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3000年地道に聖剣を守ってきましたが、幼妻とイチャイチャしたいので邪竜になりました。  作者: 延野正行
第1章 邪竜ガーデリアルと幼妻

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第15話 Savage110 VS 騎士団

日間ジャンル別10位でした。

若干落ちてきましたが、投稿は頑張ります!

 先遣隊との連絡途絶――。


 大竜騎士団団長グローバリ・ヴァル・アリテーゼが、その報を聞いたのは、陽も落ちた夜になってからだった。


 ミーニク村の北に構えていた大竜騎士団の本陣がにわかに騒がしくなる。


 幕舎で執務をこなしていたグローバリは、顔色1つ変えなかったが、机に置いた手を強く握り込んでいるのを、報告した部下は目撃した。


 知らせを教えてくれたのは、山の裏手側に回り込んだ先遣隊の生き残りだ。

 いつまで経っても動きもなく、制圧したという報告も回ってこない。

 不審に思い、先遣隊本隊と合流する決断を下すと、試練のダンジョンの入口は、馬だけを残して綺麗さっぱりいなくなっていたという。


 洞窟を軽く覗いてみたものの、ひっそりとしていて人の気配はない。

 不気味なほど静かだった。


 生き残りは本隊と合流を選択し、グローバリに報告が届けられたというわけだ。


「団長、如何致しますか?」


 決断を待っていた副長が、痺れを切らして質問した。

 執務を脇に置き、目を伏せて考えていたグローバリは、ゆっくりと瞼を持ち上げる。


 彼の決意は決まっていた。


 部下の仇を取る。


 そのためにはるばる辺境までやってきたのだ。


「明朝、討って出る!」


 力強い言葉に、副長は直立した。



 ◆◆◆



 馬の蹄の音を聞き、我は顔を上げた。


「来たか」


 千里眼で見つめる必要はない。


 朝霧に紛れ、本隊約300騎がタフターン山に向け進行してきていた。

 その勇猛さを見せつけるかのようにわざと砂煙を上げて、試練の洞窟入口へと向かってきた。

 あと少しで辿り着くだろう。


「皆のもの用意はいいか?」

「は! 主よ。このデューク、いつでも」


 デュークは典雅に傅いた。


「頼もしいな。さすがはデューク。他の者は――」

「もぐもぐ……。うん。大丈夫もぐ。……いつでも、もぐ、いける」


 ニーアは口一杯に何かを咀嚼しながら、応える。

 唇の周りには、ご飯粒がついていた。


 今日の朝ご飯は昨日の鍋にご飯を入れたお雑煮だ。

 良く効いた出汁と山菜の甘みがよく合い、今日も美味しい食卓となっている。


「ニーア、ちゃんと食べてから応えるがよい。ほら。ご飯粒がついておる」


 我はべろりとニーアを舐めた。

 妻はキャッキャッと子供のように笑う。


「ガーディ、くすぐったい。朝からスキンシップダメ。みんなが見てる」

「な、何をいう。舐めるぐらい日常茶飯事だろう」

「2人の時はいい。でも、ここには子供(フラン)がいる。子供にはまだ早い」

「お主は何を何するところを想像して、そんな注意をしておるのだ。いくさの前だぞ」

「だから、気持ちが高ぶる。ガーディ、大丈夫? ニーアのおっぱい触る」

「自分でいっておきながら、恥ずかしがるな、ニーアよ」

「うん。ちょっと恥ずかしかった。ニーア、緊張してる」


 緊張するから乳房を見せるのは、どうかと思うが。

 そもそもニーアの胸はほとんどまな――ごほん、それは置いておこう。


 我はニーアをまた舐めて誤魔化した。


「また舐めた」

「緊張をほぐしてやろうと思ったのだ」

「大丈夫。ニーア、ガーディ守る」

「我もそなたを守る。絶対にだ」


 ニーアは我の頬の辺りをさすった。


「2人とも本当に仲がいいです」

「うむ。主への忠誠心は負けるつもりはありませんが、愛情では奥方殿に完敗のようです」


 フランとデュークが我らのやりとりを見ながら言った。

 顔には笑みを浮かべている。

 リンもスライムも、それを見て、リラックスしたようだ。


 張りつめていた緊張感が少しだけ緩んだ。


 我は仕切直すために首をもたげる。


「各々の役目はわかっているな」

「大丈夫だよ、ガーディ」

「私も問題ありません」

「ぎぃぎぎぎぃいい」

「にょろにょろ」


 戦闘担当の1人と3匹は応えた。


 今回は総力戦になる。


 我はフランにも役目を与えていた。


「フラン、お主もいいな」

「はい。ガーディ様の合図を待ちます」

「うむ。それともしこの作戦が失敗したら、お主は村に戻り保護してもらうがよい」

「え? でも――」

「お主はまだ人を殺めておらん。我に命令されて、ご飯を作っていたといえば、騎士団も納得するであろう」

「ダメ! そんな未来のことは考えられない。フランは子供だから……」

「フラン!」

「絶対に成功させます。ここはフランの唯一の居場所だから」


 獣人少女の瞳に覚悟が宿る。


 ニーアといい。フランといい。

 我に関わりある女子は、どうしてこう勇ましいのか。

 宿命か、それとも運命か。


 ならば指揮官として我もその覚悟に応えなければならない。


「よかろう。必ず我らは勝利しよう」

「ガーディ様」


 我はフランも舐める。


 守護竜ガーデリアルなりの祝福のつもりだった。




 いよいよ騎士団が到着する。


 団長らしき男が、我がいる頂上を見上げた。

 なかなか厳めしく面構えをしている。

 武人然としていて、強そうだった。


 我は騎士団の確認した後、雷のように声を轟かせた。


『よく来た。聖剣を求めし勇者たちよ。我は聖剣を守護し竜ガーデリアル』

「ガーデリアル……」


 団長は我に名前を呟くのが聞こえた。

 口上を続ける。


『さあ。聖剣を欲しくば、我が創造せし、試練のダンジョンを越え、我が元に辿り着くがよい』


 団長は騎士団の先頭に出てくる。

 馬を止めると、我に言った。


「守護竜ガーデリアルよ! そなたに尋ねたいことがある。今現在、私の団の一隊が行方不明になっている。昨日、この辺りで陣を張っていたと思われるが、何かお心辺りはないだろうか」


 言葉こそ丁寧だったが、抑揚のない声の端々に怒りが見て取れた。


 我は笑む。

 そして言葉を団長に落とした。


『その者たちは昨日、我が試練に挑み敗れた』

「……敗れた、とは?」

『言葉通りだ。つまり――』



 死んだ――――。



 団長の顔がみるみる赤くなっていく。


 眉間に青筋が浮かび、手にした手綱がただ握力だけで切れそうなぐらい握りしめた。それを見ていた団員たちが鼻白む。

 普段は感情を露わにしない団長であることは、数回会話重ねただけでわかる。

 故に、余計その顔がおそろしく見えたのであろう。


 1匹の赤鬼となった団長は、抜剣する。


「貴様か! 貴様が我が大竜の鱗に傷を付けたのか!!」


 そして振り下げた。


「全隊、進め! 頂上にいる竜を討ち取り、我らが同胞の元に送るのだ」

「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」


 気勢が上がる。

 騎士団は騎馬から降りることなく、山肌を駆け上った。


 良馬だな。しかも、かなり鍛えているようだ。


 勾配がきついタフターンの山肌を、鎧を付けた騎馬が登ってくる。


 しかし、我は慌てなかった。

 予想の範疇だ。


『タフターン山を登ろうなどルール違反も甚だしいなあ、団長よ』

「黙れ、ガーデリアル。我らが欲しいのは聖剣ではない。貴様の首だ!」

『なるほど。……だが、ルールに抵触したものは裁きを与えねばな』


 我は首を捻る。


 山の嶺に隠れていたニーアが顔を出した。


 新たなる力――SAVAGE110のボルトを引いた。

 338ラプア・マグナム弾を、銃身に装填する。


 バイポッドを立てると、右手でストックを持ち、バットの右肩に当て、位置を決める。

 柔らかな頬をパットストックに当てると、左手を脇に押し込むような姿勢を取る。

 ふっと息を吐いた。グリップに右手をかけ、軽く銃把に手を置く。


 射撃姿勢が整うと、ニーアは歴戦のスナイパーのようにスコープを覗き込んだ。


 向かってくる騎馬に狙いを付ける。


 我は言った。


『撃て』


 ニーアは迷わず銃把を引く。


 鋭い爆発にも似た音が響いた。


 先頭を走っていた騎馬を打ち抜く。

 馬がもんどり打つと、乗っていた騎兵も飛び上がり、地面に叩きつけられた。


 その距離は、古代の単位でいえば、1キロメートル以上。


 弩弓、投石機など話にならず、魔法とてここまで精確には当てることは出来ないであろう。


 ニーアの類い希なる射撃センスもそうだが、SAVAGE110の能力に寄るところも大きい。


 高いマン・ストッピングと、優秀なフラッシュハイダーによって反動を抑えられていることが、高火力高精度狙撃を実現した主な要因だろう。

 一説に寄れば、2キロ以上の狙撃に成功した例もあるらしい。


 ともかく――剣と魔法の時代において、狙撃銃は見ただけで石に変える魔眼も同じだった。


 ニーアは重いボルトアクションをなんなくこなす。

 無限に供給される338ラプア・マグナム弾を撃ちまくった。


「ひがあああああ!!」

「助けてくれ!」

「悪魔だ! 悪魔の力だ!」


 口々に悲鳴を上げる。


 雨霰のように降ってくる謎の攻撃に、いかな練度と経験を持つ騎士団とて、戦意を喪失せざる得なかった。


 一番驚いていたのは馬だ。


 勾配のきつい坂で急ブレーキを掛けると、主の意に反して動かなくなった馬が続出した。


 仕方なく下馬し、登坂するのだが、ニーアにとっては格好の的だ。

 次々と狙撃銃の餌食になっていく。


「ダメです! 団長! このままでは――」

「ぬぅううう」


 気がつけば、20人が撃たれ、もう20人が馬がひっくり返った際に負傷し、戦線離脱を余儀なくされていた。


 魔法兵を展開し、頂上を攻撃しようにもあまりに遠すぎる。


「1度撤退しましょう」

「致し方ないか」


 ようやく団長は1度撤退命令を出す。


 謎の貫通攻撃に戦意を失っていた団員たちは、ホッとした顔で馬を捨て、下山してくる。


 それを見て、ニーアは汗を拭った。


「ふー。やっと撤退した」

「ニーア、ご苦労だったな」

「うん。あともうちょっと粘られてたら、銃身が溶けちゃうところだったよ」


 黒鉄の銃身を軽く触ると、「あつっ」という悲鳴とともに手を引っ込めた。


「狙撃銃はどうだ?」

「凄い銃。遠いのに、1発で仕留められる。癖になりそうかも」


 どうやら気に入ってくれたらしい。


 相変わらず、ニーアの高い順応能力には驚かされるな。


 だが、これで終わる騎士団ではあるまい。


 次の戦に備えるとしよう。


.338ラプア・マグナムを撃ちまくれるって天国かよ!!

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