Sランク昇格試験試験官1
依頼を完遂するために、昨今の試験の変更点や試験に挑むハンターの確認をしながら待ち合わせ相手を待つ。
……もうこの書類の時点で約一名以外は落とすべきであると思うのだが。
「これが太郎の試験の時にもいたという男か……」
もう、顔の時点で聖悟の方が良いと思うがあいつは顔を鎧で隠しているしな……。それにしても、そこまで格好いいか? これならば我が息子の方が良いと思うが。
まぁ、そのあたりは私が考えることでもないか。人には好みというものがあるしな。
そんなことを考えていると、聖悟が小走りでやってきた。
「ドラクルさん。この度は本当にありがとうございます」
「約束は違えるなよ」
「いえ、さすがに支配型ダンジョンにああいった調整までしてくださったドラクルさんとの約束を違える人間はいないですよ。いたら流石に僕もちょっと身の振り方を考えます」
そう言って周囲を見回す聖悟に数名が顔を青くしていた。
ああ、コイツは「やる」と言えば「やる」からな。少しばかり甘くみられることも多い三谷聖悟だが、この国でも数少ないSSランクハンターだ。普段、甘いことばかり言っているが実力はその辺で偉そうにしている多くよりも上だ。聖悟が本当に「お前たちの依頼は受けない」と言ったなら、打撃を受けるのはこの国の政府だ。それこそ、ハンター協会の建て直し云々ではすまないだろう。
……聖悟の場合、私に頼んで魔王から依頼を振ってもらえば生活には困らないと考えているのもあるだろう。実際、太郎という前例もあるわけだからな。
「そもそも、ドラクルさんに舐めたこと言うようなら、どんな有権者でも大体黙らせる手は持っていますので」
本当に持っていそうなのが聖悟のちょっと引くところだ。
ここまで懐かれ得ることをした覚えはないのだがな。精々、数か月鍛錬を見てやったくらいだ。
「正直、往生くんが羨ましいです。ドラクルさんの裏の家に住めるなんて」
「お前は太郎と違って周囲と上手くやっているし、要らん世話にしかならんだろう」
いい大人なのだから、そこはちゃんとしておけ。太郎にもそうさせたい。まぁ、今は第六天の無茶ぶりに付き合っているので、一年ほどすれば成長するだろう。
そんな話をしながら、ハンター協会の責任者の元に行くと、あの支配型ダンジョンの件で世話になった男だった。
「あの鍛錬用ダンジョン依頼ですね、ドラクル様」
「そうだな。意外に盛況なようで何よりだ」
「まぁ、あそこの単独撃破をAランク試験受験条件にしておりますしね」
そういえば、そんなことを言っていたな。私は適当に不労所得が入ればそれでいいので、今はそんなに関わっていないが。
エネルギー不足なども出ていないことを思うと、成功している者だけではないだろうな。
「いやぁ、結構な数が篩にかけられて楽になったものです」
「出てきたチャレンジャーはちょっと磯臭くなって機嫌悪そうですけどね。かく言う僕もいきなりで少し大変な目に遭いました」
「その割には文句を言いに来なかったな」
「ドラクルさんからの試練ですので」
そ、そうか。
試練ではなく、『私と同じ目に遭わせてやりたい』という私怨なのだが……。今更調整するのも面倒だからやらんが、今度同じようなダンジョンと出会う機会があればもう少し考えてダンジョンクラフトを行うか。
「試験会場に案内します」
責任者の後ろをついていくと、数名に殺気を送られているのを感じる。
「微妙だな……」
この程度では合格点など出せんぞ。
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