5.ティーカップ
城の中に入った俺は大きな部屋に通された。煌びやかな装飾の家具が置かれている。
客間なのだろうか。あまりに豪華すぎて落ち着かない。メイドに案内され、席に着く。
シェリルは向かい側に座った。
今この部屋にいるのは俺とシェリルと飲み物を淹れているメイドの3人だけだ。
「失礼いたします」
メイドがティーカップを置き、そのまま入口の方へと向かい出て行く。
「どうしたナルカミ。そわそわして落ち着きがないぞ?」
「え? いやー、なんかこういった部屋が追いつかなくて」
「そうか。そういえばイオリも同じことを言っていたな」
シェリルはティーカップに口を付けている。見ていて絵になるような仕草だった。
窓から差し込む夕日が彼女の綺麗な髪を照らしている。
「なぁ、シェリル。救世主ってあんたと姉貴以外まだいるのか?」
「ああ、後2人いる。そもそも救世主とは王国に古くから伝わる秘宝『セフィラ』に選ばれた者だけだ。
この『セフィラ』とは『生命の木』から実る10個の宝石のことでな、召喚の儀によって呼ばれる。
救世主に選ばれるのは5人。君の姉君を含めて既に4人の救世主が召喚されている」
「へ? 選ばれるのは5人? あれ、だってその『セフィラ』って宝石は10個あるんだろ? なら10人じゃないの?」
「――――。君がイオリの弟君だから話すが、無いのだ」
今なんて言った? 無い? 10の内の5つが?
「伝承では元々10あったのだそうだが、5人の救世主が現れた時、既に残りの5つが無くなっていたそうだ」
なんだそりゃ?
「まぁ、当時の戦時中に紛失したのだろうと思われていた。だが、一つ腑に落ちないことがあってな。
『セフィラ』は『生命の木』からもぎ取ると、ある一定の時間を過ぎると色あせて唯の石ころになる。
そして『生命の木』に新たな『セフィラ』が実るのだ」
「なら、残りの5つの『セフィラ』が新しく実るんじゃないの? あれ? 実って……ない?」
「ああ、1000年も前から実っていないらしい。選ばれた者の所有する『セフィラ』は所有者が死なない限り、新しい『セフィラ』は実らない。だが、1000年も全く実らないのはおかしい」
ごくり……。
「とまぁ、そういう訳だから救世主は5人なのだ。残りは後一人」
え、ちょっと待って。その流れからするともしかして――。
もしかしちゃったりする!? いやー、困るなー。俺が救世主だなんて!
「そっかそっかー、俺も召喚されちゃったもんなー。俺も救世主かー。困っっちゃうなー、アハハ」
キョトンとするシェリル。そして軽く吹き出した。
あれ?
「すまんすまん。言っていなかったが『セフィラ』に選ばれるのは全て女性なのだ。だから、男である君が選ばれることは先ずないんだ」
うぉい!!
やっちゃったじゃん! ドヤ顔で勘違いしちゃったよ! 痛い奴だと思われてるよ!
恥ずかしすぎるっ!
そういうことは早く言ってくださいよー。ってことは、本当に俺は姉貴のおまけかー。
「どうした。ナルカミ?」
「なんでもないです……。気にしないでください」
頭を抱えながら蹲る。
「まぁ、激しく勘違いして悶えるのはわからなくもないがな」
わかっているなら聞かないで!
放っておいて! 俺のピュアハート抉らないでっ!
――コンッコンッ!
「失礼します。謁見の準備ができました」
先ほどのメイドが現れた。
「さて、行こうかナルカミ。司祭様のところへ」
シェリルは席を立ち、扉の方へと向かって行く。
俺は一口も付けていない、冷め切ったティーカップの中身を一気飲みする。
うん、冷めても美味しい!
そして席から立ち上がり、シェリルの後を付いていった。




