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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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新学期


 さすがに新しい武器は時間がかかるらしいが、修理だけは思ったより早く済んだ。これは、ヴェルグが特別早く仕事ができるだけで、他の職人に同じことを求めてはいけない。

 しかし、子どもたちには今できることをしたし、しばらくは楽になるだろう。そう思いながら優雅に食事を摂っていると、子どもたちが食堂にやってきた。



「おはようございます、フェリクス」

「おはようございます! ドラクルさん」

「おはよう、ラウル、小娘」



 今日から新学期だ。そのため、学園の制服を着ているラウルと小娘。対魔武器ならば魔力でアクセサリーレベルに小さくすることができるのに、小娘の武器は普通の刀であるため、物々しい。

 あの刀もそのうち、改造させてもいいかもしれんな。……いや、当人にとって思い入れのある武器だとすればそのままにしておくが。



「今日は学園に呼ばれているからな。送ってやろう」

「車登校……楽でいいっスね。今日はさっさと帰れるし」

「実力考査もあるからな。気を抜くなよ」



 試験で悪い点数を取れば、当然補講だからな。成績は良ければ、進路には困らんだろうし、勉強はしておくに越したことはない。



「……補講の教師が優しいといいが」

「いや、補講になることを当然と思うな小娘」



 正直なところ、回避できるかは運であるとしか言えんが、少なくとも課題は頑張ったのだから。


 食事を終えて車を回すと、アルテが人化していた。意外にも小娘の隣に座るようだ。助手席にはラウルが入ってきた。



「そういや、あんたを呼びだせる人って誰です?」

「清明のジジイだ」



 ジジイの名前を出すと、ラウルがあからさまに不機嫌になるが、あのジジイが出てきているということは安倍家か小娘関連だろう。ややこしいことは全部ジジイがなんとかするだろうから構わん。

 そんなことを考えながら、シートベルトを着用するよう指示し、エンジンをかける。



「チアキ、シートベルト、カチャっていってない!」

「こうか?」

「うん、いい子ね!」



 アルテがなぜかお姉さんぶっているが……小娘は妹気質のようだし、特に問題もなさそうなら放っておくか。

 車を走らせ、学園の駐車場に着くとそこに止める。なぜかラウルの担任が駆け寄ってきた。



「どどど、ドラクル先生この度はご足労いただき誠にありがとうございます」

「安倍のご老体からの頼みですし、大した距離ではありませんので」

「ドラクルくん、教室に行っていてください。安倍さんは私たちと一緒に来てくださいね」



 長い黒髪をまとめ、メガネをかけた真面目そうなこの女性は神前(かんざき)環奈(かんな)嬢だ。ラウルの担任で、彼女の実家の神社には時折世話になっている。妙に美味そうではあるが、やはり血よりも普通の食事の方が美味いのでな。手を出す気はない。

 私の感想が悪いのか、怖がられている気はする。



「あれ以来、清明様に怒られることはしていないはずなのだけど……」



 どこか落ち着かない様子の小娘は「……あの服はもう嫌」とどこか虚ろな目をしていた。あのやたら露出度の高いメイド服はやはりお気に召さなかったらしい。私もどうかと思った。自分の子孫にあの手の服を着せるのは一体どういう感情なのだろうか。



「あ、来たね。久しぶり、フェリクス、千明」



 案内された先で、わざわざ学園まで人を呼びだした狐ジジイが手を振って待っていた。

 


いつも読んでいただき、ありがとうございます!


〇神前環奈

 ラウルのクラス担任である女性教師。専門は祓。

 実家は神社をやっている。そして、彼女の実家に依頼で手に入れた呪いの品等を浄化してもらっている。

 長い黒髪に眼鏡の真面目そうな女性で、フェリクス曰く「血がかなり美味そう」な存在である。他の吸血種からもそう見られているため、以前は襲われることも多かったが、フェリクスの魔力を帯びたお守りを渡されたことによって、そういった事態がなくなった。

 それはそれとして、フェリクスからたまに「美味そうだな」と思われているのを視線で感じるので、ちょっと怖い。

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