カフェラウンジ(3)
「ということは、ヴァニエルが言っていた『王女からの求婚』なんて、やっぱり嘘だったってことよね!ノエルがあんな奴に求婚とか…するわけないもの!」
キャサリンが勢いよくそう言い切ると、机に肘を突いていたセドリックが眉を顰めた。
「そうとも限らない。あいつが見せびらかしていた手紙は、本物に見えた」
「本物?」
キャサリンが驚いたように声を上げる。
セドリックは慎重な口調で続ける。
「王家からの手紙を偽造するのは重罪だ。そんなリスクを負ってまで、あそこまで堂々と学園中に見せびらかすとは思えない。それに、手紙に残されていた封印の魔力は、確かに王室のもので間違いないように感じた」
「……そう、なの?」
キャサリンが困惑したようにセドリックを見つめる。
その時、ノエルが静かに口を開いた。
「ヴァニエルに私が求婚するなど、いろいろな意味で、絶対にあり得ません」
その言葉には一切の迷いがなく、キャサリンもセドリックも一瞬で黙り込んだ。ノエルの冷静な表情からは、一切の嘘やためらいが感じられない。
ノエルは一度エレノアに視線を向けたが、すぐに口元に手を添えて言葉を続けた。
「ただ、セドリックの言う通り、手紙自体はおそらく本物でしょう」
ノエルは言葉を選びながら慎重に続けた。
「王室からヴァニエルに対して、何かしらの支援があったのは確かです。でも、その内容が彼に誤解を与える形になり、彼の思い違いを助長してしまったのだと思います」
キャサリンはノエルの話を聞きながら、少し考え込むような表情をしていたが、やがて顔を上げると拳を握りしめて力強く言った。
「わかったわ!またヴァニエルがノエルやエレノアに付きまとおうとしたら、私が守るから!」
その頼もしい宣言に、ノエルは少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。
「ありがとう、キャサリン。あなたがそう言ってくれるだけで心強いです」
キャサリンは満足げに胸を張ると、セドリックが思わず苦笑した。エレノアも思わずふっと微笑む。いつの間にか張り詰めていた空気は和らぎ、テーブルの上には穏やかな雰囲気が広がっていた。
その後も和やかな会話が続き、ラウンジの個室は温かい空気に包まれていた。ノエルとキャサリン、セドリック、エレノアの4人は、時折笑い声を響かせながら昼食を楽しんだ。静かな空気がラウンジの個室を包み込む中、4人の絆はさらに深まった。




