第68話 嘘つき
帰って来たのは夜だったが普通に文華は出てきてくれた。
「おかえり。どうだった?」
「うん、楽しかったよ。そっちは勉強進んだ?」
「うん……」
歯切れ悪いと思った。だけど文華はサボる様なタイプでばない。
「何かあった?」
「うーん……寂しかった。」
「そか……」
「うん……」
私は部屋に入ってから片付けを開始、その中にお土産を見つけて文華に届けた。
「文華、これお土産……」
「ん?太宰府天満宮……?あっ!菅原道真さんね。」
「そ、学問の神様だから買ってきたよ。」
「ありがとう!絶対合格するね!」
最後の神頼みというが最後は努力した人が合格するって事を知っている。まぁ文華の勉強量なら誰にも負けないだろうし。それでもその日の体調、天候は運に頼らないといけない。その運を上げる事くらいしか私には出来ない。
「うん、頑張って……」
私は帰宅後すぐに寝てしまった。そして翌朝になる。
「おはよー……」
朝起きても誰もいなかった。置き手紙にはバイトにいってきますというメモが置いていた。
「……今月まではバイト入れてるって言ってたなぁ。」
私はボサボサの頭を手入れして朝食兼昼食を摂った。明日は久しぶりにバイトだ。
「今日はゆっくりしとこ……」
再び横になろうとした時チャイムが鳴った。
「はーい……」
「こんにちは。」
目の前に居たのは早苗だった。
「早苗じゃん。どったの急に?」
「連絡はしたのですが既読も付かなかったし、電話も出なかったので……」
昼前全部寝ていたからみていない。めちゃくちゃ失礼すぎる話だ。
「あー、うんごめん!上がってく?」
「ううん、これを届けに来ただけだから。」
「ん?あれ?私のお土産……なんで?」
「私が理子のお土産持ってたの忘れてて……返すの忘れてたから返しに来たの。」
「あ!ごめん私も完全に忘れてた!」
お互いに少し笑った後、別れようとした。
「じゃあまた学校で!」
「うん、またね……」
「……早苗!」
私は早苗を見送っていたが不意に呼び止めてしまった。
「えっ?なに?」
私は一瞬固まった……そして
「一昨日の夜さ、私の事……好き……って言ってくれたけど!友達として……だよね?」
「…………」
無言の時間が続いた。まるで1秒がとんでもなく長く感じられるくらいに……すると早苗は急に笑った。
「そうですよ!友達としてですよ!」
「……あはは!そうだよね!ごめん変な事聞いて!」
「ううん!私こそ変な事言っちゃったみたいでごめんなさい……だって理子には文華ちゃんがいるもんね!」
「はぁ!?」
「じゃあまた学校で!」
いつも通りの笑顔でしかしいつもとは違い早足で帰って行った。私は扉を閉めた後その場にへたり込んだ。
「はぁ……嘘つきだな……私たち……」
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