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――なんか、噂が静まらない

よっぽど、怒らせたかな。



冷たいコンクリートに横になって、両腕を頭の下に入れて枕代わりにして仰向けに寝転がる。

十二月も中旬に差し掛かり、日に日に下がっていく気温と比例するように落ちていく私の気持ち。

反比例するように、ヒートアップしている噂(加奈子談


一階中心にヒートアップしているだけだから、五階にいる私の前で何か言われるとか何かされるとかそういうのが少ないだけましだと思う。


それでも、出社・帰社の時に集まる視線や、囁かれるこそこそ話。

一番きついのが、事務課に書類の提出とかで行かなきゃ行けない時。

あぁぁ、終わってくれないかなぁ、こんな噂。




既に、哲と飲みに行った日から、三週間は経っているのに。

まぁ、その間、柿沼に会わなかっただけ不幸中の幸いだけど。





今日も綺麗な青空を眺められるこの場所は、最近私の逃げ込み場になっています。

いつもの定位置の屋上。

の、物置。

の、屋根。



以前、哲が登っていたのは、物置の階段についている屋根です。

そこが、眼下に見えます。ここまで登ることができた、私に拍手。パンツスーツばんざい。

ごろり、と仰向けに寝そべる。


囁かれるこそこそ話しに、正直精神的に参ってます。


同期といるところを時々見るのに、哲に話がいってないところを見ると、周りは気を遣ってるのだろうか。

もしくは柿沼の目が怖くて、当人である哲に話さないだけなのか。

まぁ、もともと女性社員中心に噂されてるだけだから(加奈子談)、男性社員にはあまり広がってないのかな。

なんにせよ、私にとってはばれてないのがありがたい。


それでも私の態度がおかしいと思えるらしくて、昼休憩の時に問いただされることが多くなってきました。




故に。


私は、逃げる。






「あら、美咲いないの?」

下から、加奈子の声が聞こえる。

早めに昼休憩に出てきたから。

少し屋上から顔を出して、下を覗く。


加奈子がちらりと顔を上げてくれて。

目が合った途端、拝むように謝ってみた。


小さく溜息をつく声とともに、ぴらぴらと手を振られる。

逃げ回る宣言をしてあるから、加奈子はそっとしておいてくれて。

本当にありがたい。



その時屋上のドアが開いて、哲の声が聞こえてきた。

「佐和先輩、美咲います?」

「あら瑞貴くん。美咲? いないわよ」

「そうですか……」



そこで、私のとっておきアイテムの登場。



みーみーせーん~♪



みんなのアイドル青いタヌキ……じゃなかった猫型ロボットもまっさおな、チープな代物。

ギュッと耳の中に突っ込む。


途端、聴覚は役に立たなくなる。


そのまま空を見上げて。

綺麗な綺麗な青い空。


ビルが高いだけあって、ちょっと風が強いのが玉にキズ――


ぎゅっと、カーディガンの前をかき合わせた。


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