第33話 竜の子供
割と問題シーン。
ドワーフたちの探索の結果、大竜の骨は6匹が見つかった。
これで3000体の竜骨兵を作ることが出来る。
期待していたよりも少ないが、上々というべきだろう。
平野で正面から戦うのなら圧倒的不利といえるが、我らの戦地はあくまでタフターン山と地下に広がるダンジョンだ。
局地戦を戦うなら十分といえる。
我はひとまず1000体を召喚する。
今すぐにでも召喚したいところだが、召喚したなら養わなければならない。
モンスターの維持費というのもタダではない。
彼らも生きていくために栄養が必要になる。
食糧であったり、人の血であったり、時に知識であったりと、様々だ。
竜骨兵は魔力を欲するモンスターだ。
要求する量は、微々たるものだが、3000体となれば、馬鹿に出来ない。
いくら我の魔力が無尽蔵といえど、肝心なところでガス欠となれば、勝敗を分かつ原因になるかもしれない。
ある程度コストを抑えるためにも、数の調整は必要なのだ。
もう1つ理由がある。
この1000体のうち、500体を訓練所でレベルアップを考えているが、これ以上所内に入れることが出来ないのだ。
訓練所を拡充して対応は出来るだろうが、あれで訓練所は高コストな上、素材が結構必要になる。
戦の前ということもあって、物が入りような時に、部屋の拡充はかなり頭の痛い話だ。
ケチ臭いといわれるかもしれないが、断腸の思いで訓練所の拡充を諦めた。
これが勝敗を分けなければいいのだがな……。
「ガーディ、いーこいーこ」
ニーアは我の鼻を撫でる。
「どうした、ニーア」
「ガーディ、悩んでる。でも、大丈夫。ニーアはガーディを信じてる」
「ありがとう。ニーア」
我もニーアの頭をペロペロと舐めた。
すると、どこからか声が聞こえた。
どうやら久しぶりに我のダンジョンレベルが上がったようだ。
すでに我のレベルはかなり上がっている。
連続召喚や、500体以上の同時召喚などの召喚系のスキル。
ダンジョンの警備機能を主とするガーダーの召喚。
各種の罠や、魔法の扉などの工作機能。
などなど、様々スキルが使えるようになった。
おかげでダンジョン自体は、昔と比べれば格段に難しくなっているはずだ(試練の洞窟に限ってだが……)。
かなりのスキルを会得したが、まだ何かあるらしい。
声に耳を傾ける。
それを聞いた瞬間、我の赤い目はギラリと光る。
そして、竜の巫女を呼んだ。
「どうしたの、ガーディ」
「えっと……。どのようなご用件でしょうか、ガーディ様」
我が妻はともかく、フランの方は突然の呼び出しにおろおろしていた。
尻尾をひっきりなしに動かし、耳が少し垂れている。
おそらく料理の真っ最中だったのだろう。
白地に花柄がついたエプロンはとても似合っていた。
「うむ。お主たち2人にお願いがあるのだ」
「お願いですか?」
フランは首を傾げ、瞬いた。
咳を払う。
我は意を決し告げた。
「我の子を産んでほしい!」
…………。
一瞬の静寂の後。
「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!」
フランの叫び声が、タフターン山に響き渡った。
聞こえてきた声は、こう言った。
ガーデリアルはダンジョンレベルが上がった。
竜の子を産めるようになった。
ん?
竜の子?
竜の子供を産めるようになったのか。
我は首を傾げる。
一体どうやってというのが、率直なところだった。
3000年生きているが、我は雌性と睦み合ったことは1度もない。
自分で断言するのもなんだがな。
そういえば、むかし勇者もどきに童貞を煽られたことがあったか。
もう遠い昔のことのように思う。
……なんだが、腹が立ってきたぞ。
それはともかくとして……。
我は竜の子供の作り方を知らなかったのだ。
というか、他の竜はどうやって知ったのかすら、不思議だった。
検討も付かないのだ。
いっそ竜マニアの妻にでも聞けば良かったのだが、夫としては「子供の作り方を教えてください」などと口が裂けてもいえない。
ニーアに失望されるかもしれぬからな。
ちなみに、人間の子作りは知っておるぞ。
千里眼でたまに見るからな。
腰を振れば良いのであろう。
…………ええい。話が進まぬ。
いい加減、動揺から立ち直れ、ガーデリアルよ。
今一度、我は己を鼓舞する。
幸いにも、声は説明を続けた。
〇 『竜の子』についての説明
『竜の子』とは竜の巫女との子供である……。
「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!」
またフランは我の説明を聞きながら、悲鳴を上げた。
「ガーディ様の子供をフランがですか?」
「うむ。その通りだ」
我は頷いた。
「で、でも、フランはまだ子供だし」
「いや、問題ない」
「え? でも、フランはガーディ様の娘だから、きんしんそーかんになるんじゃ」
どこでそんな言葉を覚えてきたんだ、この娘は。
ともかく1度、落ち着く必要があるな。
我はニーアの方を向いた。
「ニーアはどうなのだ? 我の子供を産んでくれるか?」
「うん……」
すると、ニーアの瞳から涙が溢れた。
我は大きな尻尾を揺らしながら、おろおろする。
まるで先ほどのフランのようだ。
「ど、どうしたのだ? 涙を流すほど、我と子供を作るのがいやなのか」
「ううん。違う」
うれしい……。
「ガーディとの子供できる。とても嬉しい」
ニーアの顔は涙に濡れていた。
しかし、満面の笑みだ。
涙を払いながら、ニーアは我に尋ねる。
「ガーディは、ニーアとの子供ほしい?」
我は1つ間を取った。
簡単に返せるような質問ではなかったからだ。
我は返答に魂を乗せた。
「ほしい。……我の子供を産んでくれ」
「はい……。ニーア、ガーディの子供を産むね」
また一筋の涙が浮かぶ。
我はペロリと大きな舌を出して舐め取った。
「あの……」
我の間に割って入ったのは、フランだった。
「ニーアさんはいいんです。けど、フランもってことになれば、それはその……とても言いにくいのですが、ガーディ様がふりん?」
ぬぅ。
どうやって、そんな言葉を覚えてくるのだろうか。
フランを育ててた村長の影響か。
いずれにしろ、答える必要がある。
我が口を開けた瞬間、先にニーアが言った。
「ニーアはフランにも産んでほしい」
「え? いいんですか?」
「他の女の子はイヤだけど、フランなら許す。それに――」
竜の子はとても強い。
きっと自分たちを助けてくれる。
フランを真っ直ぐに見つめながら、ニーアは説いた。
小さなフランにとっては、重く、そして難しい問題だ。
子供を産む。
しかも父と慕う竜の子供をだ。
誰かに投げ出したい難しい決断を、小さな身体は受け止め、答えを出した。
「はい。フランもガーディ様の子供がほしいです」
「ありがとう、フラン」
「恩に着るぞ、フラン」
「そんな感謝しないでください。フランも嬉しいんです。大好きなガーディ様の赤ちゃんを産めるんですから」
フランもまた涙を光らせながら、答えた。
理解ある妻と娘に恵まれ、我は果報者だな。
「それよりも、えっと……。どうやったら赤ちゃんを作れるんですか?」
「それはね、フラン。寝転んで足を広げてね……」
「待て、ニーア。我は竜だぞ」
「え? ガーディのおち〇ちんを――――」
やめい!
それ以上の話は子供に毒だ。
「今からニーアたち、子供を作るんだよね」
「まあ、そうではあるが……。竜の子の作り方は、人間のそれとは違う」
そもそも我の性器が、こんな小さな少女たちに……いや、これ以上は言うまい。
「じゃあ、どうするの、ガーディ」
「うむ。実は簡単なことでな」
お主達の秘所をペロペロさせてくれ。
「それだけ?」
「秘所ってなんですか?」
「女の子の大事な所だ」
我の答えを聞き、フランは尻尾をピンと立てる。
顔を赤らめた。
「早速で悪いが、我にそなたらの秘所を見せてくれ」
ニーアはスカートを、フランはエプロンをたくし上げた。
フランは緊張からか震えている。
赤い果実のように顔を赤らめ、エプロンの裾を掴んでいた。
「あ、あの……。ガーディ様」
「ガーディ」
「なんだ?」
優しくしてね。
2人は懇願する。
我は頷き、おもむろに2人の方に顔を近づけていった。
少し鼻をひくつかせる。
フランは「あっ」と顔を上げた。
「嗅がないで下さい」
「ガーディ、女の子との気持ちわかってない」
「す、すまぬ。……では、行くぞ。まずはニーアからだ」
「うん。……来て、ガーディ」
ニーアはスカートを広げ、我を迎え入れた。
次回は自主規制し、子供を産んだところからになります(BANされちゃうからね)




