ここちゃん、卵に振り回される!?
私達の学校には飼育小屋があり、そこでは鶏を飼っています。もちろん毎日、小屋の掃除とエサやりがあるわけで、今日はここちゃんが当番なのですが。
「ふぁ〜。眠いなぁ」
「ちょっとここちゃん。しっかり掃除してよね。当番じゃなのに私も手伝ってるんだから」
「あいよ〜」
この寒い季節に外で飼われている鶏達の寒さ対策は、一体どうなっているのだろうと思いつつ、掃除を続けていると。
「あ〜!」
ここちゃんの声に驚いた鶏達がバサバサと動き回り、羽毛が小屋中に舞い上がります。
「ここちゃん! みんなびっくりしてるじゃない! 急に大きい声出しちゃだめでしょ!」
「み……美波。でもこれ……ほら」
そういうと、ここちゃんは鶏のベッドから卵を拾い上げました。
「ひよこちゃん」
「いやいや、まだ早いよ。掃除が終わるまで、割れないように置いておこう」
卵があったら職員室に持って行く決まりになっているのですが、なぜか手放さないここちゃん。
「なぁ、美波」
「ん? 両手で卵持っちゃってどうしたの?」
「俺……この子の親になる!」
再びバサバサと動き回る鶏達。
「声の大きさに驚いたのか、種の垣根を越えた愛に驚いたのか分からないけど、鶏達を驚かすのやめて。それに……」
「い〜やっ! この子は俺が育てる。だってこんなにかわいいんだぞ。美波も見てみろよ。ほらぁ」
ただの卵を差し出され、かわいいだろと言われても、やはりただの卵にしか見えません。
「ここちゃん。その卵なんだけどね」
「ノンノンノンだよ美波さん。お宅のお子さんと呼ばなきゃ」
つっこみどころが多すぎて、どこからつつけばいいかわからない。なのでここはズバッと一言で伝えよう。
「その卵、無精卵だからひよこにならないよ」
私と卵を交互に見ること数秒。ピタリと動きが止まったここちゃんの目から、光が消えました。
「……俺は半熟のゆで卵がいいなぁ」
「シフトチェンジ早っ! 愛情どこいった!」
卵を私に手渡すと、ここちゃんは足元の鶏を抱きかかえ、真剣な表情で向き合った。
「コケ子。ゆで卵産めるか?」
「産めるかぁぁ!」
私の声に驚いた鶏達は、今までにないほどバサバサと暴れ、小屋の掃除は振り出しに戻りました。




