Sランク昇格試験試験官3
「あれですよ。往生くんに嫌がらせをしていた人」
「性格は悪そうだったが、悲鳴だけはいい声だったな」
「言っていることが魔王なのですが」
元魔王だからな。あんなもの、なるべきではないとは思うが。
いや、それにしても本当にいい声だった。人権等考えぬ時代であれば、捕まえて閉じ込めて気紛れに拷問などを楽しんだかもしれぬ。管理など、他の者に任せればよいしな。
女を追いかけて、数名の男が「お嬢様!!」と叫んで走って行ったが、あれは護衛か? 役に立たないようならクビにした方がよいぞ。そもそも、護衛ならば私のところに突撃する前に止めてやれ。何人いても、お前たちでは私に勝てんだろうが。
「実技試験は昼からか……。内容は決まっているし、暇だな」
私自身が戦うわけではないので気楽だ。自分で戦うのは気を遣うからな。殺してしまっては何にもならんし。
「今は学園で実技の講師もしておられるのでしたか。僕もその時代に生まれたかったものです」
「月に一度だがな」
そんな短期間でどうするのか、と勤め始めた時に聞いたが、学園長曰く「魔王であった存在と出会い、戦い、教え、導かれることは生徒たちの財産となる」ということらしい。そんなに大層なことを教えたことは一度もないのだが……往生太郎のようなヤツも出てくるから面白い。最近だと、小娘もなかなかによい剣士になってきた。今年は学年としては出会うはずだったタイミングだが……まぁ、おそらく私の受け持ちからは外れるだろうな。
「時折、私も驚くような存在に出会ったりもするのでな。教師というのも少しは面白いものだと思っている」
「それは、プロに来てくれるのを楽しみにしています」
それは……ならないやつもいると思うが。
強いだけが面白い存在ではないし。
「そうだな……清明から預かっている小娘など、もしかしたら卒業後はここに来るかもしれん」
「清明……安倍様ですか。京都では大活躍だったとか」
そのあと、我が家のインターホンを連打し、オートマタに説教をされ、私の家の酒を飲み漁って返って行った迷惑男でもあるが。
あの男、どうしてあんなに面倒くさく、厄介で、私に迷惑をかけるのか。たまに本当に殺そうか迷う時がある。さすがに私も本気であれと争えばかなりの痛手を負うことになると理解しているからやらないが、あのジジイがもう少し弱ければ何度か殺していただろうな。本当に死ぬかはわからんが。
「……どうして安倍清明から子どもを預かっているんです? 眷属ですか? この僕を差し置いて眷属にしようとなさっているのですか!?」
「いや、眷属などジークだけで十分だ。あれは才能を見込んで矯正と教育をしている」
そういえば、聖悟はここ数年ずっと私の眷属になりたがっているが、何故だ? こんなもの、何もいいことはないぞ。長命だというのは利点ではない。それに、眷属なんぞになるよりは、普通の人間として生き、老いて死ぬ方がよほど幸せに決まっているではないか。
ジークはまぁ……姉が心配であったから、私に感謝している、などと言っているが、
普通は眷属にされた人間など、相手を強く憎むものだぞ。
「……いい加減に諦めろ。あんなもの、いいことなど本当にない。体質も変わるし、感覚も変わっていく。今でも十二分に強いのだ。それで満足せよ」
吸血鬼など、存外弱点も多いものだしな。私にはあまり関係ないが。
「まだ諦めませんよ。僕は必ず、あなたの片腕になってみせます!」
聖悟はいったい、私が何に見えているのだ。そんなに輝かしく、美しいものではない。どちらかといえば、歴史的にヴィランだぞ。私は。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
聖悟「強いものは、いつだって格好いいものでしょう?」
ある意味無邪気。それゆえに異常。




