第69話 昔話
私と理子と出会ったのは大学からだった。たまたま近くの席だったけど遠目で見てても分かった。凄くかっこいい人だって……
「ねぇ、貴女名前は?」
「私?ですか?」
「他に誰がいるのよ!」
困った様に笑っていた理子に私は慌てて自己紹介しました。
「鳩山早苗です……」
「早苗かー、良い名前だね、私は理子!よろしく!」
「よ、よろしくお願いします……」
話しているとわかる事があった。見た目通りカッコいい所、抜けている所、静かなタイプで意外とマイペースで、そしてお姉さん気質な所と……話して行動してて私はいつしか目が離せなくなっていました。そして私の片思いの相手にはライバルがいる事も……
……あれ、おかしいな……涙が出てきました。元々勝てる勝負じゃなかったんです。分かっていて恋しちゃったんです。初めての恋を……
「あれ?早苗ちゃん?」
「あっ……文華ちゃん……」
「泣いてるの……?」
「……ですね……実は……失恋しちゃいました。」
文華ちゃんの目が一瞬大きくなりました。
「理子に……?」
「……はい。」
「……そうですか……」
少しの沈黙の後、文華ちゃんから予想外の提案をされました。
「少しファミレスでお話ししませんか?」
「えっ?で、でも……」
「大丈夫です。早苗さんとお話ししてきますと送っておきますから。」
「そ、それは……理子が大丈夫なんですか?」
「良いんです。私友達いないので変に友達と言ってしまうと余計に心配かけてしまいますから。」
「……お願いします。」
私たちは近くのファミレスに入りました。
「ドリンクバーでいいですか?」
「は、はい……」
言われるがままに私は座っていました。
「なんか……ごめんなさい。」
「大丈夫です。気にしないでください。」
少しの沈黙の後、文華さんから話かけてくれました。
「それで……なぜ泣いていたのですか?フラれたからなのはわかりますが……早苗ちゃんはフラれたからといって泣いてしまう様には見えません。」
「……初恋……だったからです。」
「初恋……ですか?」
一口コーヒーを飲んで私から話を切り出します。
「文華ちゃんの初恋はやっぱり……」
「理子だよ。もう王子様だった。」
わかります。王子様ですよね……
「そして……子供でした。」
「……え?」
いきなり全然違うワードが出てきました。
「理子がですか?」
「そうですよ!」
「男子に混ざっては走り回っては暴れて窓ガラスを割ったりもしてましたよ。」
「……想像できます。」
「それでも……私が1人でいると近くに来てくれて……一緒に遊んでくれて……」
「昔から優しかったんですね……」
「優しいですよ。昔から……でも以前私が何もしないことを良いことに自分の悪事を私にアリバイを言わせて他の子に罪をなすりつけるなどもしてたで酷い一面もありますよ。」
私は2秒ほど固まった後、笑い出しました。
「あはは!そんな事があったんですね。」
「他にもありますよ……例えば……図書室の本を読んでて寝てしまって起きたら本のページがよだれまみれになってたとか、放送室に忍び込んで間違えて放送スイッチをオンにして先生に怒鳴られていた事もありましたねー。」
「本当にやんちゃな子だったのですね……あっ……」
「ん?どうかしました……か?」
文華ちゃんの後ろには息を切らしてはいたけれども鬼の形相の理子がいました。
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