14スイレンとの関係
「スイレン様ぁー。ダリアです!おはようございます!」
ダリア嬢はそういうと自身の腕をスイレン様に絡ませ、豊満な胸をその腕に押し付けた。
それは、婚約者である私が隣にいるのに、である。
朝、スイレン様とたまたま会い、途中まで一緒に教室に行こうとしていた時のことだった。
ダリア嬢は、急にこちらへ寄ってきてこの奇行に至ったのだった。
後からイソトマも来て、ダリア嬢を止めるかと思ったが、
「スイレン様。おはようございます!ダリア!ずるいじゃないあなただけ!」
……類は友を呼ぶって本当なんですね。
「婚約者がいる方の体を触るのはやめた方が良いですわよ。しかも、婚約者が隣にいるというのに」
という私の指摘に、
「むうぅ。嫉妬ですか?醜いですよ?」
「ほんとだよねー。お義姉様、ダリアは挨拶をしただけではないですか」
2人は自分たちに非はないと思っているような口ぶりで言葉を返した
もちろん婚約者がいる人の体を触るなどご法度で、それは常識だ。
……常識を覚えさせていないの?この2人に。非常識すぎやしませんか?
私は驚きを通りこし、呆れた。
「まあアネモネ。そう怒るなよ。俺はそんなに気にしてないから」
そういう問題ではないのですのよ!!!――と叫びそうになるのを抑えてスイレン様の耳に口を近づけ、魔法の言葉を言った。
「そうですか……では王妃様に伝えておきますね。婚約者がいるのにも関わらず、公衆の面前でダリア嬢のこの行動を許した、と」
ビクッ――とスイレン様が反応した。
すると、
「ダ……ダリア嬢、僕も婚約者がいる身なので、やめてもらえるか」
とダリア嬢にやめるよう言った。
ダリア嬢は、ぷくーと口を膨らませ、少々不満げながらも、スイレン様から離れた。
そのダリア嬢にイソトマが耳打ちをすると
「では、スイレン様。ごきげんよう」
「スイレン様!良かったらお昼ごはんでも一緒に食べましょうね!」
2人は去っていった。
嵐のように去っていくとはこの2人につくられた言葉のようね。
はあ―とため息をつくと、
「ア……アネモネ?ちゃんとやめるよう言ったから、な?母様に言いつけるのはやめてくれ」
スイレン様はかなりのマザコンだ。母様のことが世界一大好きで大切だ。と真剣な顔をして私に話してくるくらいに。
王妃様は、嬉しそうにしているが、同時に自立できないかもしれない、と心配もしている。
そんな婚約者よりも大好きで大切な王妃様に怒られたくはないのか、なにかしでかした時こう言うといつもなおし、ビクビクしながら、母に言うのはやめてくれと頼んでくる。こんな方法を使って脅すのは嫌だが、帝国の国民の前で皇太子が失言をするのは困る。即位したときに国民の支持がなかったらやっていけないですし。
スイレン様とは婚約者になって今年で9年目で、問題あるが恋仲というわけではない。どちらかというと友人に近い関係だ。スイレン様とはキスどころか必要なとき以外には手をつないだりもしたことがないが、うまくごまかしているためそのような関係だと周りにばれていない。
問題を先送りするのも嫌だが、こればかりは2人の気持ちが何よりも大切だと思っている。今からすぐに愛し合え!と言われても、無理ですしね。
私がダリア嬢やご令嬢方にくぎを刺すのはあくまで婚約者としての義務のようなものだと思っている。
が、それが気にくわないのか、私のことを敵視している方もいますけど。
それはしょうがないと割り切っている。
そんなことを考えていた私は、朝礼開始の時間が迫っていることに気づき、急ぎ目でスイレン様と教室に向かった。
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