風呂へ直行
無事に帰宅した私とアルテはすぐに風呂場へ直行した。
電話で風呂の準備を指示しておいてよかった。こういう時のための家事用オートマタである。食事も私の好きなステーキを頼んでおいた。デザートも頼んだ。ゆっくりするために、エマには全力を尽くしてもらっている。
「ふぅ……ようやくスッキリしたな……」
「にゃあ~…… (最悪だったぁ……)」
髪も身体も、気に入っているものでしっかりと洗い、ようやく清潔になった。
バスタブに身を沈めていると、生き返ったような心地がするな。入浴剤もよい香りだ。これは確か……以前、マデリーンにもらったものだな。
「後で温泉の予約もするぞ。紅葉の見える、食事の美味い旅館がよいな……」
あのダンジョンを制覇した報酬だけで、しばらく豪遊できるだけの金が振り込まれる。どれだけ困っていたのだろうな、あのダンジョンに。
それにしても困ったのは、ハンター協会の連中がなかなか帰してくれなかったことだ。なんでも、鍛錬用ダンジョンの詳細を私から聞きたかったらしい。自分で入って調べればいいものを。
仕方なく、どういった状態になっているかを説明し、後日入場料を取って解放するつもりでいることを話すと、「できれば提携を……」と手を握ってきた。ガタイの良い男に手を取られても何も嬉しくない。
ともかく、あのタコと謎の海のせいで大変気持ち悪かったので「全部後回しだ!」と振り切って返ってきた。内部調査依頼は意気揚々と受けてくれたのは幸いか。
「なう~? (しばらくあのダンジョンのせいで忙しくならなぁい?)」
「そんなことになったら完全閉鎖する」
身内用にしてもいい。管理する場所を探すのも面倒だし。
そんなことを考えていたら、浴室の戸が開く。
「フェリクス!」
「ああ、帰ってきたのか。おかえり、ラウル」
「にゃあん! (おかえり!)」
呑気にそう返す我々に「ケガは……ないみたいですね」とホッとした顔を見せる。
私たちにケガをさせることができる存在の方が珍しいというのに。愛い子どもだな。
「今日はステーキだ。絶対肉を食うと決めていた。しばらくタコの足は見たくない」
「ご機嫌斜めっスね。でも、ステーキか……」
嬉しそうな顔をするラウルは「じゃあ、後で」と戸を閉めて去って行った。
「風呂から上がった後でもよかっただろうに」
そんなに私の無事を確かめたかったのか? ラウルを引き取って以降、大きなケガをしたのは一度だけだったはずだが。
そんなことを考えながら、私は風呂から出て身なりを整えた。
アルテの毛と自分の髪を乾かしてからリビングに向かうと、ラウル、小娘、豆太だけでなく、ヘスティアとジークも訪れていた。
「ドラクルさん、おかえりなさい! ドラクルさんが三日もかかるなんて、すごく強い相手だったの?」
「まぁ、一応そこそこ強くはあったが……主に数が多く、階層も多かったから三日かかったという感じだな」
小娘の質問に答えると、少し不安そうな豆太が、「じゃあ、ケガはないんですか?」と聞いてきたのでしっかり「一つもない」と答えておいた。実際、体中が臭かったことを除けば問題はなかった。
「ヘスティア、ジーク。子どもたちを見守ってくれて助かった。礼を言う」
「いえ。フェリクス様のためですもの。けれど……次は私も連れて行ってくださると嬉しいわ」
「いや、あれは本当に楽しくない。一緒に行くならもっと楽しい場所の方がよいぞ」
少なくとも私はそう思う。
思いのほか真剣な声が出てしまったためか、「そういうことではないと思いますよ」とジークに言われてしまった。
ちなみに、本当に、心の底から楽しくなかったので本気だ。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
フェリクスは翌日以降、「ダンジョン使わせてほしい」の声がハンター協会からたくさんかかって少し忙しくなる。
無表情で淡々と片付けて、旅行の準備も始める。
フェリクス「あんなダンジョンの何が楽しいのだか」




