ここちゃん、グリーンライスボール!?
2月もそろそろ終わろうとしていたある日のこと。
「あぁぁぁぁぁ!」
ここちゃんは鞄をごそごそとしながら、とんでもなく焦っていました。
「ちょっとここちゃん! びっくりするじゃない! どうしたのよ?」
「いや〜、ここにあるんだけど、忘れ物っていうかぁ」
「何言ってんのよ。あるなら忘れ物じゃないじゃない。あっ、ここちゃんのことだから、間違えて家の電話の子機持って来ちゃったとかでしょう」
「いや〜。それならいいんだけど」
いやいやちっとも良くないのだがと思いつつ、その鞄の中が気になった私の好奇心は膨れ上がる一方だった。
「それで、いったい何を持ってきちゃったの?」
「持ってきたっていうか……持ってきてたっていうか……」
「ん〜もうっ! はっきりしないわね! いいからそれを鞄から出しなさいよ!」
「そんなに欲しいなら美波にやるよ! ほらぁ!」
ここちゃんは人差し指と親指でそれをつまむと、私の前に置きました。
緑色をした丸いそれは、おそらくあれだったと思うのですが、一応確認をしておきましょう。
「これって、おにぎり……よね?」
「おいおい美波。それは、お・む・す・び! だろ!?」
「どっちでもいいわよ! 呼び方の問題じゃないよね! カビちゃってるじゃないのよ! いつから鞄に入ってたの?」
「…………去年の夏」
「半年前じゃないのよ! 食べ物を無駄にしたことを反省しなさいよね!」
神妙な面持ちで、おにぎりに向き合うここちゃん。そして手を合わせ頭を下げた。
「おむすびごめんね! あっ、でもこうして見ると、食べれないマリモにも見えるな? いやいや待てよ、緑が俺に語りかけてきた!グリーンライスボールだな」
「マリモにも謝罪しなさいよ! あとマリモって食べれないからね!それにここちゃん、グリーンライスボールって何よ!毎度毎度、誰が語りかけてくるって言うの」
驚きの表情のここちゃんの口に、このおにぎりを突っ込んでやろうかと思いましたが、私は優しいのでやめておきます。




