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3000年地道に聖剣を守ってきましたが、幼妻とイチャイチャしたいので邪竜になりました。  作者: 延野正行
終章 激闘王国編

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第37話 ミーニク村、強襲!

「ふわー、疲れた」


 最後に魔猿ネフィーザに雷息を放ったルニアは、大の字に寝転んだ。


 側にダールギィンを倒したフラリルがやってくる。

 羽根をたたみ、姉妹をとんとんと叩いた。


「大丈夫、ルニア」

「うん。問題ない。でも、ちょっと疲れた」

「そうだね。ちょっと疲れたかな、ぷくくく……」


 突如、フラリルは口元を隠し、肩を揺らした。

 ルニアは少し眉根を寄せる。


「なんで笑ってるの?」

「だって、ルニアったら、ひどい顔なんだもの」


 ルニアの顔はネフィーザの雷系魔法を食らって真っ黒だった。

 自慢の銀髪もくすみ、竜の鱗の一部もすすけている。


 ひどい顔といわれれば、確かにその通りだ。

 だが、生まれたばかりとはいえ、ルニアも女の子としての矜恃がある。


「フラリルの顔だって、ひどいよ」


 言い返す。


 その通り。

 フラリルもダールギィンの返り血にまみれていた。

 まるで緑のペンキをぶちまけられたかのようだ。


 フラリルも自分の惨状を確認して、首を竦めた。


「本当ね。ひどい」

「そう。ひどい」


「「ひどい顔」」


 少女たちは「ぷっ」と笑った。


 気持ちのいい少女の笑い声が、反響する。

 鉄の間が花畑にでもなったかのように暖かい雰囲気に包まれた。


 やがて、フラリルはペタリと座る。

 ルニアと同じくごろりと寝転がった。


「はあ。疲れたね、ルニア」

「疲れた。ちょっと眠る」

「こんなところで寝ると、風邪を引くよ」

「……うん。おやすみ、フラリル」

「もう……。おやすみ。ルニア」


 ルニアは目をつぶる。

 すぐに安らかな寝息が聞こえてきた。

 やがて、もう1人の寝息が重なる。


 フラリルもまた眠り始めた。

 姉妹よりそいながら……。

 傍目からみれば、銀と金の翼を広げたように見えた。


「2人とも、よくやった!」


 銀の髪に暖かな毛布が被さる。

 側に立っていたのは、黒い魔法使いのようなフードを被った我が妻ニーアだった。


 相変わらずその瞳はどこか眠たげだったが、我が子に置いた手は慈愛に満ちている。


「お疲れ様、フラリル」


 フラリルの方にも毛布を駆けられる。

 金色の耳と尻尾を持つ女の子――フランだった。


「2人ともよく眠ってる」

「可愛い。天使みたいですね」

「ニーアとガーディの子供。当然」

「ですね」


 フランは微笑んだ。


『目を覚ましたら、労ってやらねばな』

「うん。2人ともとっても強かった」

『うむ。我らの大きな力になってくれるであろう』


 千里眼で竜の子の寝顔を見つめる。

 フランの言うとおりだ。

 竜の子というよりは、天使のように可愛げがある。


 とはいえ、その表現は竜の父としては少々複雑ではあるがな。


「目を覚ましたら、うんとおいしい料理を食べさせて上げますからね」


 フランはフラリルの金髪を梳く。


「でも、その前にお風呂に入れなきゃ」

「あ。確かに……」


 ニーアの提案に、フランはパンと手を叩き頷いた。


『だが、その前に、だ』

「うん。わかってる」

「はい。わかってます」


 ニーアとフランはおもむろに立ち上がる。


 背後を振り返った。

 竜骨兵が控えている。


「2人をダンジョンの安全区画に」

「……」


 ニーアの命令に、竜骨兵は黙って頷く。

 毛布を掛けたままの竜の子達を持ち上げた。

 そのまま奥へと退いていく。


「さて、ここからはニーアたちの出番」

「はい。子供たちばかりお仕事をさせるわけにもいきませんから」


 ニーアはFN57のスライドを引く。

 フランもまたダマスカスナイフを腰の鞘から引き抜いた。


 そして戦地へ走るのだった。



 ◆◆◆



 ルニアとフラリルが、元配下のモンスターと対峙しているその時、別の場所で事は起こっていた。


 麓の村ミーニク。


 タフターン山がダンジョンとして稼働し、多くの冒険者達がミーニク村を訪れるようになっていた。

 村の収入は跳ね上がり、商売によっては借金を完済するものも現れた。


 村として軌道に乗り始めた矢先――。


 それは現れた。


 始まりは村の道具屋。


 冒険者に回復薬を注文され、奥の倉庫から薬を持って戻ってくると、客の表情は一変していた。


「ちっ! ベリガルたちめ」


 山の方を向き、冒険者は呟いた。


 すると、むくりとその身体が膨らんでいく。

 店の屋根を突き破り、現れたのは人の形をした竜だった。


「も、モンスターだぁああ!!」


 店主は悲鳴を上げる。


 ベリガルと同じ魔龍族のモンスターは鋭い眼光を放つ。

 店主が持った回復薬をむしり取ると、酒のように呷った。


 ポンと空になった回復薬の瓶を放り投げる。


「ひぃ……。ひぃいいいいいい!」


 お代も受け取らずに、店主はカウンターから飛び出す。

 外に出た。


 待っていたのは、地獄絵図だった。


 村のあちこちにモンスターが跋扈していたのだ。


 一つ目族、悪魔族の高位のモンスターをはじめ、下位の獣型のモンスターも村の大通りを徘徊している。

 すでに煙が上がり、遠くではまた1つ家屋が倒されていた。


「な、なんてこった!」


 道具屋の店主は膝を折る。

 絶望的な光景を刻み込むように、生まれ育ったミーニク村を見つめた。


「店主、お代はまだだったな」


 背後でモンスターの声が聞こえる。


 店を襲った魔龍が三叉槍の切っ先を店主に向けていた。


 店主は悲鳴を上げるしかなかった。

 砂を握り、尻をつけながら後退する。

 だが、三叉槍の間合いから逃げることは出来なかった。


「代金だ」


 三叉槍が振り上げられる。

 終わった――店主は目をつぶった。


 乾いた音が鳴る。


 鼓膜をぶち抜くような音と、自分が生きていることに驚き、再び目を開けた。


 目の前に立っていたのは、騎士だった。

 全身を黒いフルプレートで覆い、幅の広い両刃の剣で大きな三叉槍を受け止めている。


 王国の兵士、あるいは冒険者かとも思ったが違う。


「大丈夫か」


 店主の方に向けた瞳は人のものでもない。

 ただ1対の赤い光が、フルフェイスの兜の奥から光っていた。


 それがモンスターであることは、すぐに気づいたが、恐怖はなかった。


「ガーデリアル様……」


 芽生えたのは希望。

 タフターン山の守護竜ガーデリアルの配下だとすぐに気づいた。


「山に逃げろ! 早く!」

「は、はい。ありがとうございます」


 店主は目を真っ赤に腫らし、立ち上がる。

 言われた通り、山を目指した。


「ちっ! タフターン山のモンスターか」

「貴様らこそ、カステラッド王国から派遣された魔族だな」

「なんだ。知ってたのか。折角、人間の振りしてここまで近づいてきたのによ」

「我が主君はすでにお主達の正体と首魁が誰かわかっておるわ」

「だから、どうだというのだ、亡霊騎士風情が、S級モンスターの魔龍族に勝てると思うのか」


「カカ……」


 さまよえる騎士は頭骨を直接叩いたような笑声を上げる。

 三叉槍を大きく弾いた。


「ぬお!」


 亡霊騎士と侮った魔龍は、2歩下がる。

 目を広げ、改めて騎士を見つめた。


「貴様……」

「やれるものならやってみるがよい、魔龍よ。ランクこそB級だが、我が魂と主君への忠義は、S級を越えることを証明しよう」


 さまよえる騎士は剣を斜に構える。


 その雰囲気は達人の域を超えていた。



 ◆◆◆



 我は千里眼で戦況を確認する。


 ミーニク村に現れたモンスターの数は50匹。

 さらにタフターン山の東、南、西にそれぞれ100匹ずつ。

 合計350匹のモンスターが、山を取り囲むように進撃を始めていた。


 その中の1割強がS級、下位クラスでもC級以上のモンスターが揃っている。


 精鋭であることは間違いない。


 彼らはすべてが、人間に化け、タフターン山を目指してきた。


 気づいてなかったわけではない。

 こうなることは、以前から予測していた。


 ただ今日とは思わなかった。


「なるほど。本隊合流までの前哨戦というわけか」


 おそらく敵の狙いは、これ以上の戦力投入を止めるためだろう。

 もしくは本隊合流前に、戦力を削ぎ、本戦で優位に進めるためだ。


 いずれにしろ、かかる火の粉は振り払わねばなるまい。


 しかし、魔族が人間の姿をしているのには驚いた。


 我が知る限り、ヤツらのプライドの高さは筋金入りだ。

 敵種族の姿に化けるなど、屈辱以外の何者でもないだろう。


 だが、魔族は効率を重んじる種族でもある。


 長い間、人間を刈り取るため、その姿がもっとも効率が良いと考えれば、手段を選ばないだろう。


 そうして彼らは人間社会に溶(ヽヽヽヽヽヽ)け込んできた(ヽヽヽヽヽヽ)のだろう(ヽヽヽヽ)


 我は首をもたげた。

 遠く――カステラッド王国王都の方を向く。


 憎々しげに瞼を動かし、我は睨んだ。



 やはりあの男(ヽヽヽ)の言葉は真実(ヽヽヽ)だったか(ヽヽヽヽ)

今日、明日と説明回になりますが、よろしくお付き合いくださいm(_ _)m

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