卒業パーティ(3)
会場内には華やかな音楽が響き渡り、パーティはまさに盛り上がりの最中だった。煌びやかなシャンデリアの光がドレスや正装に反射してキラキラと輝き、そこに集まる若者たちはそれぞれ思い思いの時間を過ごしている。セドリックたちもまた、4人それぞれが自分たちのペースでこの特別な夜を楽しんでいた。
セドリックは、コンテストの受賞者たちと集まって談笑していた。彼の受賞はすでに周知の事実となっており、その功績を称える言葉が次々と飛び交う。話の中心にいる彼は、自然と堂々とした振る舞いを見せていたが、その背後にいるエレノアのことを気にしている様子がちらりと見える瞬間もあった。
一方で、ノエルは一人で人混みの中におり、どうにも心穏やかではない様子だ。「最後の機会」とばかりに思いを伝えようとする令息たちが次々と彼女に近づき、彼女はそれを適度に躱しながら会場内を逃げ回っている。その顔にはやや疲労の色が見えていた。
そんな彼女の様子を見て、キャサリンは小さくため息をついた。
「ノエルも大変ね。ああいう場面、どうしても逃げられないんだから」
エレノアもノエルを心配そうに見つめながら頷いた。
「確かに、少しお疲れのようですね。何か飲み物を持っていって差し上げるのはどうかしら?」
「いいわね。エレノアさん、ちょうど私も少し喉が渇いたところだし、一緒に行きましょう」
キャサリンが楽しげに提案すると、二人は連れ立ってドリンクカウンターへ向かった。
カウンターに向かう途中、キャサリンがウキウキとした様子でエレノアに話しかけた。
「ねえ、エレノアさん。セドリックお兄様と本当に結婚されるのね。式はいつになりますの?私、本当に楽しみにしていますわ!」
エレノアは一瞬驚いた表情を見せたものの、すぐに柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます、キャサリンさん。まだ具体的に決まったわけではないですが、卒業式のあと、私の両親との顔合わせを経てから、両家で話し合って決めようと思っていますの」
キャサリンはきょとんとした顔をする。
「あら、意外に遅いのね!お兄様のことだから、卒業したらすぐにでも式を挙げると思っていましたわ」
「私側の家の事情で、私の実家への挨拶を遅らせてもらっているの。今は、詳しく言えないのだけども」
キャサリンは「そうなのですね〜」と、これ以上は深く詮索せず、少し弾んだ声で続けた。
「それでね、お兄様と結婚されたら、もっと公爵家に遊びに行ってもいいでしょう?お兄様もエレノアさんもいらっしゃるんですもの、これからは家に遊びに行くのがもっと楽しみになりそう!」
「もちろんです。キャサリン様が遊びにいらっしゃるのを、心よりお待ちしております」
キャサリンはふと思い立ったように立ち止まり、エレノアをまっすぐ見つめた。
「ねえ、エレノアさん。もしよければ……私、エレノアさんのことを『お姉様』って呼んでもいい?」
その言葉にエレノアの目が一瞬丸くなり、すぐに優しい笑みを浮かべて頷いた。
「もちろんですわ。キャサリンさんがそう呼びたいと思うのでしたら、私も嬉しいです」
「やった!ありがとう、お姉様!」
キャサリンが満面の笑みを浮かべる姿に、エレノアも自然と微笑み返した。
「あの、よかったら私もセドリックみたいに、キャサリンさんのこと、呼び捨てにしてもいいかしら?」
「もちろんよ!…なんだか、本当の姉妹みたいで、嬉しいですわ」
キャサリンは照れ笑いを浮かべながら承諾する。エレノアもしばらくの間、温かい気持ちに包まれながらその表情を見つめた。
キャサリンのこういうところ、人たらしですよね。才能です。




