第8話 しっくりくる
「いい、ちゃんとお昼食べるんだよ!」
「心配し過ぎ……大丈夫だよ。」
「と言って昨日食べてないでしょうが!」
「忘れることだってあるよ?」
「いいから!お昼は食べなさい!わかったわね!」
「はいぃぃぃ痛い痛い!」
私は文華の頭をグリグリして黙らせた。ここまですれば流石に言うこと聞くだろうからだ。
と思っていたのだが……私は甘かった……
夕方バイトの前に一度帰ってくるいつも通りただいまを言うが反応はなかった。私は文華が勉強していらのだと思って部屋の中を覗く。そこにはソイジョイを食べ終えたのだろうか、食べたあとのゴミが落ちていた。エアコンは付いてるがそこそこに暑い……そして文華は寝落ちしていた。
「コラー!文華起きろ!」
「……」
「文華おきな!説教だよ!寝たふりなんて……」
私は文華の頭を触ると熱かった……まさか……
「文華!起きなさい!ねぇ!起きて!文華!」
「……」
返事がなかった。だけどかろうじて息はしてる。だから……
「ごめんなさい!今日バイト休みます!」
私は先にバイト先に連絡を入れて休むことを伝えた。出たのは店長の松本さんだった。
「えっ?どうしたの?今日初出勤だったでしょ?」
「すいません!同居してる子が熱を出してるんです!」
「同居人?……まぁいいわ。病院には連れて行けるの?」
「今から救急車を呼びます!」
「はぁ?熱くらいでは来てくれないよ?私が送っていこうか?」
「えっ?お店は……?」
「いいわよ。今暇だし……その子の事が心配なんでしょ?」
確かに……救急車を呼ぶより店長を呼んだ方が早いだろう。なので……
「はい……お願いします。」
私はお願いする事にした。数分で店長の車が来た。
「へぇー……本当だったんだ。」
「何がですか⁉︎」
「いや、てっきりサボる口実と思ったから直接来て連れて行くつもりだったけど……どうやら相当危険みたいね……早く乗せなさい!超特急で連れて行ってあげるわ!」
「ありがとうございます!」
私は文華を横にして車に乗った。文華の身体はめちゃくちゃ熱かった。今ある保冷剤を脇と太ももに挟んで首には私が支えて付けていた。その間店長は何も聞かず車を運転してくれた。でも、荒かった。おかげで病院まで5分で着いた。
「ほら、早く行きな!帰りも送ってやるからさ。」
「ありがとうございます!」
さっきからお礼ばかり言っている気がする。そして診察結果は……
「熱中症……」
「ギリギリ命に関わるほど重症ではないけど、水分補給もしてなかったのかな?暑い場所では水分補給はしっかりしてください。今日は入院して貰います。あと少し栄養失調も見られます。しっかり静養して下さい。」
「わかりました。」
私は診察室を出た。そして病室へ入る。未だに眠っていた文華を見た。そしておでこを触るとまだ熱かった。
「バカ……何で無茶ばかりするのよ。」
「……」
返事はない。でも、起きたら絶対引っ叩く……それだけは絶対だ。
「話は終わったかな?」
「あ……店長……いろいろありがとうございました。」
「いいってことよ!それよりその子……理子の彼女?」
「……違いますよ。友達です。昔からずっと……」
「そう……でも、私にはそうは見えなかったなー……」
「何故ですか?」
「うーん……女の勘よ!」
「その勘では私たちはどう見えてるんですか?」
「うーん……恋人に見えるけど……強いて言うなら姉妹ね。心配性の姉と無茶する妹だな。」
少し考えた……
「……的を射てると思います。私も今しっくりきました。」
「そう……まぁ悩んで自分で答えを出すといいよ。まだ若いんだからさ。今夜はどうするの?ここに泊まるの?」
「はい……明日までバイト休ませてもらっても……」
「いや、しっかりその子が治るまでいてやんなさい。まだ理子は戦力にならないんだから大丈夫よ。みんなには私から説明しておくわ。」
「何から何までありがとうございます!」
私は深々と頭を下げた。そして店長は帰って行った。
翌朝……
「あれ?ここは……?」
「文華!」
ようやく文華は目を覚ました……私は起きた文華が起きたのを確認すると担当医を呼んだ。そしてもう心配ないと説明してくれた。そして先生たちが帰った後、私は文華を引っ叩いた。そして抱きしめた。
「バカ!だからしっかり食べてって言ったのよ!栄養失調と熱中症になってたんだからね!もの凄く心配したんだから!」
「ごめん……なさい……」
今回の事は私の両親には伝えたが文華の両親には伝えなかった。伝えれば文華は連れて帰られるだろう。私としてはどっちでもいい……だけど言わない……この子をしっかり躾けられるのは私だけだから……きっと……
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