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7/7「ゴジラ対エビラ対モスラ 南海の大決戦」:「ゴジラ」とはなにものか

「怪獣大戦争」で本格的サスペンスとして新生した「ゴジラシリーズ」は、エンタメの王道をひた走り始めた。

浪花節に弱い金庫破り、たまたま巻き込まれただけの大学生二人組、遭難した兄を助けに田舎からやってきた破天荒な少年。彼らが巻き込まれるのは、なんとインファント島にまつわる核兵器の密造だ。

未開の地における冒険、巻き込まれる陰謀、そして怪獣たちを利用して悪を倒す! 

前作同様意外なところで伏線が活きてきたり、手に入れた道具で窮地を脱したりする様子は見ていて非常に痛快だ。シナリオも、カミナリ雲が分断された仲間たちの一方には災いし、一方には幸いするという展開など、作りこみの細かさを感じられる部分が多い。


しかしそのシナリオとは一切関係ないところで、さらりと大学生の一人から発せられた言葉がある。

今回、本編以上にこの一言が僕の記憶に残った。

今回はエンタメ映画として極めて優れている「南海の大決戦」の感想を書くわけではなく、この印象に残った一言を掘り下げてみようと思う。



密造組織に見つかり追い詰められた一行は、ゴジラが眠る岩山に立てこもっている。シラミ潰しに付近を捜索する敵を見て、見つかるのも時間の問題だと一行は不安がる。どうすればいい。対策を考えていた時、彼は仲間に、驚きの提案をする。ゴジラを目覚めさせようと言うのだ。

問題は、「ゴジラだって敵じゃないか、なにを言っている」と反対された彼が、リーダー格の金庫破りに反論した言葉だ。


「いいや、ゴジラは中立だ。ゴジラの力を借りよう」


僕はこの一言に心底驚いた。何故か?

これが、「ゴジラが存在する世界」に生きる人々の「ゴジラ」観が初めて示された瞬間だったからだ。



ゴジラシリーズにおいて、今までその世界において「ゴジラ」という怪獣がどういう存在か直接的な言葉で描かれたことはなかった。

しかし一貫して彼は、無軌道な暴力として描かれてきた。彼がいかに人間的な行動を取ろうともその本質は巨体から繰り出される暴力であり、そのような「佇まい」を感じさせる描写は第一作「ゴジラ」から常に描かれてきた。


その「佇まい」に対するリアクションとしてゴジラがどういう存在であるのか表現されてきた。


今作「南海の大決戦」で示されたゴジラの在り方は、「怪獣大戦争」以前のゴジラとはまた異なるゴジラ観だ。

まずは、過去ゴジラがどのように描かれてきたのかを考えてみたい。


まずゴジラは、「キングコング対ゴジラ」に至るまで一貫して文明の敵対者として描かれる。その原因が人類にあるということに自覚的な人間と無自覚的な人間が描かれているが、どちらにせよゴジラの「佇まい」には関係がない。

ゴジラはその意志の有無とは無関係に、都市を破壊する存在として描かれた。彼はそれ以上の認識はされなかった。


「モスラ対ゴジラ」も、この流れを汲んでいると思う。しかしこの映画が公開された60年代=デタントの時代がゴジラに対する扱われ方を変化させる。

「三大怪獣 地球最後の決戦」で、ゴジラは対話可能な存在として描かれた。

この頃から、人類はゴジラに対して一種の憐れみを感じている。ゴジラに対して、隣人に有する親しみを覚えているがゆえにただ存在するだけで対峙されるゴジラに対してかわいそうだと思うのだ。

「怪獣大戦争」で置いていかれるラドンとゴジラをかわいそうと思うことからもうなずける。怪獣との恒常的戦争状態に突入した「ゴジラの逆襲」からは想像もできない時代だ。


ここに来ると、ゴジラは人類の敵という見方はされていないとうかがえる。自然界に存在する超常的存在、いわば神話の竜のような存在として畏怖されるのだと考えられる。

しかしこれはあくまで推測の域に過ぎなかった。


「南海の大決戦」では、ついに「ゴジラは中立だ」という言い方がされてしまう。この世界の住民にとって、もはや敵対する人間の方が敵対するゴジラより怖くないのだ。


ゴジラの存在が、完全に日常となってしまった世界。その世界における「ゴジラ」に対する認識が示されたことが、「ゴジラシリーズ」内における今作の最大の意義だろう。



もちろん、そのような意義とは無関係に「南海の大決戦」は面白いのだが。

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