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暁に立つ吸血姫  作者: 澪亜
第一章 過去編
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吸血姫は、発見する

そしてその翌日、朝から街の外の調査を開始した。

途中、魔物を討伐したり村を調査しながら進む。



今のところ、魔物と廃墟しか目にしていない。

まるで、世界に私たち二人しかいないように思えてくる。


そうして探索を始めてから三日が経った。


「ノックス……街だわ」


「あれは……この領都だ」


地図を睨みつつ、ノックスが呟く。

目の前にあるのは壁に囲まれた、堅牢な城郭都市だった。


「ねえ、ノックス。……普通、こういう壁の前には門番的な人がいるのではないしら?」


「俺もそのイメージだったんだが……無人だな」


まさか、こんな立派そうな都市ですら、廃墟となっているのだろうか。

そんな、不吉な想像が頭を過る。


「……いや、ちょっと待て。かすかに、中から音がするな」


「人がいるのかもしれないわね!」


そっと壁を見上げる。

魔法を使えば、門を開けてもらわなくとも中に入ることは可能だ。

……完全に不法侵入だけれども。


とは言え、ここでどのぐらい待っていれば門が開くかは分からない。

そもそも開くのかどうか、すら。

そんな訳で、不法侵入をすることを選んだ。


中に入ると、確かに人はいた。

けれどもそれでも……決して、廃村となった村よりマシと言える光景ではなかった。


舗装された街道には、多くの人がいる。

けれども、活気がない。

呆然と天を仰ぎながら座る人もいれば、横たわっている人もいる。

誰も口を開かず、時折子どもの泣く声が聞こえてくるぐらいだ。

異様な光景に息を呑みながら、街の中を歩く。


「……人が集まっているな。行ってみるか」


ノックスの呟きに、無言で頷いた。

そしてヒトの波に乗って歩くと、どうやら炊き出しが行われている、ということが分かった。


「すみません……」


炊き出しに並ぶ人たちの列を整理していた女性に、声をかける。


「すみませんが、食事を受け取りたいのであれば、並んでいただけますか?」


取り付く島もなく、断られた。


「あ、食事が欲しいわけではありません。私たちは南西の街シャリアンデから来ました。各都市が無事か、調査して回っているんです。できれば、この都市の状況を教えて頂ければと」


その答えが意外だったのか、女の人は目がこぼれ落ちそうなほど見開く。


「……え、貴女たち、外から来たの?」


「はい、そうです」


「またまたー……外は魔物だらけよ。貴女たちじゃ、あの魔物の包囲網を超えることはできないでしょう」


「これでも魔法が扱えるので。……証拠が欲しいということであれば、エイシャルから手紙を預っています」


「エイシャル……? ああ、領官のエイシャルね。資材の運搬で何度か連絡をとったことがあるわ。……少し、待っていてくれる? 配給が終わったら、中で話しましょう」


彼女の言葉を受け入れて、配給が終わるまで近くで待った。

そうして人が途絶えた頃に、彼女が戻ってくる。


「お待たせしちゃって、ごめんなさいね。それじゃ、案内するわ」


彼女に案内されて辿り着いたのは、この街の中でも比較的広大かつ立派な建物。

彼女は迷うことなくどんどん進み、とある部屋に入った。


「はい、そっちに座って。改めて、私の名前はサーシャ。この街の領官で責任者です。……あ、責任者と言っても臨時だから、言葉使いは気にしないで」


「それはありがたい。俺の名前はノックス。彼女はアウローラ。どうぞよろしく」


「もう気がついていると思うけど、この街も貴方たちがいた街と同じ。……というか、もっと酷いかも」


「……領主が、逃げたか」


「ええ、そう。この街はね、頑強な壁に囲まれた街なのよ。それなのに、魔物が迫り来るまさにその時に、領主が一部の者を連れて、無理矢理門を開けさせて出て行ったのよ。他の上層部の人たちも同じく逃げて行ったわね。おかげで、大混乱。領民たちも我先にと門から逃げたわ。それで門が閉じられず、そこから魔物が入り込んでしまったの」


……まさかここでも、上から率先して逃げるとは。

この国、大丈夫か? と素直に思う。


「そうか。……侵入してきた魔物は、全て討伐てしたのか?」


「ええ。警備隊のお陰で、何とか全てを討伐することはでたわ。でも……流石に、壁の外までは難しかった。それで、外と完全に断たれた状態なの。幸いにも、物資はまだあるけど……魔物に囲まれ、希望が見出せない状況、と言ったところかな」


「領外との連絡は?」


「王都には連絡鳥を使ったけど、未だ返信はないの」


「そうか……」


「だから尚のこと、貴方たちの存在が嬉しい。この領地で、我々は孤立しているのではなく、共に戦う人たちがいる、ということだもの。それで、貴方たちの街の様子は?」


ノックスがざっくりと街の様子や、この領都に来るまでの村の様子を語った。


「……そう。やっぱり、そんなに被害が出ているのね」


「ああ。残念ながら、な。……これからも外の探索は続けるつもりだから、適宜情報は共有するよ」


「それはありがたいわ。……にしても、貴方たちって本当に凄いのね。あの魔物の群れの中を、進めるなんて……。ウチの警備隊だって、街を守ることで精一杯だというのに」


「褒め言葉として受け取っておくよ」


「本当に、心の底から凄いと思っているのよ。……ねえ、貴方たちのどちらかだけでも、この街に滞在して貰うことは、できるかしら?」


「……それは、無理だ。シャリアンデが完全に安全になった訳ではないし、魔物の発生源を叩くための調査を優先したい」


「そう……。それは、残念だわ。隠してもしょうがないから正直に言うけど、この街は今、壁で保っているようなものなの。侵入してきた魔物は何とか撃退できたけど、警備隊の多くは満身創痍。次侵入されたら、どうしようもないかもしれない」


「……丁度提案しようと思っていたが、それならば転移魔法陣を置くことを了承してくれないか?」


「転移魔法陣?」


ああ、あれか……と内心呟く。

里が壊滅する前に、ノックスが研究していた魔法の一つ。

理想は任意のところに身一つで転移することらしいけど、今のところ成果は、陣を置いたところを繋ぐに留まっていた。


「ああ。魔法陣を設置した場所同士を繋いで、瞬間移動が魔法だ」


「……え、そんな魔法……聞いたことないんだけど」


「俺たちが開発した魔法だから、世に知られた物ではない」


「それが本当にあるのであれば、外との連絡も自由に……!」


「研究中だから、デメリットも多い。さっきも言った通り、魔法陣を設置した場所同士を繋ぐものだから、逆に言えば、魔法陣を設置していない場所には移動ができない。俺たちは王都に行ったことがないから、当然陣も設置していない」


「そう……。でも、いざと言うときは、それで誰もが避難ができるようになるわね」


「それも、無理だ。魔力の消費量が半端じゃない。最低でも、普通の魔法使いの二人分が片道で必要だな。後で、この街にいる魔法使いに試して貰っても良い」


「そ、そう……でも、貴方たちは使えるということね」


「ああ。俺たち以外にも、何人かは使える」


「分かったわ。他に、何か転移魔法陣のデメリットはあるのかしら? 例えば、街を害するような何かが」


「いや、他には特にない。強いて挙げるなら、この魔法陣の使用に耐えられる魔力の持ち主ならば、自由に出入りができてしまうってことだな」


「とは言っても、逆に使用を制限させてしまうと、緊急時に私たちが来づらくなるから、その点はメリットデメリット両方ってところかしら」


「そうだな。だから、機密を扱う場所は、避けて設置するしかない」


「そう……」


「後は俺たちを信じて貰うしかないが……そうだな。魔法陣を使うときは、これで連絡した時だけってことにするか」


「これは……?」


ノックスが渡したのは、電話だった。

勿論、電気ではなく魔力で使うタイプだが。


「離れていても話すことができる魔道具だ。ココと、ココのボタンを押してみてくれ」


サーシャは、ノックスに言われた通りにボタンを押した。

すると、ノックスが手に持っていた別の電話が「リンリン」と鳴り出す。

ノックスもまたボタンを押すと、耳にそれを当てて口を開く。


「その魔道具からも、俺の声が聞こえるだろう?」


「本当だわ……。……もしかして、これも貴方たちが?」


「ああ」


ノックスが肯定すると、サーシャは深々と息を吐いた。


「全く、今日一日で何度驚かされたことか。まさか、こんな便利な魔道具が開発されてるなんて。転移魔法陣も、こちらからお願いするわ」


「分かった。……できれば、俺たちの調査の時も使わせ貰えるか? 勿論、その時も連絡はする」


「ええ、勿論良いわよ。むしろ、こっちがお願いして設置して貰うようなものだから、断る選択肢はないわ」


「そうか。じゃあ、遠慮なく設置させて貰おう」


それから指定された位置に転移魔法陣を設置し、私たちは領都を後にした。

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