Sランク昇格試験試験官4
試験用の魔物を閉じ込めた檻を見ながら「よくこんなものを捕まえようと思ったな」と呟いた。こんなものを捕らえるくらいならば、直接ダンジョンに連れて行った方が早いと思うのは私だけではないだろう。
「単純な話ですよ。以前、そうしていた際に試験官を不意打ちで殺した受験者がいたんです」
受験者に殺されるくらいならば、試験官の腕も大したことがなかったのだろうな。いや、SランクやSSランクでも相手との相性が悪い、相手との人数差、体調などで勝てないこともあるか。Sランクになる者なんて、人口の中でもそうはいない。
「その結果、なるべく無傷で強い魔物を捕まえてくるとかいう意味わからない任務が入り、ただでさえそれなりに忙しい僕たちが試験官としてこうやって引っ張り出されることになりました。一応、受験者と我々の間には結界も張られます」
ああ、そういった事情で聖悟が引っ張り出されているのか。
高ランクハンターには少しばかり問題のある性格をした者もいるからな。話しやすい聖悟は頼みやすい部類に入っているのだろう。
そこまではいいが、無傷でそれなりの魔物を捕まえてくるとかいう任務までその多くを聖悟が担っているならば少しばかり文句をつける必要はあるぞ。
「殺人事件の後、試験官はそのランク以上のハンターが務めることになりました。しかし……やりたがる人は少ないんです。ダンジョンで強い魔物を倒した方がお金になりますし」
倒す魔物によっては一体で数百万から数千万、取れる素材によっては億に跳ね上がることだってある。
それを思えば、そうだろうな。
「とはいえ、試験官が特定の人物に集中するのも良くないですからね。僕の前にやっていた数名は金で基礎点を融通していたという噂がありますし」
聖悟もそうしてくれないかと声をかけられたという。
今回、私に声をかけてくる人物はいなかった。買収しなければ受からないようなはハンターなどすぐに死ぬから昇格しない方が良いと思うのだが。
「そんなことをされてもすぐ死ぬだけだと思ったので断りましたが」
私でもそうする。
「そもそも、Sランク以上のハンターというのは買収できるものなのか? 普通の人間より金のある者の方が多いだろうに」
「いるでしょう? ギャンブラーと大喰らいが」
「ああ……なるほどな」
ギャンブラー、大喰らいと称されるハンターを思い出して苦笑する。確かに彼等ならば少しでも金がもらえるならば話に乗るかもしれない。とはいえ、それでも実技で落としているらしいが。
「弱いから筆記でかさ増ししたところで同じなのだろうな」
それにしても、あのギャンブラーはまだ生きていたのだな。もっと早く死ぬと思っていたが。
あの男、生活費を競馬にオールインしたり、ラスベガスでカジノにハマり、身ぐるみをはがされたり、安いアパートの家賃を滞納して追い出されたりしていたからな。
私が知っているだけでそれだ。
いや、そもそもあの男は賭け麻雀で大負けした結果、闇金で借金をしたことをきっかけにハンターになったのだったな……。その結果、SSランクまで上がっているのだから生存能力は高いのかもしれん。
「準備が終わりました。これ以降、ハンター協会職員は撤収し、合否は全てドラクル様の判断に委ねることとなります」
篝の言葉に私は頷き、協会職員が全員いなくなると、扉から受験者が現れた。
私は注目を集めるように手を叩く。
「今より実技試験の説明を行う」
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
○篝啓一
ハンター協会のぼちぼちいい役職にいる人。元Aランクハンター。
フェリクスにはぼちぼちお世話になっていることもあり、たまに依頼をしている。
ハンターたちの横暴な要求や、やらかしへの対応も行っており、結構苦労している。




