3
二基あるうちの右側のエレベーターが丁度上から三階に降りてきているのをみて、真崎はボタンを押してドアを開ける。
ポンという軽い音と共に、ドアが開くと――
「あれ……?」
そこには、哲と斉藤さん、間宮さんの姿。
呟きは、哲。
「あ……」
もう一つは、久我部長。
哲が、久我部長が、何も言い出さない前に声を掛ける。
「瑞貴くん、丁度よかった。取引先から伝言があるんだけど、今いい?」
冷静に、言葉を紡ぐ。
おかしくない、声音で。おかしくない、タイミングで。
哲は一瞬かたまった表情を戻すと、頷いてエレベーターを降りる。
そのまま真崎に代わってエレベーターのドアを押さえて、三人をエレベーターに乗せる。
私はその前でにっこりと笑って、頭を下げた。
「久我部長、水沢さん、これからどうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします」
久我部長の、声。
「こちらこそ、今度はもう少しゆっくりお話できるように早めにご連絡しますね。久我さん」
水沢さんの、満面の笑み。
そのまま、ドアは閉まった。
一瞬の、静寂。
「――美咲、今のって……」
「哲、今大丈夫?」
哲の横をすり抜けてエレベーターのボタンを押す。
上に昇る、ボタン。
哲は首の後ろを右手で触りながら、私を見る。
「あぁ、会議の途中休憩。ラウンジにでも行こうかって……」
「屋上いい?」
「――あぁ」
開いたエレベーターに乗り込んで、無言で屋上へと向かう。
ドアを開けると、冷たい風が身体を包む。
いつもの定位置に歩きながら、ふぅ、と溜息をつく。
緊張が、やっと解けた。
物置の壁に寄りかかって、哲を見る。
なんとなく気まずそうな表情。
「あのさ、今の。分かったよね?」
私の言葉に、小さく頷く。
「あの人、美咲の親父さんだよな?」




