家族旅行2
目的地に到着すると、旅館の従業員たちが待っていた。やたら丁寧なのはあれか? あのダンジョンの件でかなりしつこくしたのが伝わっているからか?
まぁ、実際かなり譲歩してやったからな。私が雑に費やしたコストの高さを聞いて協会長が気絶しそうになっていたが、ハンターたちの実力が上がれば、今回のような不測の事態で私が出て行くことも減るだろうし、暇になれば私も家に引きこもる時間が取れる。ウィンウィン、というものだ。
男女別れて部屋に案内されると、豆太が窓から見える紅葉に見惚れていた。なるほど、良い眺めだ。部屋に温泉もついていて、これもよいものだな。いつでも入ることができる。
「付近の観光案内も置いてありますよ」
「わ! 楽しみです」
「フェリクス様はどうされますか?」
「酒でも頼んで、のんびりしておく」
ほう……かなりの種類を置いているようだな。こういう場であれば日本酒がよいか?
子どもたちではないが、少し心が弾むな。
「え、フェリクスさんは外出しないんですか?」
「私の目当ては部屋についている温泉の方だからな。あとは、この宿の料理もか」
観光は特に目当てではない。あと、億劫。私は基本的にお家でゆっくりが大好きなタイプの吸血鬼なのでこれくらいがちょうどいいまである。
「ジーク、お前はどうする」
「私ももう少し寝ようかと思います」
まぁ、ジークも吸血鬼だからな。夜の方が調子がいいものだろう。
幸い、この近くにもダンジョンが点在していることもあり、夜でも多くの店舗が営業している。今、少しばかり寝ていても観光できなくはない。さすがに、博物館などに行こうと思えば日中に行動せねばならんが。
「土産とかいります?」
「欲しければ大体の物はここで揃う故、我々のことは気にせず、のんびり遊んでくるといい。ダンジョンの方には行くなよ」
「行かねっスよ。じゃあ、行くぞ。豆太」
「はい」
子どもたちが出て行ったので、少しゆっくりしておこうかとメニューを確認する。
「ジーク。お前も何か飲むか?」
「それでは……」
ジークはサッと目を通して、オレンジジュースが冷蔵庫に入っているという一文を見つけた。「アレにします」と瓶を取り出す。
私は熱燗を頼んで、温泉で飲もうと思う。子どもたちがいるとあまり飲まないしな。別に、飲んではいけないということはないのだが、昔の習慣が抜けんのだ。
「そういえば、なぜいきなり温泉に来ようと思ったんですか?」
「最近、私たちが支配したダンジョンがあっただろう? あれの攻略中に、風呂に入りたくて仕方がなくなる階層があってな……」
あとは、のんびりしたかった。
近頃は色々と立て込んでおったしな。ちなみに、魔王は私がダンジョンを支配したと言ったら「面白そうだしわしも今度お忍びで言っちゃおうカナ!?」となんとなくウザイ感じで絡んできた。着拒しようか小一時間悩んだぞ。
「それより、スマホが鳴っておるぞ」
「ああ。姉さんからです。さっき、フェリクス様が外出しないと言っておいたので」
にっこりと笑顔を見せるジークだが、いつもと少しばかり雰囲気が違うのはなぜだろうか。
「まぁ、千明さんと一緒に観光でもしていればいいのではないですか?」
まぁ、弟であるジークが言うのであればそうなのだろう。個人的にはあの二人の趣味が合うとは思わんが。小娘は花より団子だからな。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
ジークは朝、ヘスティアに手間取らせられたのでガン無視の構え。
ヘスティアはちょっぴりしょんぼりしながら千明と豆太に引っ張られ外出した。
そして、彼らが楽しんでいるころ、二人は寝ていた(お昼寝)。




