表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック5巻2026年2/5発売】病弱な悪役令嬢ですが、婚約者が過保護すぎて逃げ出したい(私たち犬猿の仲でしたよね!?)  作者: 沢野いずみ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/91

75、誘拐犯の正体



「でもこれならどう?」


 私は短剣を自分の喉元に近づけた。


「な、何を考えてるの!?」


 ミリィが慌てている。まさか私がこんな行動をすると思っていなかったのだろう。貴族令嬢が武器を持っているとは考えもしなかったはずだし、自らの首に当てるなど、考えたこともなかったはずだ。

 しかし、フードの男はミリィと違い冷静だった。


「剣を下ろせ。死ぬ気か?」

「必要なら」


 私は短剣を構えたまま答える。


「私が死んだら困るのでしょう? 私の知識が必要なら、きっと生きて連れてこいと言われたはず。違う?」


 死んでたら知識も何もない、ただの死体だ。そんなものを連れていけば、きっと彼らもただでは済まないだろう。


「……向こうに行けば少なくとも死ぬことはない」

「人間として扱われるかも疑問なところに喜んでいくバカはいないでしょう」

「だから今ここで死ぬと?」

「名誉の死よ」


 男がスッと私を見据える。彼の赤い瞳がこちらを探っている。

 私はごくりと唾を飲み込んだ。


 さあ、どうか、騙されて。


 フードの男が、ふう、と息を吐いた。


「わかった……」


 こちらに向けていた剣を下ろし、私はほっとした。よかった、信じてくれた。

 あとはそちらの罪を問わないから、私を逃がすように言うだけ――。

 そう考えていたとき、短剣を持っていた手に痛みが走った。


「え……?」


 何かを投げられたのだと気付いたときには短剣は私の足元に落ちていた。

 慌てて拾おうとするも、フードの男のほうが早かった。

 あっという間に距離を縮めたフードの男は、私の足元の短剣を足で遠くに蹴り飛ばした。

 その短剣と私の間にフードの男が立つ。


「くっ……」


 私は後退るが、フードの男は私が動いたのと同じ距離を近づいてくる。


「私が死んだらどうしていたの!?」

「コインの角度を調整した。首に当たらないようにしたからその心配はない」


 先程手に当たったのはコインだったらしい。


「万が一があるでしょう? それに、気付いて私が自分でやっていた可能性も――」

「それはない」


 はっきりとフードの男に言い切られて、私は口を噤んだ。


「君は自分を傷付ける気など毛頭なかった。あれがハッタリなのは気付いていたし、俺は訓練された人間だ。ミスはしない」


 男が一歩ずつ近づいてくる。狭い倉庫では逃げ道がない。すぐに壁に追いやられ、私は男に手を掴まれた。


「くっ……離して!」

「悪いが二人とも連れていく約束だ」

「――え?」


 二人、と言われてミリィが反応した。


「ちょっと待って……二人って……まさか私じゃないわよね?」

「ここに他に人がいるか?」


 ミリィの顔から血の気が引いた。


「は、話が違うじゃない!」

「俺は一度も一人だけを連れていくとは言っていない。どんな知識を持っているかも知れない人間を、帝国がみすみす逃すと思うか?」


 ミリィがわなわなと身体を震わせている。そしてバッとその場を逃げようと走り出した。しかし呆気なく捕まる。


「離して!」


 腕を掴まれたミリィが激しく暴れ、その動きで男のフードが取れた。


「え?」


 現れた男の顔に驚いた。黒い髪、赤い瞳。私はこの人を知っている。



「アーロン……?」



 それは、グラリエル王国の王宮に仕えているはずの、アーロンだった。


「どうしてあなたが……」

「転生者の情報を得るには、国の中核で働くのが一番手っ取り早い」


 すでに隠す気がないのか、アーロンは私の疑問に答えてくれる。


「転生者ということを隠していても、彼らは自ずと自分の知識を使ってしまう。そして、それは当然国に影響を及ぼす。君がいい例だ」


 スッと目線で私を見る。

 確かに、私も当然のように前世の知識を使ってしまった……。図らずも、それで国王陛下の目にも止まり、国の施策にも関わることとなった。

 確かにアーロンの言う通り、転生者の情報を得るには、王宮という場ほどいいものはないだろう。


「帝国のスパイとして紛れ込んでいたということね」

「そういうことだ」


 念の為、グラリエルの国王が関わっているのか知りたくて、ハッタリで確認すると、アーロンは帝国のスパイであることを認めた。

 よかった。国が率先して帝国に転生者を送っていたわけではなくて。

 しかし、それなら、他の国にもアーロンのような者がいて、各地から転生者を攫っているということだろうか。


「ちょっと、離してってば!」


 もっと色々聞きたかったが、ミリィが再び暴れだした。アーロンはふう、と息を吐くと、ミリィの首筋に手刀を入れた。

 ミリィは途端にだらんと力が抜け、アーロンがその身体を支える。きっと、さっき私もこうして気絶させられたのだろう。

 アーロンはミリィを手頃な木箱に入れる。


「抵抗はするな。するならまた気絶させる」


 アーロンの言葉に、私は抵抗するのをやめる。気絶させられたら、逃げられる瞬間を逃してしまうかもしれない。


「これを噛め」


 アーロンは手ぬぐいのようなものを私の口に噛ませ、それを後頭部に巻いた。猿轡さるぐつわだ。


「入れ」


 私にも木箱に入るように指示する。私の細腕でアーロンに勝つことは不可能だ。分が悪いと判断した私は素直に従い、木箱に入った。

 蓋を締められると、数人人が倉庫に入ってきた気配がした。アーロンには仲間がいるらしい。まあ、こんな大それたこと、一人でやるには無理があるか。

 誰かに担ぎ上げられ揺れる木箱の中で、私はどうしたものかと、途方に暮れた。

 色々なことが起きた精神的負担もあり、私の体力は限界だった。せっかく気絶させられずに済んだのに、結局私は木箱の中で眠ってしまった。



読んでいただきありがとうございます!

もしよければ、ページ下部の★★★★★クリック評価や、ブックマーク追加で応援いただけるととても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『病弱な悪役令嬢ですが、婚約者が過保護すぎて逃げ出したい(私たち犬猿の仲でしたよね!?)』コミックス5巻
 


『病弱な悪役令嬢ですが、婚約者が過保護すぎて逃げ出したい(私たち犬猿の仲でしたよね!?)』

コミックス5巻
2/5発売!


i00000


描き下ろし番外編あり、
特典あり
なので、お好みなものをぜひお楽しみください!

あと今FLOS COMIC創刊8周年記念フェアにて
小箱先生直筆サイン本当たります!

ぜひこの機会にご応募ください!
(応募詳細は最後の方をどうぞ)

コミックス詳細はこちら⬇

i00000


『病弱な悪役令嬢ですが、婚約者が過保護すぎて逃げ出したい(私たち犬猿の仲でしたよね!?)』
コミックス5巻


発売日:2026年2月5日



あらすじ

ヒロインに怯える悪役令嬢×過保護がブレない公爵令息のラブコメディ

ついに「きらめきの中に」のヒロイン・アリスがフィオナの前に現れた!
しかも作中でルイスが彼女に一目惚れするシチュエーションで!
これまで順調に遠ざけていた破滅が、チラつき始めフィオナの鼓動は激しさを増す…
が、アリスは想像以上に愛嬌があり、妙にフィオナに好意的!?
それでも必要以上にアリスに関わらないよう振る舞うフィオナだったが、アリスはフィオナ達の視察について行くと言い出して…
彼女の真意は何…!?



コミカライズはこちらで読めます!



FLOS COMIC創刊8周年記念フェア
小箱先生のサイン本当たります!

応募方法などはこちらのサイトからどうぞ!



ぜひお読みいただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 王太子殿下の近臣はダメな人ばかりですね。 側近2人(サディアスとニック)は、主君の変態ぶりを目の当たりにしながら、諫言するでもなく傍観するのみで、次期国王の両翼となるべき立場にありな…
[一言] まあそら、このグダグダな国なら他国のスパイやりたい放題だろうな。
[気になる点] 「国が率先して帝国に転生者を送っていたわけではなくて」? 自国にとって有益な人間を、他国に率先して渡す国が有りますか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ