると、マロアも下からアランを見つめて飛び、拳を構えた。それを見たアランは、腕を交差して攻撃を受け止めようとした。


『“シャドーフェイント”っ!!』

「なっ…ぅがぁっ!!」


 アランは背中に拳を喰らい、床に叩き付けられた。


「うっ!!……っっ……ぅ……」


『マロア選手っ!!またしてもシャドーフェイントの騙し技っ!!』


「“ボーンブレイク”っ!!」


 マロアは真下でうつ伏せに倒れるアランに、肘を向けて落ちた。アランは気配に気付き、転がるように攻撃を避けた。


「……ぁっぶねぇ…」

「…チッ……」

「はぁぁっ!!」


 2人はお互い向かい合って飛び出し、拳を交互に突き出し始めた。拳と拳が合うたびに、激しい打撃音が森中に響き渡る。


『ここで接近戦に入りました!!両者共に勝利を譲りませんっ!!』


「ふっ!!ふんっ!!ふんっ!!」

「くっ!!っ!!っ!!」(何とか状況を固めた……さぁ…どうする…!!)


「“タイフーン・ストレート”っ!!」

「“銀の拳”っ!!」


 マロアが放った暴風をアランは重い拳で掻き消した。マロアは自らが放った暴風の反動で後ろに下がり、ロープに弾かれると同時にアランに飛び出した。


「これで終わらせるっ!!」

「っ…!!」


「アラぁぁぁぁンっ!!」


 アランはマロアを睨み付けたまま、構えて止まっていた。そして、


「“シャドーフェイント”っ!!」

「“銀の拳”ぃっ!!」


 アランは振り返り、目の前に現れたマロアの腹部に銀色の拳を捻じ込んだ。


「ぅぐぅっ!!ゔぉあぁっ!!」

「もうその技は見飽きたんだよぉっ!!ぶっ飛べぇっ!!“プロミネンスストレート”ぉっ!!」


 アランはマロアの腹に食い込んだ拳に炎の渦を纏わせ、歯を食い縛って床を踏み締め、力強く拳を突き出した。マロアは白目を見せ、場外へと飛び、地面に体を叩き付けた。


『試合終了っ!!勝者っ!!アラぁぁぁンっ!!』


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」」

「やったぁぁぁっ!!」

「勝ったっ!!アランが勝ったよっ!!」


「……よっしゃぁ……っ!!よっしゃぁぁぁぁっ!!」


 アランは歓声を浴びながら両腕を上げ、勝利の喜びを叫んだ。リングの外では、仰向けで倒れたマロアの腹から一筋の煙が上がっていた。

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