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幼女と執事が異世界で  作者: 天界
第7章
157/182

157,勇者の装備




 一旦柱の後ろにまで移動したはいいが、ここからどう出るべきか。

 噂通りならば鬼刃がいる方の柱に青いクリスタルがある。

 戦う必要性もないし、勝算も微妙とくれば逃げるが勝ちだろう。


 だが……。



「わたりん、鬼刃が動いていませんわ。わたくし達が出てきたところを狙うつもりのようですわね」


「確かに動いていませんね」


「今のうちに準備を整えますわよ!」



 この通りこの唯我独尊の化身のようなドリルさんはさっそく自分のアイテムボックスから大きな袋――収納袋だろう――を取り出して戦う気満々なのだ。


 いっそぶん殴って気絶させて運ぼうかしら……。



「さぁ、わたりん! わたくしの準備はいつでもオーケーですわ!」


「……なんですかそれ」


「見て分かりませんの?

 この装備は全て魔道具ですの! しかもランドール王家に伝わる由緒正しき勇者の装備ですのよ!」



 ちょっと目を離した隙に装備を完了させたドリルさんは今までつけていた軽装備の上に装飾過多気味なアクセサリーをつけていた。

 具体的にはピアスとネックレスと腕輪。

 恐ろしい事にその由緒正しき装備からは尋常じゃない何かを感じる。どうやら本物みたいだ。


 これが勇者の装備……。


 こんなときだけど気になったので鑑定してみた。

 人を鑑定するのと違ってアイテムならMP1で済むしね。



        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 空と大地の耳飾り [天狐] [天狼] [天鰐] [天鬼]

 空の神の祝福と大地の神の祝福を受けし神具。

 装備者を自ら選ぶインテリジェンスアイテム。

 選ばれし者へ空と大地の祝福を与える。

 

 付与効果:HP+300 敏捷+49

 固有スキル:天駆 大地の祈り

 所有者:アリアローゼ・シャル・ウィシュラウ


        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□



 思ったとおりに壊れ性能だコレ。しかも魔道具じゃなくて神具だし。

 ていうかドリルさんが所有者ってことは選ばれてんのか……。まじで勇者だったのかこの人。


 てっきり担ぎ上げられただけのお飾りかと思ってたのに。



 ネックレスと腕輪も似たような装備だったが、どちらも敏捷特化の装備品だった。

 やはり装備者を選ぶインテリジェンスアイテムのようで所有者の名前がちゃんとドリルさんになっている。

 彼女の敏捷は今、装備の合計だけで100を超えているはずだ。

 その上固有スキルも3つの装備全てにあるのでそれらを有効に使えれば確かに戦えるんじゃないだろうか。


 あ、でも敏捷だけ高くなっても自爆するんだったな。

 器用をあげておかないと速さを制御できないはずだ。



「アリアローゼさん、その装備がすごいのはわかりますけど器用はどうするんですか? 死にますよ?」


「さすがはわたりんですわ。見ただけでこの選ばれし装備にどんな効果があるのかわかってしまいますのね!

 ですが安心なさいまし! わたくし、今までのポイントは全て器用増加を取得するために使っておりますの!」


「……へぇ」



 MPが勿体無いからドリルさんの鑑定はしなかったが、カトルゼの61階層までは来れる実力にはなっているはずなのでそれなりにBaseLvを上げたのだろう。

 その全てを器用に使ったのなら或いは……。


 単純に敏捷65のオレでもあの槍は避けられる。

 すでに装備で敏捷が100を超えているドリルさんなら避けられないということはないだろう。

 もちろん槍だけがヤツの攻撃の手段ではないだろうから敏捷が100を超えていても色々と気になるところはある。

 勇者の装備とはいっても防御関連の装備ではないのは鑑定してみてわかった。

 敏捷特化であり、あとは固有スキルが名前だけではわからないのがいくつかあった程度だ。

 不安要素はある。

 だがドリルさんが自信満々なのも頷ける。


 それだけのものがこの敏捷100以上という数値にはあるのだ。



 ……いけるか?



 一瞬の思案。

 足手まといだと思っていた人が実はスピードだけならオレを遥かに超えている事実。

 そのスピードというものは事戦闘に関して絶大な効果がある。



 魔法が効かないなら物理でぶっ叩けばいいじゃない。



 どこかで聞いたような台詞がオレの脳内で響き渡った。

 その台詞が完全にオレの背中を押してしまった。悪いのはアイツです、おまわりさん!



「アリアローゼさん、障壁の類は?」


「サリアンの鐘楼結界がありますわ」


「……それって何枚くらいの障壁ですか?」


「6枚ですわ」



 ふむ。オレの使っている障壁は9枚だ。3分の2だが十分か?

 障壁系の魔道具は1枚の障壁の強度がほとんど変わらない。故に枚数でその性能の違いがわかるのだ。


 オレよりも敏捷があるんだから、むしろオレの方が被弾する可能性が高いくらいか。



「敏捷と器用の値は?」


「128と67ですわ」


「敏捷を1.5倍にしても動けます?」


「敏捷強化が使えますのね。さすがですわ、わたりん! 倍でもいけますわよ!」



 ……ふむ。倍でもいけるのか。でも残念。オレにもかけたら器用が足りないのだよ。オレは自爆したくない。ドリルさんだけにかけるのはもったいないし、オレにもかけることを基準に考えるのは当然だ。


 器用にまで回せるポイントは当然ない。

 さすがにアイテムボックスを外したりすると中身をここに置いておく事になってしまう。

 スタミナ回復ポーションやMPタンクが大量に入ってるのでソレは出来ない。

 それになぜアイテムをおいていく必要があるのかとドリルさんに言われそうだ。


 今必要ないスキルを外しまくっても取れるのは強化系Lv3が2つが限界。だがLv2なら4ついける。Lv3とLv2の組み合わせならLv3が1つとLv2を2つだ。

 ちなみに回復力強化Lv3は外す気はないので計算外だ。



「じゃあ筋力強化と回復力強化をLv3で、器用強化と敏捷強化をLv2でかけます」


「わかりましたわ!」


「基本はアリアローゼさんに正面をもってもらいたいんですけど、大丈夫ですか?」


「わたくしにどんとお任せなさいな。わたりんはどうしますの?」


「私は転移で死角からぶち込みます」


「了解ですわ。やっとわたりんと肩を並べる事ができますわ……ふふ」



 ドリルさんが怪しい笑みを浮かべているが見なかったことにして取得した強化系をかけていく。

 効果時間は30分だ。おそらく次はない。

 そんなに時間がかかるようなら攻撃力不足すぎて倒せないということだろう。そうなったら長期戦ではなく、撤退を取る。不確定要素が強すぎるのだ。



「アリアローゼさん、これだけは約束してください。

 私が引けといったら引いてください。そうじゃなければ置いて逃げます」


「わかりましたわ。わたくしのわがままに付き合ってもらうんですからそのくらいは譲りますわ」



 意外なことに自分がわがままを言っていることを理解しているようだ。


 えっほんとにこの人ドリルさん?


 ちょっと訝しんで見上げてみるがなんだか良い笑顔を返されてしまった。

 ……むぅ。ドリルさんも少しは成長しているということだろうか。



「さぁ、わたりん。行きますわよ!」


「はいはい」



 勝算が出てきてしまったのだからやる価値はある。

 それだけあの勇者の装備は凄まじい。


 ドリルさんが持っている勇者の装備はアクセサリーだけみたいだけど、他にも絶対あるだろう。もちろんドリルさんが出し渋っているのではなく、王家辺りが保管しているのだろうけど。

 この場面でドリルさんが出し渋るとは思えないからね。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 目の前にいたドリルさんの姿が掻き消える。

 今や敏捷強化Lv2で192にまで上がった敏捷値は尋常ではない。

 器用も100を超えているので制御に支障はないだろう。


 ドリルさんが掻き消えてから約1秒後に槍が次々と射出され、壁に向かって飛んでいく。

 冗談みたいな話だがあのスピードを捉えているようだ。

 だが鬼刃がドリルさんのスピードを捉えていても槍の速度は変わらない。

 放たれた槍は全て壁にぶち当たって1本たりともドリルさんに突き刺さることはない。


 次々と壁に槍がぶち当たり、その合間に金属を引っかくような音が幾度も聞こえる。

 ドリルさんの攻撃が始まったらしい。

 だが槍が壁にぶち当たる間隔は変わりがないことからほとんどダメージになっていないようだ。


 これは予想の範囲内だ。

 ドリルさんの役目は鬼刃の気を引くこと。



 さてオレも行きますかね。



 ドリルさんのスピードよりは劣るがそれでも全速力で柱から飛び出した。




ドリルさんは、勇者の装備を装備した!

ドリルさんは、すっごくぱわーあっぷした!

すごいぞ、ドリルさん!

無敵だ、ドリルさん!


次回予告

ワタリちゃん達と鬼刃との戦いが始まった。

しかし予想以上に硬い鬼刃にワタリちゃんは……。

リセットスキルの真骨頂が遂に解禁される。


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