第十章 1/8
「俺を殺すチャンス……? 何言ってるの、タケマー!?」
泣き顔のチグサの問いに、俺はどこから答えようか迷ってしまい、空を見上げた。
緊張していた。命のやり取りがあるということとは別の意味で。
思い返すまでもなく、こんなことをするのは俺の人生で初めてのことだから。
だが、人がそんな決意をしているというのに、邪魔というものは入るものである。
「タケマサ、ティルミアさんに君は殺させないよ」
そう声がしたのは、チグサ達事務所のメンバーが立っている方角ではなく。そして今や魔王ではなくなった、ただのおばあちゃん子のタカシくんのいる方角でもなく。
それはティルミアの背後、魔王が消し飛ばしてもうなにもない更地の方角からだった。まるで宙から溶け出して来るように、砂塵の中から現れたのは……。
「なっ……。生きてたのか……!? ラインゲール」
風を操る魔法使い。爽やかイケメンのブーメランパンツ野郎(もちろん今は違うが)。
「それはこっちの台詞だけどね。君こそ、死んでた筈じゃなかったかい」
「まあ俺はアリサリネに蘇生してもらった。お前は……魔王に殺されたわけじゃなかったのか」
「生きてて悪かったね。酷いなあ」
俺はチグサのほうを見る。チグサは俺の疑問を理解したらしく、頷いてラインゲールに尋ねた。
「ラインゲール。私の召喚魔法を拒否したのはどうして? 私は事務所のメンバー全員を召喚で救出しようとした。でも応えなかったよね? 私はそれでてっきりあなたが……」
口籠ったチグサに、ラインゲールは爽やかに微笑んだ。
「ちょっと、彼といたもんでね」
ラインゲールは後ろを振り返る。
こちらもいつの間にいたのか、そこには例の真っ白な服の男がいた。
「……レジン……」
「久しぶり。もう会うことも無いだろうと言ったのに意外に会うものだね。とは言えティルミアくんとタケマサくんの対決は見逃せないからね」
それに、とレジンは肩をすくめた。
「これは君たち二人だけの問題じゃないんだ。たくさんの人間が巻き込まれたんだよ。決着を、君たち二人でつけようなんて、そんなことは許されない。だから僕が君たちの代わりに解説してあげることにした。そのほうが、みんなはスムーズに……「当たり前の事実」を認識できるだろうからね」
「当たり前の事実?」
「すなわち「殺人鬼」である彼女は、我々や君たちのような普通の人間とは、異なる存在だという「当たり前の事実」だよ。一見、言葉も通じるし、同じように生活している。だから仲間だと思っているだろう? だが違う。実に全く異なるんだ」
やつの口調に、挑発だと分かっていても俺は珍しく怒りがわいてきた。やつの言葉に、ではない。この肝心な場面でどうして水を差すようなことをするのか、だ。
「帰れ」
言って一歩踏み出そうとしたところで、俺はそれに気づく。
身体が……動かない。
くそ。やられた。
あの時と同じだ。魔法で周りの空気を操られている。ラインゲールのしわざだった。
「ラインゲール。なぜお前はそいつと一緒にいる?」
俺の代わりにメイリが問いただした。ラインゲールは笑った。
「ボス。僕は別に、裏切ったとかって訳じゃない。僕はね、タケマサ君が許せないだけだよ」
「……なんでかあんたは俺を恨んでいるよな」
人の動きを封じておいて言いたい放題とは嫌な性格をしている。
ティルミアも同じ魔法を使われているのか、動こうとしない。口を聞ける筈だが、黙っていた。
「順を追って話そうか」
レジンが咳払いをした。
「まず、ナンジャミの悪魔、という概念を聞いたことがあるかい? ん、どうだ、タケマサくん」
なんだっけ、それ。
聞いたことはあった。あれは誰だったか……。酒を飲んでいたチグサに聞いたのだった。そう思ってチグサに目線を送ると、チグサは少し戸惑った様子を見せてから、口を開いた。
「おとぎ話みたいなものだよね。実体の掴めない魔物で、人がたくさん集まると、どこからともなくそいつの声が聞こえる……っていう。人を惑わすようなことを言って、争いを引き起こす」
そうそう、そうだよ、とレジンは続けた。
「悪魔が誰に化けているのか、探しても絶対に見つからない。それなのに声だけがする。その声は不思議と人を従える力がある……。過去には戦争が幾度も引き起こされたと言う」
僕はその正体を知っているよ。白ずくめの男はゆっくりとそう言った。
「ナンジャミの悪魔とはつまり、民衆のことだ」
俺達の反応を見るように間を開ける。
「民衆の誰か、ではない。顔を隠し集団の中に埋没する時にだけ現れる、民衆の真意。それこそがナンジャミの悪魔の正体さ」
「幸せをもたらさない座敷わらしみたいなやつだな」
俺の発言はスルーされた。
悪魔と言うがね、とレジンは講義を続ける。
「ナンジャミの悪魔というのは、民衆の願いから生まれた化物だ。どんな願いかって、「平和への願い」だね。平和とは何か、わかるかい? タケマ……チグサくんどうだい、答えてみたまえ」
おい、何で俺を無視した。さっきの茶茶入れのせいかよ。意外に心が狭いなレジン。
「平和は、平和でしょ。争いがなく、平穏で、安心して暮らせることでしょ」
「そうだ。安全安心、戦争反対。しごく当然の願い……しかし、なんともおぞましい願いだ」
「おぞましい? なんでおぞましいの?」
「平和を願う者の本音を一言で言えば「死ね」だからだ」
「はぁ? 何言ってんの? 正反対じゃん」
「正反対じゃないのだよ。なぜなら、平和とはさっき君が言った通り、争いがないことだ。言い換えれば自分達に敵意を向ける者がいなくなることだ。それを実現するには普通なら相手との衝突が避けられない。武力であれ話し合いであれそれは衝突だ。この「衝突」とは「平和」に反する。平和を願う者は、衝突を好まない。
平和を願うとはつまり「衝突無く敵が消えれば良い」と思うことなのだよ。自分達はけして傷つくことなく、心を乱されることも命を危うくすることもなく、ただ穏便に「敵が消えて欲しい」……と願うことなのだよ。
相手に犠牲を強いながら、それは自分の目に届かないところで勝手に起きてくれれば良い、そう願う者のことを「平和主義者」と呼ぶのだ」
その願いを一言でいうならば、とレジンは無駄にもったいつける。
「死ね、ということだよ。自分が対決して排除するのではなく、自分の知らないところでいつの間にか勝手に、死ね。なんとも、おぞましい。しかしこれが平和を願う民衆の心の中にある声だ」
チグサが乗せられてムキになっている。
「は、話が極端だよ。平和を願うってのは、誰彼構わず死ね、って思うことじゃないじゃん。そりゃ相手が襲ってきたとかだったら殺すしかないことはあるけど、だからって……」
「つまり、敵だね」
チグサの言葉を遮るレジン。
「そう。誰彼構わず死ね、ではない。敵は死ね、だ。「平穏」は、敵がいなくなって初めて訪れる。敵がいる限り「安心」はできない。敵の死イコール平和だ。では……こんなにも討ち滅ぼしたい「敵」とは魔物だけかい? そんなわけがない。人間の敵もいる。ではそれはどういう人間だい?」
「敵は敵でしょ。山賊とか……攻め込んでくる他の国とか」
「山賊は敵かい。しかし彼らに言わせれば、生活に迫られて働いているだけさ。家族を養うために自分たちの「敵」である街の人間や旅人を倒して日銭を稼いでいる労働者だ。それが国家体制をなせば他国と呼ばれる。何も、「酷い国」だったり「悪の帝国」だから攻め込んでくるわけじゃない。彼らも我々と同じように「平和」が必要で、そのためにもっと人が住める土地が必要だったり、同じ神を信仰する安心感が必要で、それを脅かす我々を脅威に感じて攻め込んでくるのだよ。すなわち」
レジンはぱんと手をあわせた。
「敵とは「意見が違う人間」というだけの意味だ」
チグサがすっかりレジンの思惑にのって反論する。
「い……いやいや、そ、そんなわけないじゃん! 意見違うだけで殺さないよ! 意見があわなきゃ離れればいいし、離れられなくても話し合って解決するんだよ!」
「いい子ぶるなよチグサくん。歴史を見たまえ。大概、話し合ったってまず駄目さ。大体、君は山賊と話し合って解決した例なんて見たことがあるのかい」
「そりゃ山賊だからだよ! 初めから手荒なことしか考えてない人達なんだから、話し合おうなんて思ってないよ!」
チグサのツッコミはもっともだ。だがレジンは笑っていた。
「そうでもないさ。案外彼らも口は聞けるし言葉もわかる。こっちが彼らの要求に従っておとなしく金を出す分には命を助けてくれたりもする。それだって話し合いと言えば話し合いだ。なのに、金を取られて身ぐるみを剥がされたというだけで、君たちは誰もそれを「解決」だと思って納得しようとはしない」
「そ、そりゃそうじゃん!」
「つまり話し合おうとしてないのは君たちも一緒だということだ。彼らの言い分を聞く気がないんだから」
「山賊の言い分って何!?」
「例えば、弱い旅人はどうせ魔物にやられる。だったらその前に持っている金目のものを彼ら山賊に差し出して無駄にならないようにすべきだとかね」
「そんな自分勝手な言い分、聞けるわけないでしょ!」
「そら見たことか。要するにそういうことさ。彼らが話し合おうと思ってないのと同じように、君らも彼らの言い分を聞く気はない。戦争が起きる理由だってだいたい同じさ。国と国とで意見があわない。互いに相手に対して、こう思っている。「そんな自分勝手な言い分、聞けるわけないでしょ!」」
皮肉な顔をしてレジンはチグサの台詞を繰り返した。
「そんなふうに折り合う余地の無いくらいに意見が合わない人間のことを、敵と呼ぶわけだ。そして敵を滅ぼすことが、平和を実現する唯一の手段だ。だからほら、平和を願う者の本音を最も表しているのは「死ね」なのだよ」
そうなると困ったことになる、とレジンは肩をすくめてみせた。
「死ね、だなんて、そんな野蛮なことは誰も言いたくない。だから表面上はそんなことは言わない。だけど、集団になってしまえば話は別だ。一人ひとりの顔が見えなくなれば言える。自分の言葉だとはわからなければ言える。埋没すれば言える。安心して言える。死ね、とね」
最後の死ねと言う台詞の時にだけ俺に目線を移すレジン。
「それがナンジャミの悪魔と呼ばれるものの正体だ。平和を願う民衆の、隠れた本音。死ね。誰かの後ろで隠れながらなら言える、愛すべき平和主義者たちの魂の叫びだ」
ドヤ顔をされた気がしたので、話の腰を折ってみることにする。
「ナンジャミってのは、何じゃみ?」
「さて、しかし、だ。これだけでは話はすまない……」
俺の渾身のギャグでも全く話の腰は折れなかった。というか、ドスルーされた。ティルミアやチグサも目をそらして聞かなかったふりをしているのが辛い。
「うぉっほん。お前、話長いんだよ。そんなことより俺は大事な話を控えているんだ」
「おっと、まだ聞きたまえ。なぜならここから先の話はティルミア君にも関わってくる」
「は? ティルミアのどこが平和主義者なんだ? ティルミアは、「殺す」とは言うが「死ね」とは言わないぞ」
俺の問いにレジンは興味深げな顔をした。
「さすがによく見ているね。そう、彼女は違う。違うから問題なんだ。話を続けるよ」
さてしかし、とレジンは言う。
「一人一人の民衆なら心に秘めているだけのこの願いだが、ナンジャミの悪魔という化け物になると、言うだけで満足なんかしない。敵は本当に死んでくれないと困るんだ。だから……王が必要になる」
「……王? 王って、王様か?」
「そう。民に代わって手を汚す役割を負う者が必要なんだよ。それがこの国では長らく、アルフレッド王だった。あの王は本当に賢い王でね。自らがナンジャミの悪魔には……つまり民衆にはけして逆らえないことをよく理解していた」
賢い王は嫌いなんだよ、とレジンは言った。
「かつて、アルフレッド王は、この国を守るため、ある決断をした。すなわち、用心棒がわりに無法者たちを街に迎え入れるという決断だ。その決断をしたのは王だったが、それは民衆の内なる願いだった。民衆は理解していたんだ。魔物に襲われる日々が平和なわけがない。しかし他国の属国になれば略奪と文化の破壊に晒され、やはりとても平和とは言えない日々がやってくる。もっとも「平和」な選択は、自分たちがならず者と呼んで忌み嫌っていた連中に「かわりに手を汚させる」ことだったのだよ。それを王は理解し、民に代わって実行した」
それなのにだ、とレジンは皮肉をたっぷりこめた顔をした。
「愛すべき民衆は、そんな王を暴君と呼び、自分たちは被害者であるかのように振る舞ったんだからね。下衆という言葉の意味がよくわかる態度だと思わないか」
その言葉はけしてレジンの言うような意味ではないと思うが。
さてしかし、とレジンは急に朗らかな口調になった。
「しかしそんなアルフレッド王に比べてもっと愚かで、もっとナンジャミの悪魔に従順な男が現れた。ほかでもない魔王のことだ。……タカシくん、だったかな? 魔王と呼ばれていた割に、彼のビジョンはまさに民衆の望む「平和」そのものだった。殺人の権利は自分しか持たず、誰にも殺しを許さない、というその姿勢は自分の手を汚したくない平和主義者にとって理想的だ。実際、無血開城に近かったからね。王位を奪う時に兵士や宮廷蘇生師が多少死んだが平和を望む民衆にとっては許容できる犠牲だ。なんとも素晴らしいことに、街に受け入れていたならず者どもも大人しくさせることができる。どんなに横暴に見えても、彼こそが平和主義者たちの……ナンジャミの悪魔の望む存在だった」
「おいタカシ君、褒められてるぞ」
俺が声をかけたのに、魔王は反応しなかった。こっちに興味を持たず空を眺めている。お婆ちゃんとの思い出にふけっているのかも知れない。
ところが、だ、とレジンは俺を指差した。
「タケマサくん。君だよ。君は実に良くなかった。制約魔法を使って民衆から強制的に殺人を奪ったのは良かった。それは一見、ナンジャミの悪魔の意志に沿っているように見える。だが、魔王からすら奪ってしまったのはやり過ぎだ。間違っちゃいけない。民衆が望んでいるのは、誰も死なないことなんかじゃないんだ。いいかい。「敵は死ね」なんだよ。敵を殺してくれる存在をこそ、民衆は望んでいるんだよ」
そこのところが決定的にわかっていなかったのだよ君は、と俺を馬鹿にしたように見るレジン。
「君はナンジャミの悪魔に従うふりをした偽物だ。巧妙に、民衆を騙した。初めはみんな騙されて、タケマサくんが真の平和を実現したと思う者もいた。だが、そんなものは真っ赤な嘘だ。だから僕は、その嘘をさっさと暴くために、彼らを送り込んだのだよ」
彼ら。マンドラゴラの少女や、食人鬼か。
「実際、魔王のときよりも混乱が訪れた。タケマサ君がもたらしたものは平和なんかじゃないと民にも明らかになった。僕の狙いは、民衆がタケマサを殺し、魔王が復活してくれることだったんだがね。計算違いが2つ起きた」
レジンはまずタカシを見た。
「まず魔王がタケマサにやられたショックで心を入れ替えてしまい、本当の魔王になってしまったことだ。街を半分吹き飛ばし、民衆の平和を叩き壊してしまった」
そしてもう一つは、とレジンは、ずっと睨んだまま黙っているティルミアを指差した。
「タケマサくんを殺したのが君だったことだ。ティルミアくん。君は僕の予想さえ裏切って……アルフレッド、魔王、そしてタケマサに代わり、ナンジャミの悪魔に魅入られてしまった」
……なるほどな。なぜレジンが長々と、ナンジャミの悪魔とかいう概念の話をしたのか、わかり始めてきた。
「今、君は「殺人姫」と呼ばれて民衆から支持されているそうだね」
そう。
あの食人鬼を倒して「殺人でみんなを笑顔にした」日、ティルミアは「民衆に代わって、勝手に、迷惑なやつを排除してくれる存在」になった。
民衆の隠れた意志……ナンジャミの悪魔の希望通りに動く存在に。
「君は、民衆の支持を得たかに見える。だが勘違いしちゃいけない。民衆の誰もが、君を支持し続ける覚悟なんか持っちゃいない。君を表立って支持する動きがあるのは、今がまだ「平和」じゃないからだ。「平和」になれば、ナンジャミの悪魔は君を使い捨てる。民衆はあっさりと殺人鬼という存在に眉をひそめるようになり、君は元の嫌われ者に戻ることになる」
それは見てられないからね、忠告しに来たんだよ、とレジンは言った。
それを言いに来たというのは事実なのだろうが、こいつの意図はたぶん逆だ。
レジンの言う通り、ティルミアは、民衆に代わって悪を退治する正義の味方に祭り上げられかけている。それが、この男にとっては都合が悪いのだ。なぜならティルミアはこいつに従いなどしないだろうからだ。
だからわざわざ言いに来た。民衆はお前の味方なんかじゃないぞ、と。
「ティルミアくん、そして君らメイリの事務所の連中に言っておこう。殺人鬼という存在はけして民衆に支持されたりなどしない。殺人鬼は普通の人間とは相容れない存在だ。もう少しわかりやすく言おうか」
レジンは、事務所のメンバーに浸透させるように、ゆっくりと言った。
「「殺人鬼なんかと仲間になれるわけがない」んだ。……それが君らが認識すべき」
当たり前の事実だよ。
「それを認識していないと、皆もティルミアくんも結局不幸になるからね。これは僕の単なる親切だよ」
そうレジンは締めくくった。そしてラインゲールが口を開く。
「聞いただろう。ティルミアさん。僕と行こう。……僕なら、皆やタケマサと違って、君のありのままを受け入れることができる。殺人鬼という生き方が普通の人間と相容れないなら、普通の人間なんか相手にしなければいい。身勝手な平和主義者どものくだらない価値観なんかとぶつかって苦しむ必要なんかないし、やつらに代わって手を汚してあげる必要だって無いんだ」
ラインゲールは、俺を睨みつけた。
「タケマサ。君ほど勝手な男はいない。ティルミアさんが類まれな戦闘能力を持っているのを良いことに彼女に殺人という行為の重荷を一人で負わせ続け、そのくせ人を殺すことは悪だとティルミアさんを詰り責め続けてきた。その挙げ句が殺人罪だ。君は愚かにも、殺人そのものを禁じた。だが君は間違っていた。レジンさんが説明した通り、誰もそんなもの望んじゃいない。だからティルミアさんは君を殺さなきゃならなくなったんだ。君はどこまで身勝手なんだ……」
俺を指差す。
「君の間違いを正すために、これ以上彼女の手を汚させるな。だったら僕が、代わりに君を殺す」
そう言ってラインゲールは俺を睨みつけたのだった。




