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3000年地道に聖剣を守ってきましたが、幼妻とイチャイチャしたいので邪竜になりました。  作者: 延野正行
終章 激闘王国編

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第34話 竜の子、生まれる。

(作者の脳内では)前回はとてもエッチなシーンでしたね。

 タフターン山頂で、少女たちの秘めやかな声が響く。


「大きくなりましたね」


「うん。もうすぐ産まれそう」


「こうしてさすると暖かいですよ」


「暖かくて眠ってしまいそう」


「あ。今、動いた」


「蹴った」


「眠ってしまいそうとかいうからですよ」


「うん。反省。だから、そろそろ産まれて来て」



「「赤ちゃん」」



 ニーアとフランは声をかける。


 その相手は、彼女たちの大きなお腹の中にある竜の子――ではなく、タフターン山頂上に忽然と現れた2つの大きな卵だった。


 白地に緑色の斑模様という色の卵は、かなり大きい。

 母であるニーアたちの背丈よりも高く、2人が手を回しても届かないほど横幅があった。


 竜の卵。

 それも我の卵なのだ。

 これぐらい大きくてしかりだろう。


 その我はというと、地面に顎を付けてぐったりとしていた。


 排卵して(ヽヽヽヽ)3日目。


 まだ身体がだるい。


 かなりの難産だった。

 しかも、同時に2つ。

 こんな大きなものが我の喉を通り、口から排出されたとは今でも考えにくい。


 問題だったのは、如何に卵を壊さず排出するかということだった。


 卵の外殻は脆い。

 顎に少し力を入れるだけで割れてしまう。


 故に、なるべく手早く、慎重な作業が必要だった。


 おかげで顎が痛く、こうして地面につけていないと、自然と開いてしまうほどだ。


 結局、2つ産むのに、1日かかった。


 こんな時に王国のものどもが攻めてきたら大変なことになっていただろう。


 千里眼を見る限り、その兆候はない。

 だから、我はこうして身体を休めていた。


「でも、びっくりしました。まさかガーディ様がお産みになるなんて。てっきりフランは――」


 フランはモジモジしながら、顔を赤らめる。


 子供と聞けば、そう思うだろう。


 だが、彼女たちが産むのは人の子ではない。

 竜の子なのだ。


「ガーディ!」


 卵をスリスリしていたニーアは突然叫んだ。


 ここ、と指をさす。


 穴――いや、ヒビが入っていた。


「産まれるのか!?」


 我は首をもたげた。


 ヒビが広がっていく。

 それも2つ同時にだ。


 2人の母親は「おお」と歓声を上げつつ、卵の行く末を見守る。


 ピキィ……。


 幹が縦に裂けるような音が聞こえた。


「卵が割れるぞ」


 我は叫んだ。


 声を聞き、続々と配下たちが集まってくる。

 さらに暗雲が立ちこめ、雷が鳴り始めた。


 おお。天があらぶっておるわ。


 風雨の中で産まれる竜の子。


 これ程、邪竜の子供に相応しいシチュエーションはない。


「がんばれ! ニーアの子供」

「赤ちゃん、がんばって!」


 それぞれ声援を送る。


 部下たちも「がんばれ」という言葉と、吠声が入り交じる。


 山頂は騒然とし、いつの間にか卵を囲んでお祭りのような雰囲気になってきた。


 そして、その瞬間はやってきた。



 キィィイイィイイイ!!



 落雷が落ちた。


 瞬間、パッと花が開くように卵が割れる。


 卵の残骸と、白身のような粘液が広がっていった。


 そこに銀、金の髪が混じる。

 美しい髪に、我は一瞬心を奪われた。


 現れたのは、2人の美しい少女だった。


 1人は長い銀髪に、赤い瞳。

 もう1人は、金髪に、青い瞳。


 ともに肌は白く、華奢。

 すでに女性的な部分の成長は始まっていて、よくしまったウェストを持っていた。


 特徴的なのは耳と肌だ。

 耳は長く――とはいえ、エルフとはまた違う。

 どちらかといえば、魚のヒレに似ている。


 また白い肌には、所々竜の鱗のようなものが付いていた。


「これが竜の子か……」


 息を飲む。


 子供というよりは、目の前に突如、天使が現れたのではないかと思うほどのインパクトがあった。


 それは皆も同じだろう。


 先ほどのお祭り騒ぎが嘘のように静まり返っている。


「パパ……」

「ママ……」


 かすれた声でそういったのは、竜の子たちだ。


 やおら立ち上がろうとする。

 だが、すべすべの粘液に足を取られ、すてんと転んでしまった。


 それでもめげない。

 我らに向かって手を伸ばす。


 すると、ニーアとフランが2人に近づいていった。


 ニーアは銀髪の子供を。

 フランは金髪の子供の手を取る。


「「ママはここにいますよ」」


 声を揃え、微笑んだ。


 我は首を下げ、子供たちに近づいていく。

 大きな舌を出し、子供たちにかかった粘液を舐め取った。


 キャッキャッと喜ぶ表情は、どこかニーアに似ている。


「パパ……?」

「パパ……?」


 2人は顔を上げる。


 我は大きく頷いた。


「うむ。我はお主らの父親ガーデリアルだ」


 そして吠声を上げた。


 この喜びと感動を伝えるため。

 世界のものに知らしめるため。


 我は長い長い遠吠え上げた。


 すると、配下たちも声を上げた。


 いつしか歓声が上がる。


「おめでとうございます」

「竜の子、万歳!」

「ガーデリアル様、万歳!」


 両手を挙げ、何度も万歳を繰り返すのだった。




 我はその日1日、休息日とした。


 配下に祝い酒を振る舞い、酒肴は村の者に頼んで用意をしてもらった。


 モンスターたちは「めでたい。めでたい」といいながら、2人の美少女を肴に杯を傾ける。

 ほとんどが人外という異様な祝い席だったが、我が事のように喜んでくれた。


「主、改めておめでとうございます」

「おめでとうございます、ニーア様。フラン様」


 我たちの元に訪れたのは、デュークと大魔導だ。


 大魔導はいつも通り冷静沈着だったが、デュークは少し酔っているらしい。

 足元がおぼつかず、杯の酒を何度もこぼしていた。

 暗い兜の奥も、少し赤らめているような気がする。


「いやー、めでたい! しかし、竜の子というのがこんな美しい少女とは」

「私も驚きました。生物学的に興味があります」

「おい。貴様らにやるほど、我が子は安くないぞ」


 我は目を細める。

 本気の殺気を放った。


「し、失礼しました!」

「私も失言でした」


 2人は平謝りする。


 その横でニーアとフランがクスクスと笑っていた。


「ガーディ、もう独占欲」

「仕方ないですよ、ニーアさん。2人ともこんなに可愛いんですよ」

「父親として当然だ」


 悪い虫をつかんように大切に育てなければな。


 我は鼻息を荒くする。


 そもそも2人とも身体はもう女性だ。

 成熟度でいえば、フランより高い。

 身長もニーアより高く、並んでみると明らかに竜の子2人の方がお姉さんに見える。


 その2人とはというと、キョトンとした表情で周囲を見ていた。


 産まれたばかりで何もかも珍しいのだろう。

 モンスターを前にして驚くことなく、祝いの席を楽しむ配下たちを見つめたり、フランが作った酒肴を食べて「おいしい」と笑っていた。


「ところで、お名前はお決めになったのですか?」


 大魔導が尋ねる。


 そういえば、名前を決めてなかった。

 何せ着床から産まれるまで7日もなかったからな。


 そんな暇がないぐらい今は忙しいし。


 うーむ。どうしよう。


「主、ガーデリアル様方のお名前から取られていかがですか?」


 デュークはしゃっくりしながら提案した。

 だいぶ酔っているようだが、案としてはまともだ。


 我は羽根を1度羽ばたかせる。


「よし。では――」


 まず銀髪の少女の方を向いた。


「お主は我とニーアの子供なので、ルニアと名付けよう」

「る・に・あ……」

「そうだ。気に入ったか!」

「うん。ありがとう、パパ」


 銀髪を揺らし、ルニアは頷く。

 横で聞いていたニーアもうんうんと何度も頭を振った。

 こちらも気に入ってくれたらしい。


 次に金髪の少女を見つめる。


「お主はフランとの子供なので、フラリルと名付けよう」

「フラリル……。うん。わかった。ありがとう、パパ」


 金髪の娘フラリルは、花のように笑った。

 やはりフランの子供だ。

 笑顔がそっくりだった。


 こうして名前を付けると、子供を産んだという実感が湧く。


 我は改めて心の中にじんとするものを感じていた。


「……」

「……」


 すっくとルニアとフラリルは立ち上がった。


 その表情はどこか厳しい。

 まるで眼前の敵を睨み付けるようだった。


「パパ」

「ママ」


「「敵が来たよ」」


 我は一瞬、首を傾げた。


 もしやと思い、我は千里眼で確認する。

 タフターン山に冒険者の一行が近づいてきていた。


 かなり強い。

 腕に自信があるのか。

 試練のダンジョンの方へ回り込もうとしている。


 会話を聞く限り、どうやらヤツらは我の首に興味があるらしい。


 だが、何故我が子たちは冒険者の接近に気付いたのだろうか。


 もしや――。


「そうだよ、パパ」

「ルニアも」

「フラリルも」


「「千里眼を持ってるの」」


 なんと!


 我はあんぐりと口を開けた。


 確かに2人とも我の子ではあるが、すでに千里眼を持っているとは。


「パパに危害を加えるものは」

「誰であろうと許さない」


 2人の闘気が燃えさかる。


 今にも飛び出していきそうな勢いだ。


「待て待て、お前たち。お前たちは子供なんだぞ」

「大丈夫」

「ルニアも、フラリルも」


「「強い!」」


 自信に満ちた瞳を我に向けた。


 我は千里眼で2人を見る。

 本来、モンスターしか我は見ることが出来ないが、2人は見ることができるようだ。



 なまえ  :ルニア

 Lv   :1

 ちから  :A+   ぼうぎょ :S

 ちりょく :A    すばやさ :S

 きようさ :S+   うん   :A

 けいけんち:1500 ませき  :S×5 A×3



 なまえ  :フラリル

 Lv   :1

 ちから  :S    ぼうぎょ :S

 ちりょく :A    すばやさ :A+

 きようさ :S+   うん   :A-

 けいけんち:1500 ませき  :S×5 A×3



 なんだ! この化け物みたいな能力は!


 いや、いかんいかん。

 子供に化け物などと言ってはいかんな。


 しかし、レベル1の時点でSクラスの能力を持っておるぞ。


「パパ、お願い」

「フラリルたちに、悪いヤツをやっつけさせて」


 娘たちは真剣な眼で我を見つめるのだった。


明日の投稿をお休みさせていただきます。

このところずっと体調不良が続いておりまして、作業が思うように捗らない状態です。

おそらく明後日は投稿出来ると思います。


毎日投稿すると宣言したばかりで申し訳ない。

ご理解いただければ幸いです。

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